朝から、電動草刈機の音がして
裏の空き地の草が刈られている。
隣の工場の窓の上まで伸びたやぶからし。
作業する人の身長を超える草。
二人がかりの作業は半日続いていた。
ここに移ってきた頃、
この場所には遠くからでも目立つ大きな樫の木が葉を繁らせていて、
今の季節は、2階の風呂につかりながら、窓いっぱいに広がる
樫の葉が風にサラサラと音を立てながら輝くのを見るのが好きだった。
木の下には近隣の人が家庭菜園をして、花や野菜が育っていた。
何年かして、落葉が周囲の家の雨どいを詰まらせ、屋根を傷める
というクレームが起こって、大きな木は倒され搬出された。
それを機にわが家でも雨どいを掃除しようと、平衡感覚の
おぼつかない夫にかわって業者をお願いしたところ、確かに
痛い出費ではあったけど、
「雨どいの詰まるところに、いいカバー作れなかったかなぁ。」
「2年に一度ぐらいの出費があっても木は残してほしかったねぇ。」
― あんな、立派な木をもったいないねぇ。と会話した。
古い土地柄だけに、古い建物の解体や新築がつぎつぎにあって、
木のあった空き地の大部分も、昨年今時の家具付の
賃貸集合住宅に変った。
わが家自体、古い木の格子を持つような長屋を解体して建てた
家なのだから必要な変化は、仕方がないとは思うのだけど、
・・・ああ。やっぱり寂しい。