「この写真は、最後に砲弾にあたったロバートに、マリアが自分もロバートと一緒に残ると言って涙を流しているところだね。」
「というより、「君だけは生き続けてくれ」とロバートに説得されているところだね。」
「ロバートの説得にマリアが泣く。」
「ロバートが静かに説得する。」
「そしてマリアは納得する」
「馬の上でロバートと残りたいとマリアは抵抗しながらも、馬と一緒に消えて行く。」
「残ったロバートの言葉とロバートの機関銃の射撃 この中でロバートは死ぬんだね」
「鐘が鳴っている場面 それでTHE END 」
「思い出すね。」
「高校生の僕も涙が出たよ。」
「この小説のはじめに詩が引用されているね。」
No man is an Iland ,intire of it self;
Everyman is a peece of the Continent,
A part of the maine; if a Clod bee washed
Away by the Sea,Europe is the lesse,as
well as as if a Promontorie were,as well as
if a Mannor of thy friends or of thine
owne were; any mans death diminishes
me,because I am involved in Mankind;
And therefore never send to know for
Whom the bell tolls;It tolls for thee.
JOHN DONNE
とね。」
「どういう意味の詩なのかよくわからないけど」
「僕もわからないよ。でも
最後の部分は
『されば問うなかれ
誰がために鐘は鳴るやと
そは汝がために鳴るなり』、
と大久保康雄の訳ではなっているね。
この辺は少しはわかるとしても、その前はよくわからない。
John Donne (1571~1631)という人は「形而上詩」という詩を書く
詩人ということになっているらしいね。
比喩(Metaphor)を使って表現するのが得意らしい。」
「そうかね。むつかしいもんだね。」
「ヘミングウェイはこの詩を最初に引用しているんだから、
この小説全体の意味と関係があるのだろうね。」
「また詳しい人に聞いて見ようや。」
「それこそ、コーネル大学の旧姓I先生に聞いて見たら。」
「そうだね。でもおそれ多くてそんなに気安く聞けないよ。」
「君の元クラスメートのTY大学のK先生もアメリカ文学が専門なんじゃないの?」
「そうだね。でも人に聞く前に自分でもう少しちゃんと勉強しておかないと。」
「それもそうだね。」
(つづく)
画像は シネマアルバム48「イングリッド・バーグマン」芳賀書店1977年初版、1982年第6刷より