この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

# 235 草野心平作 詩 「ごびらつふの独白」(日本語訳)

2006年01月18日 | 日本文学
これが作者草野心平自身による「日本語訳」である。(と私は多少の冗談を含めて言っている。真面目に言えば、詩そのものである。)「幸福といふものはたわいなくっていいものだ。」「みんなの孤獨が通じあふたしかな存在をほのぽの意識し。」「うつらうつらの日をすごすことは幸幅である。」「考へることをしないこと。」「素直なこと。」「夢をみること。」「ああ虹が。おれの孤獨に虹がみえる。」「おれの単簡な脳の粗織は。言はば即ち天である。美しい虹だ。」という蛙「ごびらつふ」の独白は私の共感を呼ぶ。


詩「ごびらつふの独白」(日本語訳)(草野心平作)

幸福といふものはたわいなくっていいものだ。
おれはいま土のなかの靄のやうな幸幅につつまれてゐる。
地上の夏の大歓喜の。
夜ひる眠らない馬力のはてに暗闇のなかの世界がくる。
みんな孤獨で。
みんなの孤獨が通じあふたしかな存在をほのぽの意識し。
うつらうつらの日をすごすことは幸幅である。
この設計は神に通ずるわれわれの。
條羅紀の先祖がやつてくれた。
考へることをしないこと。
素直なこと。
夢をみること。
地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもつてゐるといふことは平凡で
はあるが偉大である。
とおれは思ふ。
悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。われわれはただたわいない幸福.
をこそうれしいとする。
ああ虹が。
おれの孤獨に虹がみえる。
おれの単簡な脳の粗織は。
言はば即ち天である。
美しい虹だ。
ぱらあら ばらあ。
                               以上

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