私は中小企業の友人を知っています。
小学校から大学まで一緒でした。
彼のことなら大概の事は知っています。
多分親よりもよく知っているはずです。
大学を出てから私は会社員となり、彼は親が社長の会社に入りました。
事業内容は書店経営です。
この書店は親が一代で大きな書店に育て上げました。
最初は路地にあった小さな書店でしたが、経営手腕に優れていてどんどんと成長しました。
彼は親父の働く姿を見ながら育ちました。
私からは羨ましい存在でした。
私は本が好きでしたので、好きなだけ読める彼を羨ましく思いました。
書店で働きながら結婚もして子供もできました。
彼が４０歳の時、父親が心筋梗塞で急死しました。
親父に頼りっきりの彼でしたからショックの大きさは想像できます。
書店も再開し毎日何事もなかったように営業していたので私は安心していたのですが、親父がなくなった３か月後に母親が自殺しました。
人の話では将来を悲観してのことだったの事です。
書店は銀行などから相当な借金があり、本業の本の売れ行きも郊外大型店に押されて悪戦苦闘していました。
それは私も心配していましたが、私に何も言ってくれずに閉店してしまいました。
そして借金を整理するために裁判所に自己破産の申請をしました。
私は取れる手段は他にもあった筈だと非常にがっかりしました。
妻と子供は実家に帰ったようです。
本人は何処へ行ったことやら、皆目便りがありません。
悪口を書くわけではありませんが、親から余りに大切に育て上げられ、挫折の経験がなかったと思います。
両親の死という大きな挫折が一度に襲われました。
可哀そうだと思います。
自己破産してもう１０年経ちます。
今は何処にいることやら、時々楽しかった頃を思い出します。