村人の気まぐれブログ

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小樽市青少年科技術館 GS-8-S

2014年01月10日 | 天文




プラネタリウムの話は天文用語が沢山出てくるので、興味のない方にはゴメンナサイ。


小樽市青少年科学技術館は2006年12月28日に43年の歴史に幕を下ろしました。
その後は小樽市博物館と統合されて小樽市総合博物館として手宮に開館。

今回は縁あってプラネタリウムの解体作業を手伝わせていただいた時の話。
このプラネタリウムは解体保存する事に成りましたが、いつでも使えるよう、配線の
一本一本まで丁寧に外して保存しました。

小樽市青少年科学技術館のプラネタリウムは手元の資料では
1963年7月~ S-3
1976年2月~ GS-8-S
となっており、一度入れ替えが行われています。(五藤光学の納入館資料にて確認)


☆プラネタリウムの入り口

投映開始までは二階フロアのこの辺りで色々見ながら待つ事になります。
この写真を見直して気がついたのですが、テーブルの惑星の大きさを比較する模型以外に
天井にも太陽の大きさの比較模型が有ります。


☆投影機

GS-8-S型プラネタリウム
GS-8-S型の前身はS-3型との事ですから、型番のGは五藤光学、8は8mドーム用
という意味かと思われます。

この形のプラネタリウムはモリソン型と言います。
鉄アレイの様なツァイス型では技術的に恒星を上手く繋ぐのが難しかった為にこの形に
したという話を聞いた事があります。
また、回転モーメントが小さく成る様に恒星球を回転軸の近くにすると力学的には有利という
話も十分納得出来る話で、この形になった経緯は分かりません。

☆スカイライン投影機等

このプラネタリウムでは切り絵式の風景ではなく、プロジェクターを使って周りの景色を
投影します。
プロジェクターの左右には白色と青色灯。その上には照明が4器。
プラネタリウムのアーム基部にモーターらしき物が見えるのでもしかしたら投影機全体を
電動で回転させる事が出来るのかも。


☆コンソールの場所

解説を行うコンソールは北西の壁の中にあります。
座席にゆとりを持たせるお客さん優先の設計と思われますが、天頂付近の解説は
やりにくかった事でしょう。
座席は一方向配列で、座席数を稼ぐ事は出来ませんがゆったりしています。



☆コンソールの様子

コンソール内は比較的広く、スペース的にはかなり余裕があります。

☆コンソール

コンソールには沢山のダイヤルやスイッチが付いておりますが、1:1で機能が
割り当てられているので難しい事はありません。

前身のS-3型ではコンソールに年周計しか付いておらず、GS-8になってから日周計と緯度計が
付いたので操作が楽に成りました。

解説で希に緯度を変化させる事が有り、解説中に元に戻す時、緯度計の目盛を見ながら
元の位置に戻せるので楽です。
しかし、子午線や、普段見る事のない色々な調整用の目盛を表示して調節する様子を
見せるのもショー的要素が有るので良い事です。

日周計は日の出のタイミングに気を使わなくて済むので有りがたい機器です。
プラネタリウムの解説パターンとして、
1:太陽が出ている所から日の入り-星空
2:星空の解説
3:スライドやビデオ等の物語投映
4:日の出
と言う順番が多いのですが、星空の解説後ビデオ等の投映中に日の出直前の時刻まで
投影機の時間を進めます。
この時、太陽は消灯しているので日周計がないと投影機のが何処で日の出直前なのか
特定するのに経験が必要となるんです。

☆コンソールの中身

普段は見る事の出来ないコンソールの中身
右側がオリジナルのコンソールで、左は後から増設された当館オリジナルの部分。
増設された機能はラネタリウムを自動運転させる機能だと聞いた記憶が有ります。

☆色々な目盛

普段の投映で見る事のない赤道・黄道・子午線を表示させてみました。
子午線の目盛の数字は高度で、此処には映っておりませんが北極点を表示させて
現在位置の緯度を調節します。
また、赤道の目盛と子午線を使ってブライトスターや惑星などの初期設定を行うと思われます。
長期的には太陽系の天体もずれてきますので、それも必要に応じて赤道と子午線を使って
位置の調整を行うのでしょう。

この写真では右下に太陽、真ん中に月が投影されております。

このコンソールには年周計が付いているので大雑把な日付はそれを見て設定出来ます。
月を投映しない時にはそれで十分ですが、月を投映する時には正確な設定を行う為
月の位置を基準に正確な日付を調整します。

この画面で、月の位置だけに注目すると2006年12月28日20時頃の星空になりますが、
月の形が実際の月齢と違うのは実際の月とずれた分の補正を行っていないからと思われます。
(太陽の位置が1月26日になっており、月の位置は違うがこの日の月齢なら合っている)


通常日の入りや日の出を行うのは日周運動の機能ですが、それは何回転させても
天体の位置関係は動きません。
太陽系天体の位置関係を移動させるには年周運動という機能を使います。


☆惑星棚

恒星球の両端には惑星棚という物が付いており、これが太陽・月・惑星の位置を変化させて
投影を行います。

☆南側惑星棚

南側惑星棚の様子。
太陽・月・惑星はモーターで駆動されるギヤだけで位置関係の変化を再現します。
南北の惑星棚は機械的な接続はないのでそれぞれのモーターは同期しているのでしょう。

☆天の川投影機

天の川投影機は恒星投影機の根元に南北それぞれ1個ずつ付いています。
根元に半分見えているつまみは天の川投影機の明るさを調節する為の物と思われます。

☆ブライトスター投影機

一等星は恒星球で投影するのではなく、別途ブライトスター投影機で各投影されます。
恒星球で一等星を投影させるには原盤の穴が大きくなりすぎて不自然になります。
明るい天体の投影機は別体とする事で、星の色も自然な色で投影する事が出来ます。
これらを地平線の上下で点灯・消灯させるには水銀スイッチという物が使われています。

☆夏の星座

写真の左上がピンク色なのはD70で長時間露光をした時の熱かぶりによるもの。
天体写真の場合、D70は1分位の露光でも熱かぶりがおきます。

☆冬の星座

☆解体

投影機の解体は手すりを外して投影機の根元にあるプロジェクターとランプの取り外しから。



☆配線

配線はそれぞれの動作に一対一で来ているので本数は多いです。
コンソールと投影機の床をぶち抜いて下の階の天井に穴を開けているので、
配線の抜き取りは下の階を行ったり来たり。





☆作業完了間近

必要最低限な部分が外れたら本体を台座から下ろして作業終了となりました。

この投影機は解体して保存されておりますが、まだまだ現役で活躍出来る状態なので
又どこかで使ってもらったらと思いますがどうなる事やら。





☆おまけ

此処には一般公開用として西村の屈折望遠鏡が有りました。
スペックについては分かりませんが、15Cm位でしょうか。




赤道儀は電動追尾となっておりますが、設置された当初は重錘式だった様です。
赤道儀の支柱には床下まで貫通する穴が空いており、此処には錘がぶら下がっており
時計仕掛けの追尾装置が動いていた事が想像出来ます。


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