「MEMORY」本多孝好
『MOMENT』『WILL』ときてようやくたどり着きました。
森野と神田を他者を通してみる短編集。
森野が中学生の時に
教師を階段から突き落としたことの真実が明かされる。
そのことに、きっと理由があったはずだと、神田がとても
森野を心配する。
森野両親が高校生の時に亡くなる。
どうにかしてあげたいのに、森野が自分を必要としていないことに
苦しむけれど、神田が望むのはいつも森野の幸せ。
森野の心の幸せをいつも願う。
神田は大学をでてからも、仕事を辞めてフリーランスになって
アメリカに渡る、それもこれも、どれも、森野の心を幸せにするためで
いつも、いつも、森野のことを考える。
森野は、神田を大切にしたいし、いつもそばにいたいと願うけれど
そばにいればどこかに行ってほしいと思う。
この不器用な二人が、いつもいつも、互いの幸せを望むことが
時間の流れのなかで、きちんと確認できる。
『MOMENT』『WILLをつなぐとても意味のある一冊。
いつでも、どんな時でも、二人は相手の幸せを望む。
森野と神田の不器用だけど相手を思い続けることの強さと、
そこにある真実が嬉しい。
喚かない愛は美しく強い。
MEMORY (集英社文庫) | |
本多孝好 | |
集英社 |