今回は私が愛したプラネタリウム、旭川市青少年科学館のZKP-1についてのお話。
私にとって、旭川市青少年科学館のプラネタリウムは特別な空間でした。
8mドームと言う大きさの空間はとても心地よく、ドーム内の開館当時の風景と合わせて
最高の癒しの時間です。
この雰囲気は最新の大型館では感じる事が出来ないものです。
ドームの雰囲気以外に忘れてはならないのが解説員の技量!
旭川は解説員の解説が素晴らしかった事も心地よさを感じた要因かと思います。
此処で紹介する写真はプラネタリウムが閉館して、引退後に撮らせてもらった物ですが、
写真をブログにアップするにあたり許可は取っておりませんので載せられる範囲内で
紹介したいと思います。
☆北海道新聞
☆最終投映のチケット
プラネタリウムの投影最終日は4回投映でした。
(11時の投映は団体専用で通常は一般投映を行ってはおりません)
旭川青少年科学館は1963年11月2日~2005年1月30日まで41年2ヶ月開館しておりました。
日数を ユリウス日で計算すると15,065日間。
ZKP-1は旧東ドイツのツァイス・イエナ社製で、国内には岐阜市科学館でも1958年~1984年まで
54年間使われておりました。
シリアルナンバーは岐阜が73で旭川が165なので当然の事ながら岐阜が先輩となり、
54年間も動き続けたのは驚異的な耐久性です。
ZKP-1は1952年から1977年までの間に257台製造されました。
ZKP-1の耐久性がすぐれている要因は構造がシンプルである事に尽きるでしょう。
通常のプラネタリウムには惑星と太陽・月の投影機が日付に合わせて自動で動く惑星棚という
機構が付いております。
その機構は惑星や太陽・月の位置を時計仕掛けのようなギヤの動きだけで再現するので非常に
複雑な機構となります。
ZKP-1ではその機構を省いて可動部分は恒星の日周運動と恒星が地平線下に映らないようにする
シャッターだけとする事で機構の簡略化を行い、結果として高耐久性も果たしているのかと思います。
(当然の事ながら大きなコストダウンにも成っています)
☆ZKP-1投影機
何ともかわいらしいこの姿、設計者の遊び心や感性のすばらしさを感じます。
プラネタリウムと言えば無骨な機械ばかりの中で、ZKP-1だけは生き物のような感じがします。
☆恒星球と天の川投影機
このボールを恒星球と言い、沢山の星を映し出します。
ボールに沢山付いている装置は投映レンズと地平線下に星を映さない様にするシャッター。
左上の筒は天の川投影機で、天の川の模様が描かれたフィルムが入っております。
天の川投影機の中には地平線下に天の川を映さない様に、シャッターの役割をする
水銀が入っております。
20年程前には水銀が抜けてしまい地平線下にも天の川が投影されてしまう状態でしたが、
その後新しい部品を取り寄せて天の川が正常な状態で投映できるようになりました。
こんなに古い機械でも部品の供給が有ったのはさすがツァイスだと思います。
天の川投影機の隣に有る平べったい筒は未確認ですが太陽の位置を設定する時に使う
黄道投影機かと思われます。
☆恒星投影機の電球
頑張って頑張って、私たちに星空を見せてくれて、そして力尽きた電球!
プラネタリウムの心臓部には12V50Wのこんな電球が使われております。
旭川は投映回数が多いので定期交換前でも投映中に切れる事も有った様です。
ちなみに、この電球はドイツ製ではなく国内で特注した物だそうです。
☆太陽・月・惑星投影機
矢印が太陽・月・惑星投影機で、必要に応じて着脱します。
電源の供給が1回路しか無いのと、地平線下でも投映してしまうので旭川では
通常は太陽のみを投映しておりました。
太陽等の投映位置を調整するのは投影機の回転と先端のミラーを動かす事で行うので
故障しそうな所は球切れと接点の接触不良位でしょう。
プラネタリウムの尻尾部分に平べったい物が付いておりますが、こちらも未確認ながら
赤道座標目盛投影機と思われます。
今回この写真を見直して気がついたのは恒星球のアームの付け根に歳差運動を設定する
機構が付いている事。通常は使われない機能なので驚きです。
☆朝夕の空を演出をする灯火
1:朝やけ灯・2:薄明灯・3:昼光灯(ドーム全体の昼間の明るさ)
4:夕焼け灯・5:薄暮灯・6:青色灯(ドーム全体の夜の空の明るさ)
プラネタリウムの日の入りから星空に至るまでの演出はプラネタリアンの見せ所です。
不覚にも、此処で気持ちよくなって寝てしまう事が有ったりして・・・
☆投影機を色々な角度から
3枚目の写真の左矢印は夕焼けやドームの青色光投影機。
下側の矢印は緯度を調節する為のモーター。
オリジナルでは此処に手動のハンドルが付いており、緯度の変化は手動で行うようです。
さて次は解説員の仕事場、コンソール周りについて!
