荒井山から

札幌は荒井山に家がある。東京-札幌-旭川-富良野-札幌と異動。室蘭を経て札幌へ。江別に行きまた戻った。もうすぐ退社だ。

表と裏

2010年02月27日 12時23分01秒 | 映画

  1007921_01   010 「抱擁のかけら」25日、札幌シネマフロンティア

 脚本家のハリー・ケイン(ルイス・オマール)は事故のため盲目だったが、その昔はマテオ・ブランコという名の映画監督だった。実業家のエルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)が亡くなったことを知った直後、エルネストの息子(ルベーン・オチャンディアーノ)がハリーを訪ねてきた。自分の監督作の脚本をハリーに依頼したのだ。ハリー005は過去に向き合い始めた。映画監督として活躍していた14年前、オーディションにレナ(ペネロペ・クルス)という女性がやってきたのだ。

 ペドロ・アルモドバル監督とペネロペは「ボルベール〈帰郷〉」など4本004共作している。それにしても色彩が豊かなのがいい。特に沸き立つような鮮やかな赤。ペネロペが着せ替え人形みたいに登場するのも見所。マリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン…。はたまたチェーンをこれでもかとぶら下げた昔のいけいけ風衣装も。

 最初は少々筋立てが込み入っているが、そのうち気にならなくなる。ある面、分かりやす003い話だからだ。レナをめぐり、エルネスト、マテオが動く。エルネストはその溺愛ぶりから、読心術までしてレナとマテオの仲を疑う。映画製作の女性マネージャー(ブランカ・ポルティージョ)も絡んで、最終局面に。ここからはサスペンス調にもなって飽きさせない。006劇中劇の映画製作が何とも効果的で、非常にうまく取り入れている。映画はエルネスト側の圧力で勝手につぎはぎさせられるが実は元のフィルムは…。その事実が明らかになると、それはまるでメイキングフィルムをみるように一層世界に引き込まれる。劇中劇効果なのかもしれないが、マテオとハリーの二つの名前、エルネストの愛人と割り切るレナとマテオに尽くすレナなど、それぞれの二面性、表と裏という言葉で語られても面白いかもしれない。ルベーン・オチャンディアーノって肝いが、いい味出している。


メッセージは届いた

2010年02月23日 20時13分35秒 | 映画

「インビクタス/負けざる者たち」23日、札幌劇場

 1994年、ネル1007937_01ソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は南アフリカ共和国初の黒人大統領に就任した。だが、人種隔離政策を経た南アは、黒人と白人の対立はまだ根深く、国としてのまとまりを欠いていた。そんな中、ラグビー南ア代表の試合を観戦したマンデラにひらめくモノがあった。1年後には南アでラグビーのワールドカップが開かれることになっていて、代表の主将(マット・デイモン)を執務室に招いた。

 クリント・イーストウッド監督の30作目となる新作。脚本は南ア出身の脚本家によるも2325_invictus_website_wallpaper_1_3の。これまでの同監督の作品にはあまりみられないほどストレートな作品。マンデラ自身は多少は掘り下げることができたが、ほかはどうも描き方が不足し、このため、どうも最後の優勝まで、正直言って盛り上がらない。そう、手に汗握るという感じじゃないのだ。どうも、スポーツものの難しさかな。映像としてはかなり手順を踏んでいるのだが。この手の盛り上がりは、むしろ私たちが身近に見るテレビなんかの演出の方がうまいかもしれない。つまり、個々の人間と同時に、作戦面を含めた周辺状況の掘り下げが足りないため、意志の強さだけで、ついにオールブラックスを破ったと言われても、ほんまかいなって気持ちが入っていかないんだろうと思う。

 大体、主003将がなぜ簡単にマンデラの信奉者になってしまったのか。チームのメンバーもどんな葛藤があったのか。唯一の黒人選手は? 周囲に反対する者は。警備の人間の葛藤を描いて、もう一つの縦糸ととしたことはふくらみを生んだけど、これも勝ち進むにつれ自然と融和していく姿が、どうも安易すぎないか。つまり、目指す正論部分とその正論への障害部分をきちんと各登場人物を通じて描かないと、こっちに伝わりにくいんだと思う。それに試合ではやたら、スローモーションの映像と声、飛び散る汗が登場するが、それの繰り返しもこちらに代替案がないのだが、それに加え最後はペナルティーゴール合戦となっている試合展開もどうも興奮しにくい。諍いシーンはあるが、相手の巨漢選手との攻防にこちらの気持ちがどうも入ってこない。

