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#2287 年金の元を取るには

2022年11月03日 | 社会・経済

 「公的年金は破綻する」「年金は支払うだけ損」という話をする人もいますが、実際に齢を重ね働けなくなった時、やっぱり本当に頼りになるのは2カ月に1回振り込まれる年金だという高齢者は多いでしょう。

 とは言え、義務として払い続けている年金が、この先本当に自分の老後を支えてくれるかは不安だし、(ならば)自分で積み立てておいた方が確実だと考える人がいても不思議はありません。何十年にもわたって支払った保険料は、65歳を過ぎたら本当に戻って来るのか…そんな年金の損得勘定を一度はしてみる必要がありそうです。

 2020年12月11日の住生活情報サイトの「ARUHIマガジン」に、ファイナンシャル・プランナーの菱田雅生氏が『現役世代は「年金」を何年受け取ると元が取れる?』と題するレポートを寄せているので、参考までに紹介しておきたいと思います。

 まず、20歳以上60歳未満のすべての国民が法律で加入を義務付けられている国民年金の場合です。自営業者(個人事業主)や自営業者の妻、20歳以上の学生などが毎月支払う国民年金保険料は、月額16,540円(2020年現在)。20歳から60歳までの40年間、これを欠かさず全額収めた合の保険料の総額は16,540円×12ヶ月×40年で、計7,939,200円になると氏は計算しています。

 一方、65歳から受け取る場合の受取年金額は、(2020年度の老齢基礎年金の満額で)年額781,700円。金利等は無視して、これを何年受け取れば保険料総額の元が取れるのかと言えば、7,939,200円÷781,700円≒10.16年ということになる。

 つまり、約10年間(75歳まで)受け取ると支出に見合った金額を享受できることになり、約20年(85歳まで)受け取続けられれば保険料総額の2倍の年金が手に入るということ。因みに、これを自分で運用するとすると、20歳から85歳までの65年間の平均利回りで年率2%弱をキープする必要があるということです。

 次に、会社員や公務員などのサラリーマンが加入する厚生年金についてです。就職してから退職するまでの収入の全てがわからないと正確には計算できないとしても、(この際ざっくりと)標準報酬月額35万円(年収420万円程度)で40年間働いた人の場合はどうなるか。

 支払う保険料は、自己負担額(←とりあえず会社負担分を除くとして)が毎月31,110円になるので、保険料の総額は、31,110円×12ヶ月×40年=14,932,800円。自営業者の2倍近く支払っている計算です。

 一方、65歳から受け取れる年金額は、老齢厚生年金920,808円+老齢基礎年金781,700円の合計1,702,508円(年額/配偶者の加給年金等は含まず)。何年で元が取れるのかと言えば、14,932,800円÷1,702,508円≒8.77年というのが氏の見積もるところです。

 つまり、65歳になってから約9年間(74歳まで)生き延びれば、払った保険料の元が取れるという計算になる。18年間(83歳まで)受け取れば、保険料総額の2倍の年金を手にすることができるということです。

 因みに、その人に専業主婦の妻がいるすると結果はさらに短くなる。この場合、妻の老齢基礎年金781,700円も(保険料の負担なく)受け取れるので、14,932,800円÷2,484,208円≒6.01年と、たった6年(71歳まで)かそこらで元が取れると氏は言います。

 この場合、12年(77歳まで)で保険料総額の2倍を受け取れるので、(国民年金の場合と同様)20歳から85歳までの平均利回り計算をすると、年率3%強の複利運用に相当するということです。

 さて、ここでおさらいすると、国民年金の場合は75歳、厚生年金の場合は73歳がひとつの損益分岐点になるということ。令和3年の日本人の平均寿命が男性81.47歳、女性87.57歳であることを考えれば、多くの日本人は国民年金・厚生年金の「元を取る」ことができると考えてよいかもしれません。

 もっとも、受給開始を待たずに亡くなってしまう人もたくさんいるわけで、早死にすれば大きく損をしてしまう可能性もないわけではありません。年金を取られっぱなしにしない、1円でも多く受け取るためには「長生きしなければ損」ということでしょう。

 さらに言えば、年金で面倒を見てもらえるのは老後にもらえる老齢年金ばかりではありません。障害を負ってしまったときのための障害年金、一家の大黒柱が亡くなってしまった場合の遺族年金など、人生のリスクに備えてくれるのもまた年金のありがたさ。

 損か?得か?と聞かれれば、普通に考えて「お得」なことが多い日本の公的年金制度は、(正直なところ)もう少し有難がられても良いような気がするのですが果たしていかがでしょうか。



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