☆コンソール入り口
プラネタリウムの入り口を入るとすぐ左が解説員の仕事場。
通常はじっくり見ることの出来ない場所ですがこんなに狭いんです。
開館以来長年掛けて色々な機器が増設されてきたので周りは機械だらけ。
左手にミキサーが見えますが、オリジナルの音響設備はコンソールと一体になっている筈なので
後から設置された物でしょう。
☆コンソール周り
オリジナルのZKP-1は画像検索すると投影機本体とコンソールが一体の様で、
旭川市青少年科学館は独自仕様のコンソールと思われます。
投影機をサイパルに展示する時に、コンソールも一緒に展示して動体保存として欲しいと
思いましたが、残念ながらコンソールは廃棄処分となったそうです。
もっと早く知っていれば個人的にでも保存したのに、と思っても後の祭り。
☆コンソール拡大
少しぶれていますが、もう見る事の出来ないコンソールの写真。
写真をクリックすると大きな画像で見られます。
☆星座絵投映機
コンソールにはタイプの違う星座絵投映機が3台設置設置されています。
いずれも古い物で、真ん中のアルミケースにつまみが3個付いている物がそれぞれの
明るさを調節する装置と思われます。
☆ポインター
ポインターの扱い一つでその解説の気持ちよさが変わってしまう程の大切な装置。
ポインターにはON・OFFのスイッチと斜めに動くピント合わせのレバーが付いています。
投影されるポインターは通常赤か緑で、旭川は赤だった記憶があります。
コンソールにはポインターの明るさを調節するつまみもあった筈。
次はプラネタリウムが映し出す夜空の様子。
肉眼で見たイメージと写真では少し違いますが雰囲気は伝わるでしょう。
この写真は天体写真を撮るのとまったく同じやり方で撮影を行います。
☆夏の天の川と星座
☆冬の天の川と星座
☆北極星の日周運動
北極星は空の北極点から0.5度ずれており、24時間で視直径1度の円を描きます。
こんな写真は極夜の起こる高緯度の地域まで行かないと撮影出来ませんが、
プラネタリウムなら数分で撮影可能。
☆ドーム内の風景
古いプラネタリウムドームにはもれなくこの様な風景が有ります。
椅子に座って投映を待っている間もこの絵を見ながらリラックス。
新しいプラネタリウムにはこの風景画が無いので味気ない。
どんなに高価な機器で全天周映像を映しても、この切り絵風の風景画にはかなわないです。
☆風景画
風景画をよーく見るとこんな作り。
ブリキ板を風景の形に切り抜き、つや消しの黒を塗って、
さらに手前の建物等を黄色のスプレーで描写。
☆座席
私が好きだった場所は写真真ん中の列の一番手前。
一般的にプラネタリウムの特等席は解説員が座っているコンソールに近い場所です。
理由は解説を行う星空がコンソールと反対側の事が多い事。
さらに物語の投映はコンソール側のプロジェクターから投影されるので
奥に座ってしまうと物語が逆さまに成ってしまうからです。
☆プラネタリウム入り口
プラネタリウムと科学館展示室の入り口は2階に有ります。
昔はバリアフリーという発想はなかったので階段だらけの建物です。
☆二つの扉
消防法の関係かドームへの出入り口は二つ。
左の扉は普段は使われて折らず、開かずの扉!
☆ドームの外側
通常はドームの外観は半円形ですが旭川はこんな形。
ハシゴが掛かっているという事は冬になると雪下ろしをしていたんですね。
おまけ!
☆黄金バット復活
旭川市青少年科学館にはこんな展示物もありました。
センサーで人を感知すると黄金バットの笑い声が流れ、同時に電球が点滅するだけの物。
昔は一階フロアーの奥に展示されておりましたが故障して撤去されました。
それを直して2階の入り口横に復活展示となった次第。
どうと言う事もない展示物ですが、科学館に行くと逢わずには居られない黄金バットでした。
☆旭川市天文台
1950年に北海道で一番最初に建てられた天文台
中には五藤の15Cm屈折望遠鏡があり、引退後は望遠鏡だけサイパルのプラネタリウム入り口に展示。