 ただし、この余り知られない実話を紹介したこと自体はとても価値2325_invictus_website_wallpaper_1_2がある。インビクタスとは「征服されない」002の意味。マンデラが獄中に心の支えとなった詩だ。「私が我が運命の支配者、我が魂の指揮官」。自分を信じ、コントロールしていくことは、特別な逆境にあっては、そうそう簡単ではない。これを見事にやり遂げた信念の強さに敬服するばかりだ。そう言う意味では、監督をはじめとする制作者からのメッセージは確実に届いています。 そう言う意味では成功作なんだろう。     

 ただ、いつもいつも名作ばかりではないというのもまた事実なんだ。いつもあぜんとするほどの映画を見せてくれたので、一定の水準ではあるけど彼の中では名作とは言い難い。あぜんとさせてほしかったというのは何とも贅沢な希望だが。


理想と現実

2010年02月23日 20時12分42秒 | 映画

「50歳の恋愛白書」22日、札幌劇場

 美しいピッパ・リー(ロ001ビン・ライト・ペン)は年上のベストセラー作家(アラン・アーキン)と結婚し、子供二人を育て、完璧な妻を演じて50歳まできた。だが、実は彼女の人生は薬漬けの母親(マリア・ベロ)との確執があり、若い頃のピッパ(ブレイク・ライヴリー)は家を飛び出し、奔放な生活を送っていた。そんな彼女が引きこもり気味の15歳年下のクリス(キアヌ・リーブス)と出会い、次第に昔の自分を思い出す。002_3

 監督・脚本はレベッカ・ミラー。アーサー・ミラーの娘で、夫はダニエル・デイ=ルイスだ。彼女の小説「ザ・プライベート・ライブズ・オブ・ピッパ・リー」を基にして脚本を書いた。その脚本にブラッド・ピットが目をつけ、製作総指揮に名乗りを上げた。ウィノナ・ライダー、モニカ・ベルッチ、ジュリアン・ムーアなど。それぞれぴったりの役柄でした。

 登場人物はなかなか豪華だ。そんな面白さは満点だ。月曜だったからか札幌劇場8階は満員。それもほぼ中年以上。このタイトルは大成功といえる004だろう。予告編の作りもよかったしねそれにしても、やはり現実と理想のギャップにみんな悩んでいるのだろうか。

 ピッパ・リーは005十分理想的な結婚生活を送ったが、最初の出逢いに描かれていたように重い荷物を載せられていたようだ。そこからの解放を考えると、クリスとの旅立ちは理解できなくはない。ただ男の目から見ると非現実的だが、女性は旦那が死んだらもういけいけなんだろうか。いずれにしても私の目には、ちょっと詰めがなあ。 003_3    展開に深みがない、パワーが無いというか、ご都合的というのか。死んだ旦那が浮かばれないのは仕方ないにしてもだけど。いずれにしても心の解放はどんな年齢でも切実で、年を重ねて、どう出るか、人それぞれだろうけど。

アラン・アーキンはいい。今年76歳。大ベテランだが「マイ・リトル・サンシャイン」以降、再び注目され好調だ。それにしても彼の髪の毛がある姿はおかしいね。既に人気だがブレイク・ライヴリーはこれからどんどん行きそうだ。


3作目

2010年02月22日 02時15分54秒 | 映画

「シャネル&ストラヴィンスキー」20日、シアターキノ

 1913年のパリ。シャンゼリゼ劇場でロシア・バレエ団の「春の祭典」が初演された。しかしそその革新性のあまり1007733_01激しい不満の声が上がる。作曲家イゴール・ストラヴィンスキー(マッツ・ミケルセン)はショックだったが、観客として来場していたココ・シャネル(004アナ・ムグリム)は恍惚感を覚えた。7年後、イゴールとその妻子はロシア革命で亡命生活を送っていて、一方、ココはデザイナーとして成功を収めたが恋人アーサー・カペルを自動車事故で亡くしていた。ココはその才能を買い、別荘に住まわせた。そして2人は激しい恋に落ちた。

