「赤穂城断絶」22日、浅草名画座
1978年、萬屋錦之介、金子信雄、西郷輝彦、深作欣二監督
あらす じは省略しても良いだろう。元禄14年3月、浅野内匠頭長矩が吉良上野介を斬りつけ、即刻切腹に。翌年12月14日、赤穂浪士四十七人が吉良邸へ討入る。そして翌16年2月4日、それぞれが切腹する。
gooの説明によると、これは25回目の映 画化だという。原作・脚本は高田宏治。
配役は大石内蔵助が萬屋錦之助、大野九郎兵衛が藤岡琢也、堀部安兵衛が峰岸徹、不破数右衛門が千葉真一、橋本平左衛門が近藤正臣、そのほか、森田健作、加藤嘉、寺田農、藤巻潤、芦田伸介、浅野内匠頭が西郷輝彦、吉良が金子信雄、柳沢吉保が丹波哲郎、天津敏、成田三樹夫、三田佳子、岡田茉莉 子、三船敏郎、松方弘樹など。
割とオーソドックスな描き方だが、元々野に下っていて駆けつけたような千葉真一の登場がちょっと面白い気もする。
「修羅の群れ」1984年、東映
松方弘樹、鶴田浩二、菅原文太、山下耕作監督
昭和8年の冬。雪の舞う横浜の吉岡道場を加東伝三郎(丹波哲郎)が訪ねてきた。そこで柔道を習う稲原龍二(松方)は加東の若い衆になることに決めた。明大出のインテリながら博奕で身を滅ぼした父の仇をとるためだった。加東一家の兄貴分横山新二郎(鶴田)が仁侠道を龍二に教えた。龍二は海岸でチンピラにからまれている中田雪子(酒井和歌子)を助け た。昭和15年、二人は結婚した。同19年、勤労奉仕で御殿場に出かけた龍二は、伝三郎の兄弟分、横浜笹岡一家の桐原銀一郎とことを起こしてしまう。しかも 、横浜四天王の一人、鶴岡政次郎(若山冨三郎)の目前だった。だが鶴岡は、弱い人間をかばって喧嘩した龍二を見込んで、身柄をあずかることになった。戦後、湯河原の賭場で無法をは らいた海軍復員兵の長谷部(木之元亮)と森谷(清水健太郎)が龍二の貫禄に惚れ、若 い衆になった。更に、モロッコの辰(北島三郎)、井沢輝一(菅原)という愚連隊あがりの暴れ者も舎弟分となった。そして昭和24年、熱海の山崎一家石井光之助親分の跡目を継ぎ、稲原組がうぶ声をあげた。稲原組は熱海を制覇し、小田原、横浜、静岡へと進攻、組員も増えた。龍二の人種差別しない心に感動した韓国人の山村修道(張本勲)、田上圭(小林繁)のほか、石河隆司(北大路欣也)も身内となった。特に石河はモロッコの辰が命がけで誘った。だが井沢の独断専行が目にあまるようになった。横山は彼を破門せよと迫り、龍二は断腸の思いでこれに従った。
原作は「週刊アサヒ芸能」連載の大下英治の同名小説。村尾昭が脚本。モデルは稲川会総裁、稲川角二で、2002年にもリメイク版が作られている。松方弘樹の単独主演による本格的仁侠映画はこれが初めてかも知れない。よって共演者も豪華だけど、文太が松方から「おい」呼ばわりされてしまうのはどうだろう。それも跳ねっ返りだものなあ。モロッコの辰ことサブちゃんが自分の命と引き替えに北大路欣也を仲間に入れる。泣かせる。豪華共演だが拡散してしまい、見終わると、これも格好いいタイトルの迫力に追いつかない感じ。それにしても東映だから張本は分からないでもないが、小林繁が出るのはどうなんでしょう。酒井和歌子の「ニイタカヤマキャラメル」という売り子の帽子が映えていた。
「三十六人の乗客」1957年、東宝
小泉博、志村喬、淡路恵 子、千秋実、扇千景、杉江敏男監督
クリスマスイブに300万円の強盗殺人事件が起きる。捜査本部は犯人が上信越方面へ逃亡との情報を得て山上刑事(志村)の命令で刑事を張りこます。だが部下の一人渡辺(小泉)は山上の娘ひろ子の夫だが、辞表を出し前の女柳沢三津子(淡路)とよりを戻し、草津行きのスキーバスに乗る。浦和に着いたとき、渡辺と口論した三津子は降りてしまうが、渡辺は浦和の刑事から拳銃を渡されバスの警戒を頼まれる。熊谷でバスは本部の連絡を持ってきた三津子を乗せて出発する。車中、自殺未遂があり、渡辺が注意していた人物の素性が次々と知れる。渋川で犯人逮捕の報が本部からもたらされるが、男(佐藤允)が乗客に拳銃を向けた。すきをみて渡辺は男の背中に拳 銃をつきつけるが、男はとっさに近くの子供を人質にした。渡辺は拳銃を捨てる。犯人の指図のまま進むバスはくされかかった木橋にさしかかった。犯人は強引に渡ることを命じる。急ブレーキでバスが止り犯人が前によろめいた折をのがさず渡辺はつかみかかった。
「オール読物」の有馬頼義の原作を井手雅人と瀬川昌治が共同脚色。若山セツ子、千秋実、多々良純、森川信、中谷一郎、堺左千夫、扇千景、佐々木孝丸、天津敏ら。
これは隠れた名作だ。一昨年、文芸座で和田誠プレゼンツとwith三谷幸喜で「和田誠が『もう一度観たいのになかなかチャンスがない』といっている映画」として江戸川乱歩原作の「死の十字路」と共に紹介されていた。やはり脚本家も設定に興味を覚えるのか、何度かテレビでドラマ化されている。密室劇で登場人物の性格が非常に興味深く描かれる。主人公の渡辺も刑事を辞めようとしており、それが次第にやりがいを感じていく。こういう素材なら、映画でも再びリメイクされても面白いだろう。それにしても東京からのスキーバスは窮屈そうだ。それはそうと、佐藤允を追い掛ける小泉博が雪のがけ山を一緒に転げるように降りるのだが、バスの乗客も追い掛けてくる。どうも楽しそうに降りてくる。大丈夫か。弾はまだあったはずだが。自殺未遂の学生は中谷一郎のようだ。よく分からなかった。塩沢ときは声で一発分かったが。