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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2027 結婚は贅沢な消費

2021年11月27日 | 社会・経済


 国勢調査によると、日本人男性の生涯未婚率は2000年に10%を突破し、以降は上昇を続けて2015年には23.4%に達しているとされています。満50歳を迎えた日本人男性の、ほぼ4人に一人が生まれてから一度も結婚していないという状況にあることが、この数字からは見て取れます。

 もちろん、婚姻数自体もほぼ右肩下がりで落ち込んでおり、2000年に79.8万組だったものが、2020年には52.5万組と戦後最少となり、コロナ禍直前の2019年と比較しても1割以上減少しているということです。

 因みに、婚姻数が一番多かったのは、戦後のベビーブーム期に生まれた(いわゆる)「団塊の世代」が適齢期を迎えた1972年で、その数は現在の年間婚姻数の約2倍、109万9984組に達しています。

 一方、同期間に再婚数だけは逆に1.3倍に増えているとのデータもあるようです。「結婚したカップルの3組に一組は離婚する」とのデータが示しているとおり、これはそもそも離婚数自体が増えたことが最大の原因なのですが、再婚数が増えると、未婚の「男余り」が増えることもわかっています。

 再婚に関して2019年の実績を見ると、「再婚同士」のカップルが37%、「再婚夫×初婚妻」37%、「初婚夫×再婚妻」26%ということがわかります。「再婚妻×初婚夫」と「初婚妻×再婚夫」とでは常に1.4倍近く差があるということは、つまり、未婚の男性がその分「あぶれてしまう」ということ。経済力があり、女性にとって魅力的な男性が女性を独占することで、結婚できない男性がまた増えてしまうという厳しい現実を指しています。

 さて、したくてもできないという現実はそれぞれにあるのでしょうが、なぜ若者たちはなぜこの20年余りの間に、これほどまでに結婚しなくなったのか。10月9日のYahoo newsでは、これまで継続して若者の結婚離れの問題を追ってきたコラムニストの荒川和久氏が、「結婚は、もはや贅沢な消費である」と題する論考を寄せています。

 結婚後の二人、あるいは、子が産まれて家族となった後の生活には、恋愛関係とは違い、否が応にも現実が突きつけられる。現実とはお金であり、いくら大恋愛の末に結婚したカップルでも「愛さえあればなんでも乗り越えられる」とは決して言えないだろうというのが、この論考における荒川氏の認識です。

 「結婚とは、ひとつの消費行動である」とは、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルの言葉だが、ひとつの共同体運営であり、経済活動でもある結婚生活に関し、未婚男女の間では「結婚はコスパが悪い」という説が一定の信憑を得るようになっていると氏はこの論考に綴っています。

 出生動向基本調査において、18-34歳の独身者を対象として「結婚の利点」「独身の利点」を聞いたものがあるが、ここから見える男女の違いは、それこそ結婚というものに対する男女の経済的価値観の違いを如実に表していると氏は言います。

 「結婚の利点」について、女性ではこれまで「経済的に余裕が持てる」の項目を選択する人が男性よりも圧倒的に多く、その差は年とともに拡大してきた。「愛情を感じている人と暮らせる」が下がり続ける中、2015年にはついに(ずっと安定的に高かった)「子どもや家庭を持てる」をも抜き去ったということです。

 一方、男性では、「社会的信用や対等な関係が得られる」「生活上便利になる」などで女性より多い部分があるものの、回答全体がほぼ継続的に低調な状況にあると氏はしています。

 これはつまり、(全体的に見て)女性と比較して男性は「結婚するメリットを感じていない」もしくは「結婚するメリットが年々減っている」ということ。経済的な損得勘定から見た結婚は、(少なくとも男性には)それほど魅力的に映らなくなってきているということなのでしょう。

 一方、「独身の利点」に関しては、こちらも一目瞭然、(「予想どおり」というか)独身の利点として「行動や生き方が自由」をあげているのは男性より女性の方が多く、これも年々伸びていると荒川氏は説明しています。

 つまり、女性の方が独身の利点を「自由」であることに見いだしており、かつ、独身のままの方が、男性よりも友人や社会との関係性を保持できると考えているということ。見方を変えれば、女性たちは結婚を、それほど自らの自由を拘束するものとして捉えているということでしょう。

 逆に、男性が独身のままでいたいのは、「自分のためにお金を使いたい」からだと氏は指摘しています。彼らは「自分のために金を使える自由」を捨ててまで、結婚をする必要性を感じない。妻からの小遣いで毎日を暮らすことなどを考えれば、経済的デメリットが大きすぎて、とても結婚に前向きにはなれないというのが本音ではないかということです。

 (身も蓋もない言い方になりますが)こうして考えると、結婚に際して女は「金をよこせ」、男は「金はやらん」と思っているということになる。双方譲れないポイントがここなのであれば、一定の余裕がなければこうした二人がマッチングされるわけがないというのが氏の見解です。

 さて、誰もが平等に機会を得て自由に相手を選択できる「結婚の新自由主義」がもたらしたのは、かくして、一部の恋愛強者と経済力強者だけが結婚相手を選択できる「勝者総取り」「結婚の自己責任」の世界だったと、荒川氏はこの論考に記しています。

 恋愛における強者と弱者の格差が拡大したのも、経済の新自由主義がもたらした時期と重なる。今後もこうした状況が続けば、結婚が一部の人たちだけの「贅沢な消費」となる時代がやってくる日も遠くはないというのが氏の懸念するところです。

 折しも、岸田文雄新首相は所信表明で「新しい日本型資本主義」を強調し、小泉政権以来の自民党政権が続けてきた「新自由主義からの転換」を訴えています。

 その具体的な内容がどのようなものかはまだ分かりませんが、「分配なくして次の成長なし」の取り組みによって、果たして「結婚の新自由主義」の現状にも楔を打ち込むことができるのか。日本の少子化にとっても(なかなか)難しい局面を迎えているとこの論考を結ぶ荒川氏の指摘を、私も興味深く受け止めたところです。


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