 ヤン・クーネン監督。実際、資金の調達に難儀するディアギレフに、匿名を条件に大金を提供し、再演にこぎ着かせた002のはシャネルだった。有名な香水シャネルの五番の誕生には、シャネルとストラヴィンスキーの恋が関わっていたというのがこの映画の見所か。まあ、どこからどこまで本当か分からないけれど、これまでココ・シャネルの2作を見てきたが、こういう突拍子もない解釈はそれはそれで面白い。もっ005とも2作のようにそこそこ忠実になぞる伝記映画も決して悪くないんだが、今回は二人の秘めた部分にスポットを当てたことで、結構濃密ではある。

 別荘の調度品、ファッションもなかなか素晴らしい。エンドロールの最後に出てくるシーンだが、ボーイつまりアーサー・カペルの写真立ての写真がストラヴィンスキーに代わってるようだ。つまり、こっちの方が本当かもというしゃれなのだろう。正直言って、どこまでが本当で史実なのか詳しく知らないのだが、これでこの作品がほとんどが解釈によるフィクションだということを示したかったのだろうか003Img_06

 シャネル生誕125年の昨年から3作目だが、女性は今回がもっともいい。あの勝ち気な、自立した感じがいい。      


これからは〇人と呼んでくれ

2010年02月22日 02時13分08秒 | 

100222_008  「詩と音」20日夜

詩の朗読会。南1西6第2三谷ビル6階のOYOYOにて。主催は焼鳥じゃんぼ。

自作の詩2編と中桐雅夫の2編を朗読する。これが私の詩人としてのデビューだ(詩人じゃなく痴人ってか)。

自分が最も素直に感じる詩は、具体的で、難解さからは程遠いものだ。もちろん言葉の豊饒さを追求した作品や、適度な咀嚼後にこそ場面が浮かび上がるような詩もいいのだが、新米としては抽象的なものは後でいいという気持ちだ。より直截的で、だれでも自分の経験に照らし、理解できる素材を選んだ。それに朗読をするという行為自体も、自分に活を入れる意味で有益だし、楽しい。

 今回は全く上がりはしなかったのだが、少々早口だったようだ。もっと朗々と読み上げても良かったかな。

 中桐雅夫は荒地派の詩人だが、「会社の人事」という非常に分かりやすい詩集を出100222_011している。その中から「やせた心」「腹が立ったら」を詠んだ。自作の詩は「足」「ルオーのピエロ」。この1、2年で最も強烈な体験を歌ったものだ。

自作の詩をここで紹介してもいいのだが、ここはひとつ中桐の「腹が立ったら」を掲げておこう。私が目指す方向がわかるだろう。ちなみに写真のバンドはジャズからラテンまでこの日演奏した「つうしょうバンド」だ。

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まず新聞を読まない、ますます腹が立つから、

そうして、のんびり、ぬるま湯にひたる、

ジャズを聞いて頭をからにするか、

音を消してテレビを見る。

ばかなやつ、いやなやつに会ったら、

「猿がかぜをひいているような顔だ」と思う、

わけのわからぬ批評を読んだら、

こんなものは学生のレポートだと思う。

あいつのあごをはずしてやろう、

それとも壺のなかへつっ込んでやろうと思う。

夜明けの四時にアイスクリームをなめてみる、

酔ってしびれた舌のうえに心が少し甦える。

おれはおれの笛を吹いているんだ、

人が踊ろうと踊るまいと、知ったことか。


なぜ君は綱を渡るのか

2010年02月18日 22時02分33秒 | 映画

   003_2 1007537_01_2 「マン・オン・ワイヤー」18日、蠍座

 1974年8月7日、23歳のフランス人フィリップ・プティはニューヨークにある2つのワールドトレードセンターの間に張られた綱の上を綱渡りたのだ。6年前に雑誌でツインタワー建設計画について読んで以来、彼はこの計画を遂行しようとしてきた。

