トーキング・マイノリティ

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精神改造 恐怖の洗脳計画

2022-04-09 22:00:07 | 音楽、TV、観劇

 録画していた『フランケンシュタインの誘惑』の「精神改造 恐怖の洗脳計画」(放送3月24日)を見た。この番組で「MKウルトラ」なるプロジェクトを初めて知ったが、以下は番組HPでの紹介。

科学は、人の思考や行動を、どこまで意のままにコントロールできるのか?1953年からアメリカCIAが極秘で推し進めた洗脳実験プロジェクト「MKウルトラ」。幻覚剤や電気ショックなど数々の危険な人体実験を行い、死者・廃人を多数生み出した恐るべきものだった。
 そのひとつ、カナダでの実験を指揮した精神科医ユーウェン・キャメロンの闇に迫る。よりよい社会を作るために精神疾患を治療しようと始まった研究の結末は―

 wikiにはMKウルトラ計画について詳しい解説が載っている。以下は概要の冒頭の文章。
MKウルトラの前身は、統合諜報対象局(Joint Intelligence Objectives Agency、1945年設立)によるペーパークリップ作戦である。この作戦は、かつてナチ政権に関与した科学者を募集する目的で展開され、拷問やマインドコントロールを研究していた研究者もいれば、ニュルンベルク裁判にて戦犯とされた者も存在した。
 ペーパークリップ作戦で渡米した人物といえば、ロケット技術開発で有名なフォン・ブラウンくらいしか浮かばなかったが、大勢の優秀な科学者が採用されても不思議はない。

 CIAがMKウルトラを進めたのは、朝鮮戦争における米軍捕虜の行動だった。北朝鮮の捕虜となった米兵らは口々に米国帝国主義を非難、帰国したくないと叫んでいた。変わり果てた米兵の姿に米首脳部が衝撃を受けたのは書くまでもない。
 実際に捕虜への洗脳に携わったのは中共だったが、これを受け、米側でもCIA長官の命でMKウルトラが開始される。ちなみに日本語の「洗脳」は英語の「brainwashing」の直訳で、英語の「brainwashing」は中国語の「洗脑/洗腦」の直訳である。

 MKウルトラに関与したのがスコットランド生まれの精神科医ユーウェン・キャメロン。キャメロンは優秀な精神科医で、かつて精神疾患者は施設に入れる以外の治療方がなかったが、世界初の通院を実施したのがキャメロンだった。
 キャメロンは後にカナダでアラン記念研究所を創設、世界的に有名な精神病院及び研究所となる。このキャメロンに目を付けたCIAが秘密裏に後援し、精神改造と称する人体実験が繰り返されることになる。MKウルトラの実験は、1957年から1964年にかけて行われた。

 キャメロンが使った精神医療はサイキック・ドライビング(精神の操縦)と呼ばれ、患者はテープで連続的に繰り返されるオーディオメッセージを受けた。患者はしばしば治療の過程で何十万回もの単一の声明の繰り返しにさらされたり、度を超した電気ショック療法や薬物投与が組み合わされる。
 この“治療”でキャメロンは「人間の白紙化」を目指したという。このため被験者は終生苦しむことになり、失禁や記憶喪失なども引き起こす。数百人が人体実験対象となったそうだが、特に薬物を使った治療は被験者からの事前の同意なしに投与されていた。高名な精神科医だったため、被験者はキャメロンの“治療”を疑わなかったのだ。被験者たちが一般市民だったのも痛ましすぎる。

 薬物実験はソ連のスパイからの自白を引き出すためだったが、効果のほどは極めて疑わしく、マインドコントロールの効果の立証も出来なかった。結局CIAは日本円で90億円もの支援を行ったが、最終的には打ち切った。

「MKウルトラ」「サイキック・ドライビング」等、SFスリラーに出てきそうな用語だが、現実に行われた人体実験だった。むしろ精神医学に名を借りた拷問であり、洗脳どころか多くの市民は廃人に追い込まれたのだ。
 MKウルトラは1974年に発覚したが、前年に当時のCIA長官が関連文書の破棄を命じたため、実験の全貌を解明は現在においても困難という。被験者の家族たちは国に訴訟を起こしたが、和解金は75万ドル程度だったそうだ。

米国における非倫理的な人体実験」という記事には、19世紀から恐ろしい人体実験が行われていた実例が載っている。このような記事を見た左翼は、「資本主義社会も全く同じではないか!」と凱歌をあげ、やはり共産主義の見直しや実現を主張するだろう。東西共に非人道的な人体実験が行われていたことは否定できない。
 だが、米国や欧州・日本の非倫理的な人体実験は暴かれても、共産主義陣営のそれはこの先も解明されることはないだろう。キャメロンは牧師の息子だったのは興味深い。近代以前の洗脳で最も効果的だったのは宗教だった。

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