MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2329 良い子は真似しないように…

2023年01月01日 | テレビ番組

 「アニメソング界の帝王」と称された歌手でタレントの水木一郎氏が12月6日に亡くなられたとの訃報に、(50代以上の男性を中心に)多くのアニメファンが哀悼の思いをネット上に捧げています。

 水木一郎氏と言えば、「超人バロムワン」「バビル2世」「仮面ライダー」「がんばれロボコン」「キャプテンハーロック」などなど、カラーテレビが導入されて間もない1970年代の少年たちをテレビの前に釘付けにした(ヒーローや戦隊ものの)番組の主題歌の歌い手として広く知られた存在でした。

 中でも「マジンガーZ」は、「ハレンチ学園」の永井豪原作の本格派スーパーロボットアニメとして当時の少年たちの人気を博し、その主題歌は(「飛ばせ鉄拳、ロケットパンチ♪」などと)半世紀を過ぎた今でも口ずさむことができるほどです。

 思えばこの「マジンガーZ」は、巨大な人型ロボットに主人公が乗り込み操縦するという、(その後に続く)「巨大ロボットアニメ」と呼ばれる分野を切り開いた初めての作品でした。

 それまで、「ロボット」と言えば鉄腕アトムのような自律型の等身大のものや、鉄人28号のようなリモコン操縦型のものがメインでしたが、パイロットが乗り込んで戦う「搭乗型」のスタイルは、その後のガンダムなどのモビルスーツやエヴァンゲリオンなどに引き継がれていくことになります。

 そういう意味で言えば、兜甲児が操縦する「マジンガーZ」は、最高資料率30%超えの実績とともに少年アニメの新機軸を打ち立てた歴史的な存在ということができるのでしょう。

 しかし、よく考えれば、ロボットに乗り込んで(目の前の)巨大な相手と殺し合うというのは結構怖いことのはず。それなのに、何故に少年たちは戦うスーパーロボットに乗りたがるのか。

 12月13日のYahoo newsに空想科学研究所主任研究員(を標榜する)柳田理科雄氏が「マジンガーZの操縦者はロボット酔いしないの?」と題する面白いレポートを寄せているので、この機会に紹介しておきたいと思います。

 アニメに登場するロボットの多くは、人間が乗って操縦する「搭乗型ロボット」だが、その元祖は、なんといってもマジンガーZ。「超合金Z」という特殊金属で作られたロボットで、身長は18m、体重は20tに達するまさにスーパーロボットだと柳田氏はこのレポートに綴っています。

 主人公・兜甲児がホバーパイルダーに乗って、マジンガーZの上空まで飛んでいき、「パイルダー・オン!」と叫んで頭部に合体する。いま考えれば、ちょっとムダの多い搭乗方法では……という気もするが、これが実にカッコよかったと氏は言います。

 しかし、同時に複雑な気持ちにもさせられる。人間がロボットに乗り組んで戦うのは、あまりに危険な行為ではないか。人が出向いては危険だからロボットに任せようという(ある意味あって当然の)発想が、そこには一切感じられないというのが氏の指摘するところです。

 マジンガーZの性能は細かく設定されているから、乗り込んだ兜甲児がどういう状況に置かれるかについては数字を使って具体的にシミュレーションできると氏はしています。

 まずは普通に歩くとどうなるか。人間の10倍も大きいこのロボットは歩幅6.8m、時速50kmで歩くという。時速50kmとは秒速14mだから、歩幅が6.8mなら1秒間におよそ2歩。もちろんこんな歩き方をしたら、パイロットの乗る頭部は大きく揺れるということです。

 実際にアニメの画面で測定すると、マジンガーZが歩くとき、頭は25cmほど上下運動している。これすなわち、頭部の操縦席に乗った兜甲児も、1秒に2回というハイペースで上下に25cm揺さぶられているということで、車酔い、いやロボット酔いは必至だというのが氏の見解です。

 歩くだけでもツラいが、走るとなると苦痛どころか危険となる。マジンガーZは時速360km=秒速100mで走るという設定になっているが、これは新幹線よりも速いスピードだと氏は言います。

 アニメの画面で計ると、走っているマジンガーZの1歩は平均0.24秒。1秒あたりの歩数は4.2歩で、(つまり)甲児は1秒間に4.2回も大きく揺さぶられていることになる。

 その間のマジンガーZの頭部の動きを測定すると、左右に60cmほど動いているので、つまり兜甲児は、左右60cmの幅で1秒に4.2回も揺れる新幹線に乗っているようなもの。乗り物酔いどころの騒ぎではなく、甲児の体重が65kgなら、折り返す瞬間、全身に1.4tの力がかかっている状態だということです。

 因みに、マジンガーZのジャンプ力は20mとされている。18mの身長よりやや高く跳ぶわけでまことに躍動感あふれるが、乗っている甲児も同じ動きをしていることを忘れてはいけないと氏は話しています。

 計算すると、飛び上がったはいいものの、着地の瞬間、甲児は20mの高さから落ちたのと同じ衝撃を受ける。着地の速度は時速71kmに達しており、も操縦席に座っていても命の保証はまったくできないということです。

 さて、もしも本当にマジンガーZに乗り込んだら、パイロットはその他いろいろな悲惨の状況に陥ることになるのですが、そこはそれアニメの世界のこと。兜甲児が巨大ロボットなどを相手に平然と戦えるのは彼がまさに「ヒーロー」としての資質を備えているからということでしょう。これがもしも現代であれば、コンプライアンスの視点から、「良い子は決して真似をしないでください」との注意書きが入っているかもしれません。

 思えば、ガンダムだってエヴァンゲリヲンだって同じこと。人間の体力や能力にはおのずと限界があり、努力と根性で地球が守れる時代は、そろそろ終わりを迎えているようです。

 少なくとも、わざわざ子供をロボットに乗せて危険に晒さなくても、(どうせ外の様子はモニターでしか分からないのだから)遠隔で操縦させればよさそうなもの。これだけテレワークが普及している昨今であれば、ヒーローにももっと違った活躍の仕方があるのではなかと、柳田氏のレポートを読んで私も改めて感じた次第です。

 



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