 2008年度のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。なかなか人を引きつ004_2けるドキュメンタリーだ。今では無くなっているタワーではあるが、関係者へのインタビューや再現映像を交え、詳細に語る。ただでさえ、綱渡りという息をのむ事柄が、その異常な高さ(411メートル)の上で行002_2われることで、見る者の鼓動は高まり、そこまで行くまでの準備の話題も否が応でも興奮する。センターの警備員との攻防がなかなかなのだ。本人や手伝った関係者は確実に逮捕されるというリスクもある。容疑は住居不法侵入と騒乱の罪?ゆえに「史上もっとも美しい犯罪」と言われたそうだ。

 それにしても、綱の上で座ったり、向きを変え8度往復したそうだ。くらくらする。そして、幻想的でさえある。また、これを境に関係者の人生が変わってくるのが、一般人からすると何とも怖い。


美しい竹

2010年02月17日 23時42分06秒 | 映画

「きみに微笑む雨」16日、シアターキノ

 韓国の建設会社勤務のドンハ(チョン・ウソン)は新婚旅行に出かけた同僚の代理で出張し003_4、四川省成都に来た。支社長と訪れた杜甫草堂で、アメリカ留学時代の友人メイ(カオ・ユアンユアン)と偶然に再1007795_01会する。彼女はここで観光ガイドとして働いていたのだ。互いに恋心を抱いていたが、告白できずに帰国し連絡が途絶えていた2人。すぐに当時の感情を取り戻したが…。

監督はホ・ジノ 。タイトルは杜甫の「春夜喜雨」から取った。「好雨知004_3時節」と言う部分があり、「良い雨は時節を知り、春に降り、万物を蘇生する」という意味だ。二人がダンスを踊っていたときのシーンに使われている。この出会いはまさに時節を知るタイミングだったのだろうか。

 筋的には四川大地震が影を落としていたというのがミソ。002_3    

 それにしても四川の竹藪の緑の美しさ、パンダの登場も特筆もの。二人は本当に美しい。表情も心の描き方も。そこはかとない、昔の日本映画の雰囲気さえ感じる清らかな恋愛ものだ。そして、最後に前向きなところが005_2救いでもある。


ちょっと踏み出す

2010年02月17日 23時40分55秒 | 映画

1007884_01_2 「新しい人生のはじめかた」15日、シアターキノ

 ニューヨークに住むCM作曲家ハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)は独身だが、元妻との間の一人娘スーザンが英国人と結婚するためロンドンへ空路出発した。結婚式での花嫁に付き添う役目は元妻の再婚相手がすることになり、ハーヴェィは落ち込む。式のあとの披露宴に出ないつもりで仕事のプレゼンのため1007884_02にニューヨークに帰ろうとするが、飛行機に遅れてしまう。そこへCM作曲の仕事が若い同僚に取られてしまい、首なったと上司から電話で伝335088_003えられる。彼は所在なく、空港のバーに向かうと、そこに白ワインを飲みながら読書をする航空会社勤務のケイト(エマ・トンプソン)がいた。最初は警戒していたケイトだが、彼女も男性と親しくなる機会に失敗していて、心に孤独を抱えた2人は次第に会話を弾ませていった。

 原題は「LAST CHANSE HARVEY」。監督・脚本はジョエル・ホプキンス。エマ・トンプソンいいです。あの大柄な彼女が合コンでワインを飲み、寂しくしているのはなんともいえない。そして、披露宴で所在なげになっているとき、寝ている隣の坊主に服を折りたたんで枕にさせる様子は何とも温かい。1007884_03この映画は自らも脚本を書く彼女がオリジナル脚本を一目見たとき、ダスティン・ホフマンに送ったところから始まる。さすがだ。335088_018

 ダスティン・ホフマンは何とも自然体でい い。さすがだ。ピアノもうますぎないのがリアルだ。それにしても、二人は相性がいいんだろう。微妙な距離をうまく表現している。みていて心がくすぐられる。こちょこちょと。ほんのちょっと踏み出すことで、世の中が変わる。そんなメッセージを映画から、原題から受け取りました。中年にも勇気がわく、  じつにさわやかな映画でした。


