脚本家のハリー・ケイン(ルイス・オマール)は事故のため盲目だったが、その昔はマテオ・ブランコという名の映画監督だった。実業家のエルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)が亡くなったことを知った直後、エルネストの息子(ルベーン・オチャンディアーノ)がハリーを訪ねてきた。自分の監督作の脚本をハリーに依頼したのだ。ハリーは過去に向き合い始めた。映画監督として活躍していた14年前、オーディションにレナ(ペネロペ・クルス)という女性がやってきたのだ。
ペドロ・アルモドバル監督とペネロペは「ボルベール〈帰郷〉」など4本共作している。それにしても色彩が豊かなのがいい。特に沸き立つような鮮やかな赤。ペネロペが着せ替え人形みたいに登場するのも見所。マリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン…。はたまたチェーンをこれでもかとぶら下げた昔のいけいけ風衣装も。
最初は少々筋立てが込み入っているが、そのうち気にならなくなる。ある面、分かりやすい話だからだ。レナをめぐり、エルネスト、マテオが動く。エルネストはその溺愛ぶりから、読心術までしてレナとマテオの仲を疑う。映画製作の女性マネージャー(ブランカ・ポルティージョ)も絡んで、最終局面に。ここからはサスペンス調にもなって飽きさせない。劇中劇の映画製作が何とも効果的で、非常にうまく取り入れている。映画はエルネスト側の圧力で勝手につぎはぎさせられるが実は元のフィルムは…。その事実が明らかになると、それはまるでメイキングフィルムをみるように一層世界に引き込まれる。劇中劇効果なのかもしれないが、マテオとハリーの二つの名前、エルネストの愛人と割り切るレナとマテオに尽くすレナなど、それぞれの二面性、表と裏という言葉で語られても面白いかもしれない。ルベーン・オチャンディアーノって肝いが、いい味出している。