トーキング・マイノリティ

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「家にテレビがない」という子は国語力が低い?その一

2022-10-30 21:15:19 | マスコミ、ネット

 先日見たイスラム思想研究者・飯山陽氏のツイートには驚いた。このツイートで初めて久松由理なる塾講師がいたことを知ったが、こんな異常な主張をする者が塾講師をしているのか。
noteマガジン:テレビを見ない子は国語力が低い!だからテレビを見せろ!という塾講師の主張がヘンである件について書きました。それってテレビがない時代の人間の営みを思いっきり否定していますが、あなた、国語のプロを名乗っててそれで大丈夫?という話です。」(10月26日

 飯山氏のnoteマガジン記事自体は有料でも、ネット記事「「家にテレビがない」という子は国語力が低い…塾講師が「子供にはテレビをどんどん見せて」と訴えるワケ」がリンクされており、しかも元記事はプレジデントオンラインである。プレジデントといえば硬派雑誌のイメージがあったが、現代ではこんな投稿記事を載せているようだ。飯山氏へのリツイートを複数引用したい。
昔、受験には天声人語だったような、、」(358 obitaさん)
テレビ局が経営苦戦しているから、回し者では」(秋山栄次さん)
昔は、テレビを見るとバカになると言われたね。テレビバカに育てられた子供は、テレビを見ないとバカになるのか」(tktery ふと思うさん)

 '60年代初め生まれの私も小中学生の頃は、テレビを見るとバカになるとよく言われたし、テレビバカという造語まであったほど。少なくとも'70年代の教育現場では、国語力を上げるためにテレビを見せろ!という者はいなかったと思う。長時間テレビを見ている子供は学力が低い、という意見が殆どだった。しかし久松由理氏は従来の見方を完全否定、ネット記事は以下の文章で始まっている。
子供にテレビを見せてもいいのだろうか。塾講師の久松由理さんは「どんどん見せたほうがいい。米スタンフォード大学の調査でも、テレビを見ている子のほうが偏差値が高いことがわかっている。私の経験では、テレビを見ていない子は語彙力や理解力が乏しく、国語が苦手なことが多い」という――

 国語が苦手な子の共通点は「テレビを見ていないこと」というが、数学が苦手な子どもはどうよ?とツッコミたくなった。久松氏は、「私は、博学で賢い子を育てるためにテレビは欠かせないツールだと考えています。」と断言しているが、主張には唖然とさせられた内容があり、それらを引用したい。

例えば、一度も時代劇を見たことのない子が歴史小説を読んでも、武士のいでたちや合戦の様子を想像することはできません。古い言葉遣いも聞いたことがないので、当然「古文」も苦手になります。
 また、刑事もののドラマを見たことのない子が推理小説を読んでも、指紋や足跡を採取する鑑識風景すら、想像することができないでしょう。

 さらに本には、部屋にいながら異文化を疑似体験できるという魅力がありますが、イスラム文化を一度も目にしたことのない子が、果たして『アラビアンナイト』の情景をありありと思い浮かべて、物語世界を楽しむことができるでしょうか。
 要するに、いくら本を読ませても、良い授業を聞かせても、本に書いてあることや相手の語ることをお子さんが頭の中で映像化して、作家や教師とイメージを共有できないなら、その効果はないも同然なのです。

 ひと口に本と言え、絵本や図鑑、漫画の類があるのを件の女塾講師が知らないはずがない。今の地上波で時代劇は殆ど放送されないが、絵本や図鑑、漫画などでは武士のいでたちや合戦の様子が詳細に描かれている。テレビ時代劇は時代考証の誤りに定評があり、むしろテレビ時代劇よりも、絵本や図鑑、漫画、ネット動画の方が遥かに参考になる。
 私が初めて読んだ推理小説は、小学校の図書館に置いてある江戸川乱歩シリーズだったが、刑事もののドラマはまだ放送されておらず、見てなかった。ただ、本は挿絵入りだったし、探偵の活動は何となく想像がついた。指紋や足跡を採取する鑑識風景までは想像できなかったが、それでも十分ストーリーは楽しめた。

「イスラム文化を一度も目にしたことのない子が、果たして『アラビアンナイト』の情景をありありと思い浮かべて、物語世界を楽しむことができるでしょうか」という箇所こそ、中東オタクからすればツッコミどころがあり過ぎ。この塾講師殿、イスラム関連書籍を見ていないのか?
 イスラム関連書籍には地域文化を紹介する写真がふんだんに載っている。中東世界を扱った絵本や図鑑もあり、テレビをわざわざ見ずとも十分に理解できるはず。最近では中東が舞台の漫画もあり、『アラビアンナイト』の情景を思い浮かべることは可能なのだ。

 久松氏のプロフィールが載っている記事があり、この経歴だけで塾講師よりもТV業界のキャリアが長い人物だったようだ。
土佐中・土佐高校卒業(高校在学時、全国模試 国語1位)
立教大学法学部在学中、TBS演出家(当時)・大山勝美氏主宰のマスコミ人養成所メディア・ワークショップにて文章表現技術を学ぶ
卒業後、テレビ高知報道記者・ディレクターを経て、制作会社に勤務。放送作家として多数のプレゼンテーション番組制作を手がける
その二に続く

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