バンクーバーの隣町

2010年02月15日 02時06分18秒 | 音楽

上村愛子は惜しかった。最初の五輪出場以来7、6、5、4位だもんな。できるなら次も出てほしいね。前回は確かお母さんが手作りメダルをあげていたが、今回はもっと多くの人がその感謝と労いの気持ちに頷いてくれるはずだ。それにしても4位と3位の間には大きな川が流れていて、人の記憶に残るか消えるか、いつもなら大きな分岐点だと思うのだが、あれだけの選手であれば大した違いはないと言ってあげたいけどね。とにかくお疲れ様。美しい涙でした。

 さて、そんな感想が出てくるバンクーバー五輪だが、バンクーバーの東隣にバーナビーという町がある。そこで生まれたのが彼だ。

「クレージー・ラブ」マイケル・ブーブレ

 本人2作目のアルバム。昨年10月に米国で発売以来、ビルボードチャートで2週連続アルバム総合1位を達成するなど巷をにぎわせているのがこれだ。日本では10日発売した。結構売れているようだ。

 デヴィッド・フォスター、ボブ・ロックらのプロデュース。1曲目ジュリー・ロンドンの「クライ・ミー・ア・リヴァー」は「おー、007か」というアレンジ。オーケストラをバックに、甘く、セクシーに、いいねえ。声が高く通るというより、中間の声が甘く、発音がちょっとねっとりして。2曲目「オール・オブ・ミー」だものね。私は夕張のスナックでよくカラオケで歌ったけどね。余計なこと言わないでい言って? 3曲目「ジョージア・オン・Pic_01マイ・マインド」の次が表題曲。ヴァン・モリソンの曲だ。ファーストアルバムでも歌っているそうで、お気に入りなのだろう。とても柔らかく、平井堅よりは男っぽく。マイケル・ランドウのギターソロ。5曲目はファースト・シングルになった「素顔の君に」。ちょっと意外な、さわやかな感じ。

 とまあ、オリジナル2曲にカバー曲12曲の構成。カバーは「スターダスト」のほか、ディーン・マーチン、イーグルス(「ハートエイク・トゥナイト」これは面白い)、ボビー・ダーリン、ダイナ・ワシントン、キャロル・キングなどの楽曲を取り上げている。オリジナルのもう一曲「ホールド・オン」もしっとりしていい。

 もともとデヴィッド・フォスターに認められてのデビューという。1975年生まれで、鮭漁師をやっていたそうで、HPをみると、鮭が遠くでジャンプしただけで種類が分かるそうだ(そんなに種類が多いのかな)。マルルーニ首相の娘の結婚式で「マック・ザ・ナイフ」を歌って、その席にデヴィッド・フォスターがいたのだそうだ。

 時折、鼻にかかり、ちょっと枯れた声質(ジェミー・カラムの声を弱くした感じ)が醸し出す、飽きない魅力的な声だ。デヴィッド・フォスターのアレンジもリリカルで時にダイナミックな部分は心地よく(多すぎると飽きるのだが)、たまにはこんなカバー集も いいでしょう。


都合がいい展開だが

2010年02月15日 01時11分36秒 | 映画

「最後の贈り物」14日、札幌劇場

 不治の肝臓病になり、移植をしないと助からない娘セヒ(チョ・スミン)を抱え、途方に暮れる刑事チョ・ヨンウ(ホ・ジュノ)。肝臓移植の適合体だったのが無期懲役の男カン・テジュ(シン・ヒョンジュン)。彼は組織のために殺人を犯し服役中で、チョの旧友だった。チョの願いが聞き入られ、刑務所から特別に出ることになったが、ちょっとしたすきに逃げてしまう。Kmv20080009_l

 なぜ無期懲役刑の男が10日間特別に外に出ることができるのか。うーん。これまた韓国の刑事関係法にあるのだろうか。かつて横山秀夫の「半落ち」論争にあった筋立ての「欠点問題」を思い出した。「半落ち」は当初現実にはありえないとして問題になっていたが、ありうるということになったものの、ごたごたは続いてしまった。この原作は公募作品だと言うが、どうなんだろう。見ていて、随分都合のいい話だと思ったのも事実。そして演技のくさいこともどうも鼻についた。一緒に飯を食べているシーンなんてそうだ。

