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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2781 いつまでも引退できない日本人

2025年03月25日 | 社会・経済

 昨年7月4日の日本経済新聞(「Workstyle 2030」)によれば、明治安田生命保険では現在65歳の従業員の定年年齢を、2027年度には70歳に引き上げる方針だということです。

 まあ、働くのが億劫になったら自ら退職を選べばいいだけのことでしょうが、少なくともこのまま(自分から辞めなければ)70歳まで働かされると考えれば、(人生を会社に搾取されているようで)その未来を気分良く受け止める人ばかりではないでしょう。

 もっとも、日本老年学会が昨年6月に公表した「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書」によれば、一昔前の65歳時点の体力・活力は現在では75歳の状況に匹敵する由。日本のシニアは(少なくとも体力的には)70過ぎても元気なようですから、後は気力の問題というところでしょうか。

 制度は制度として、ポイントは当事者であるシニアが働くモチベーションを維持できるかどうか。自分自身は自信がありませんが、実際のところ、2023年の日本経済新聞社の調査では、70歳を過ぎても働きたいと回答した人は全体の約4割。OECDの調査によれば、実際に働いている人(男性70-74歳)の割合も43.3%で、20年前の29.8%から大きく上昇しているということです。

 確かに周囲の先輩たちを見ても、その多くが(毎日ではないものの)いまだ「現役」として仕事をしており、それなりに忙しく暮らしている様子。「家でブラブラしているくらいなら…」「女房に邪魔者扱いされるのも嫌だし…」と言いながらも、皆さん結構楽しそうに仕事の話をしてくれます。

 なんだかんだ言いながらも、仕事をしている自分が決して嫌いではない日本人。その実態について、リクルートワークス研究所アナリストの坂本貴志氏が1月10日の経済情報サイト「現代ビジネス」に『日本の労働参加率が「主要国で最高水準」の実態』と題する論考を寄せているので、参考までに概要を小欄に残しておきたいと思います。

 これまでであれば働いていなかったような人たちの労働参加が、急速に拡大している近年の日本。女性や高齢者の急速な労働参加は、既に日本の経済全体にも広範な影響を与えていると坂本氏はこの論考に綴っています。

 ここ数年の日本の労働市場を振り返ったとき、大きな出来事として挙げられるのは、第一に女性の労働参加の急伸である。2000年に56.7%であった日本の15-64歳の女性就業率は、足元で72.4%まで上昇。国際的にも女性の社会進出が進んでいるが、その動きは日本が最も急だと氏は言います。

 (女性の)就業率について特徴的なのは変化幅だけではなく、割合も同様。2022年の時点で日本の女性就業率は既に米国や英国などを上回り、主要国ではドイツ(73.1%)に次ぐ水準に達しているということです。

就業率が高いのは女性だけではない。15-64歳の男性就業率に関しては、OECD加盟国の中では既に日本が最も高い(2022年:84.2%)と氏は指摘しています。イタリア(同:69.2%)やフランス(同:70.8%)など、働いていない男性が多数存在する国も多い中、日本の男性就業率は突出した水準になっているということです。

 もちろん、女性の管理職比率をいかに高めていくかなどさまざまな問題もあるが、少なくとも就業率のデータをみる限り、日本は男女にかかわらずとてもよく働く国だということがわかると氏はしています。

 因みに、この傾向は高齢者でも同様で、この20年の間に60代後半の女性の就業率は23.7%から41.3%まで急上昇。60代後半男性の就業率も同じく大きく上昇しているということです。坂本氏によれば、高齢者の高い就業率は日本特有の現象とのこと。日本と米国、フランス、ドイツなどの年齢階級別の就業率を見てみても、日本の高年齢者の就業率は突出して高いと氏はデータを解説しています。

 60代後半男性で言えば、日本が61.0%と既に過半の人々が現役で働いている一方で、米国(37.6%)、フランス(11.8%)、ドイツ(22.9%)など、他国はいずれも日本より就業率が低い。70代前半で働いている人の割合も、日本では41.8%に達しているが、米国では21.7%、ドイツが11.5%、フランスにいたっては4.1%しか働いていないということです。

 さて、こうした状況が「いいこと」なのか「悪いこと」なのかは一概にはいえませんが、男女を問わず多くの人が「働きたくないのに嫌々働いている」状態にあるのなら、(働かずに済むように)状況の打開に向けた何らかの対応をとる必要があるのでしょう。

 またその一方で、人手不足によって彼ら彼女らに(お願いして)働いてもらう必要が雇用者サイドにあるのであれば、そうした人々に気持ちよく働いてもらえるよう、さらに環境(や条件)を整えていく必要があるのだろうなと氏の論考を読んで改めて感じたところです。



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