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NHKスペシャル 新・幕末史

2022-10-27 21:10:09 | 音楽、TV、観劇

 録画していたNHKスペシャル 新・幕末史を見た。新・幕末史は「第1集 幕府vs列強 全面戦争の危機」(10月16日放送)、「第2集 戊辰戦争 狙われた日本」(10月23日放送)と2回に亘り放送されている。NHKの番組HPには詳細な内容が載っており、なかなか見ごたえのある特集だった。第1集のHPは次の文章で始まる。

これまで、日本史の転換点として語られてきた「幕末」。今、海外で幕末に関する発見が相次いでいます。日本が世界の覇権争いと深く関わっていたことが明らかになってきたのです。地球規模で歴史の大変動が起きていたこの時代。重要な航路が集まる日本には、アメリカ・ロシア・イギリスなど欧米列強が押し寄せました。入り乱れる大国の思惑。グローバルな視点から見えてきた新たな幕末の歴史。日本と世界が織りなす激動の時代を、ドラマを交え描きます。

 以下は第2集HPの冒頭から。
地球規模の視点から新たな歴史をつづる「新・幕末史」。第2集は、世界が日本を狙う中、繰り広げられた戊辰戦争に迫ります。(中略)
 第2集は戊辰戦争(1868~1869年)です。1867年、徳川慶喜大政奉還を行い天皇に政権を返上しますが、薩摩・長州を中心とする新政府と旧幕府勢力との間で戦いが起こります。この時点でイギリスは徳川を見限り、新政府を支持する方針を固めます。一方の徳川は、イギリスに並ぶ大国の一つ、フランスの支援を受けていました。強国同士のパワーゲームの中、1年5か月に及ぶ泥沼の内戦が始まります。

 もちろんNHKの歴史特集は全面信用できず、誇張やこじ付けとしか見えない解釈も見られる。2年前に放送されたNHKスペシャル、「戦国 激動の世界と日本」でも、「地球規模の歴史から」をやけに強調、戦国日本が「地球規模で歴史を揺るがしていた」等の文句はオーバー過ぎた。ナビゲーターが人気俳優・西島秀俊というのも同じパターン。

 ただ、これまでは佐幕と討幕という国内の視点でしか語られなかった幕末が、欧米列強の資料から見ると、全く違うものになってくるのは興味深い。第1集でのシカゴ大学ケネス・ポメランツ教授(グローバル経済史)の一言は意味深かった。
幕末の日本がこのような運命をたどったのは、国内の政変に加え、世界の覇権を左右するホットスポットだったからです。究極的に言えば、このとき日本は、イギリスが支配する世界秩序に組み込まれたのです

 私的には戊辰戦争を扱った第2集の方に関心があり、戊辰戦争もまた強国同士のパワーゲームに翻弄された戦いだったのだ。意外だったのはプロイセン奥羽越列藩同盟を支援しており、東北諸藩に武器の供給ビジネスを開始したこと。
 もちろんプロイセンも単に武器ビジネスに徹していただけではなく、蝦夷地(現北海道)の植民地を目論んでいたことを番組で初めて知った。ロシアなら、さもありなん…と感じるが、当時は植民地を持つのが大国のステータスだったのだ。番組HPにこんな解説がある。

幕末、幕府の直轄領だった蝦夷の警備を担ったのが、会津や庄内など東北諸藩でした。東北では、プロイセンとつながる外国人が暗躍します。
長引く戦乱で、会津藩庄内藩は多額の軍資金を必要とするようになります。プロイセンは、そんな彼らに金を貸しつける代償として、蝦夷の権利を譲り受けようとしたのです。

 一仙台市民の私には、一応奥羽越列藩同盟の盟主だった仙台藩はどうだったの?と言いたくなったが、番組では仙台藩への言及なし。仙台藩軍は官軍より銃器の量も性能も圧倒的に劣っていたと云われるので、あまりプロイセンとつながる外国人は来なかった?
 プロイセン公使の報告書にはこう書かれており、この計画をビスマルクも容認していた。
蝦夷の気候は北ドイツと似ており、米・トウモロコシ・ジャガイモ、あらゆる農作物が成長し、150万人のドイツ移民を受け入れることができるでしょう。蝦夷こそが植民地にふさわしいと申し上げます

 プロイセンの蝦夷植民地化が失敗したのは、英国の策謀が大だった。駐日英国公使ハリー・パークスは実に優秀な外交官で、外国商人と東北諸藩の武器取引を止めさせるため、各国代表に呼びかけ、内戦当事者に対し軍事的な関与を行わない「局外中立」を設立させる。1868年2月。イギリス、フランス、アメリカ、プロイセン、オランダ、イタリアの6か国は共同で局外中立を宣言する。
 蝦夷地では榎本武揚が最後の抵抗を続けていたが、1869年1月、再び開かれた外国代表の会議で、パークスは局外中立の撤廃を主張する。その背景にはロシアの動向があり、ロシアと榎本が結びつくことをパークスは恐れた。こうして1869年2月、英国の呼びかけにより結ばれた局外中立は、英国により撤廃された。

 1年5か月に及んだ戊辰戦争は、英国の思惑どおり新政府の勝利に終わる。シカゴ大学ケネス・ポメランツ教授はこう述べる。
幕末の日本は、長期にわたり内戦状態に陥り、外国の介入の脅威にさらされた時代です。戊辰戦争を乗り越えたからこそ、日本は変化を遂げ、前に進むことができました。次の時代、日本は独立したプレーヤーになります。そして、世界のグレートゲームを動かしてゆくのです

 戊辰戦争の早期終結には英国が深く関与していたことを、特集で初めて知った。幕末に詳しい方なら既知だったかもしれないが、幕末の日本でも英露のグレート・ゲームが展開されていたのだ。

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