 だが、途中少し寝てしまったのだが、そんなことお構いなしに後半はぐんぐん引き込まれてしまう。韓国映画の力強さは多くの邦画に欠けているところだ。監督はキム・ヨンジュン。ハ・ジウォンは綺麗で、かわいらしい。それにしても彼女をめぐって、刑事と無期懲役囚が恋敵で、セヒをめぐっていろいろ展開する訳だが、本当に都合のいい話だ。セヒ役のチョ・スミンのあどけないかわいらしさ。おじさんたちには、もうたまりませんね。手術室のシーンなど特に泣けます。とにかく、あの筋立ての強引さにあきれつつも、引っ張られてしまうのは人間の性でしょうか。やはり、病気、組織、悪人、刑事、子供…とつぼを押さえているところに、役者たちがまっすぐ絡んだのが成功ということでしょうか。いやはや、さわやかに泣けました。


ほっとして、ずるずると

2010年02月12日 20時14分51秒 | 映画

「おとうと」12日、ユナイテッド・シネ002マ札幌

 夫を早くから亡くした吟子(吉永小百合)は小さな薬局を女手一つで切り盛りしながら長女小春(蒼井優)を育て、義母の絹代(加藤治子)と3人で暮らしていた。小春とエリート医師の結婚が決まったが、結婚式は大変なことに。披露宴に吟子の弟鉄郎(笑福亭鶴瓶)が現れたの004だ。吟子の夫の13回忌で酔ってめちゃくちゃにして以来、音信不通になっ ていたのだが。そして、披露宴でも最初はウーロン茶を飲んでいたのだが。

 山田洋次監督の10年ぶりの現代劇。市川崑監督の「おとうと」に捧げた作品だ。がんによる終末期医療の「ターミナルケア」などの問題提起もしっかりとある。1007380_01

  003  加藤治子の最近の演技は本当にぼけているかのような、何かもう切れ味が凄い。それが最後に生きた。これはうまい。お客は年配が多い。鶴瓶が亡くなるシーンが結構長いのだが、その間、お客は親しい人の臨終を思い返しながら見ることになる。鼻ずるずるになっていた。私もだが。

 それにしても、人は何かの拍子にどうしようもなく、ずるずる落ちていくもんだ。もちろん理由があるのだろうけど。そんな時、温かい家族や親戚、友人の存在に気付くのだ。え、甘えるなってか。


ザクロカレー

2010年02月12日 19時49分35秒 | 映画

001  「食堂かたつむり」10日、札幌シネマフロンティア

 倫子(柴崎コウ)は失恋のショックで声を失い、自由奔放な母ルリコ(余貴美子)が暮らす田舎へ戻り、小 003_3  さな食堂を始めた。訪れるお客の思いを大事にして作る料理によって、食べた人の願いが実現し、その評判は広まったが…。

 小川糸のベストセラー小説を、「ウール100%」の富永まい監督が映画化。ほかにブラザートム、田中哲司、志田未来、江波杏子、三浦友和など。

 映像の色彩、豚のエルメスなど楽しめる。役者もうまい。料理はもっと説明的でもいいぐらいだが。こういう、説明を002_2省いた、メルヘン調な映画が女の子に受けるというのか。確かにほんわかして、「食べるということ(料理すること)は幸せ」って、そんなに間違えでない。食から地球のいろいろなことを考えることができるだろうし。

ただし、たとえ母子の愛情が映画の柱としてそこそこ描かれていたとしても、こういう映画ってちょっと自己愛に過ぎるような雰囲気も出てきてしまい、好004_2き嫌いは分かれるかも知れない。男の私も必ずしも嫌いじゃないんだが、ちょとあざとくないかって茶々を入れたくなる展開なのだ。ましてや最後に倫子に声が出るなんて。もっと母子それぞれの葛藤を、互いの立場を使って描いてほしかった。それが私にとって興味の一番だからだ。そうさ、もうっとどろどろ行けよって感じなんだね。私には。料理も江波杏子のシーンはあの特徴的な鼻の穴と同様に極めて引き込まれたけど。まあ、それでも映像のチャーミングさは立派なものだ。

 あそうそう、ザクロカレーあれはうまいかも。料理は「きょうの料理 ビギナーズ」などを作っているチームが監修しているようだ。


ハートフル

2010年02月10日 01時01分30秒 | 映画

「今度は愛妻家」9日、ユナイテッドシネマ札幌

  売れっ子カメラマンだった北1007199_01見俊介(豊川悦司)は仕事から遠ざかる一方で、助手の誠(濱田岳)に任せ、写真を撮らずに、だらだらと毎日を送っていた。健康マニアの妻のさくら(薬師丸ひろ子)は夫に文句を言いながらも、にんじん茶を飲ませるなど夫の健康を気遣い、温かく見守っていた。ある日、003俊介は女優志望の蘭子(水川あさみ)を家に連れ込み、それをさくらが目撃した。彼女は愛想を尽かしていなくなる。

 元々は中谷まゆみ原002作の舞台作品で、行定勲監督が映画化。脚本は伊藤ちひろ。

うーん、そうなるのか。ここでばらすと面白くないが、なるほどそうなるのかという感じ。東京の北沢辺りの通りも感じがいい。それはそうと、石橋蓮司のオカマ、いいですね。なかなか心温まるいい作品でした。


自分を知ること

2010年02月10日 00時57分55秒 | 映画

「The ダイエット!」9日、蠍座

 23歳からオーストラリアに住む映像作家の関口祐加は49歳。食べることが大好きで、100キロに近づこうとしていた。42歳で産んだ長男アムール君と一緒に走ることもままならず、医者から長生きできないと1007579_01宣告され、一念発起し、痩せることにしたのだが、挫折やリバウンドが怖い。自らの姿を撮れば否が応でもやり遂げられるだろうと。思い立った。

 すごい、込んでいた。50人以上は入っていたようだ。え、どうして。そんなにダイエットに興味あるのか、それとも52分と短いから。初日は込むにしても驚いた。この熱気に負けない映画ではあった。ここまで掘り下げ、自らを露出するとは。ダイエットとは自分を知ることなり。面白い。

 これは豪州でゴールデンタイムに放送され、評判となった映像だという。 Img_intro_01

 日本にいて亡くなった生家の父親が米穀商で、戦後アメリカの食料が入ってきて、そのおいしさにはまり、妻が作る和食を嫌い、外で娘と洋食を食べる。それが彼女の大好きな思い出という。豪州での国際結婚の破局では、夫が寝た後、ピザを注文して食べる話。頑張った時、チョコレートもちょっとつまむ。そう、ピザは罪悪感の象徴。チョコレートは自分を誉める象徴というわけだ。こんな話が日本でいえば心療内科医かセラピストに指摘される。ついでに美容外科医にホの字になるとは、仕事か実益かようわからんが。いずれにしても、全体のテイストはあのマイケル・ムーア調。ドキュメントといっても暗くはなく、明るい。でも太っている現状が彼女のアイデンティティーと密接に結びつき、母親との会話はImg_director02ほろりとさせられる。

 そもそも彼女は1989年、本名の関口典子の名前で第二次世界大戦中に従軍慰安婦にさせられたパプアニューギニアの女性たちを撮った第1回監督作品「戦場の女たち」を発表している。今はシドニー映画学校で講師を務め、今回が第3作目。原一男監督を師と仰ぎ「ゆきゆきて、神軍」の制作ノートの英訳を完成させたそうだ。

 あの肉体を惜しげもなく、いや恥ずかしくもなく、しかもパンツからは…。いやはや、撮ることを突き詰めれば、自分の嗜好をさらけ出し、裸同然にならざるを得ないだろうし、こんなことぐらいはドキュメンタリー作家であれば、大したことないのか。そのガッツに驚くのだが、半年で94キロほどが78キロぐらいに減ったという事実を生みだした一石二鳥的仕事を間近にすると、まさに浮かぶのは、 たくましきは汝の名なりの一言だ。敬服。