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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2792 会社人生は「筏下り」と「山登り」

2025年04月06日 | 社会・経済

 就活情報サイトを運営する「学情」(東京都中央区)が昨年8月、インターネットを通じ、20代の(いわゆる)第二新卒を対象に「転職理由や転職で実現したいことに関する調査」を行っています。

 これによれば、社会人経験3年未満の「第二新卒」の転職理由の1位は「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」(35.0%)で、以下「給与・年収をアップさせたい」(32.9%)、「より会社の風土や考え方が合う企業で働きたい」(30.0%)が続いたとされています。

 また、「転職で実現したいこと」の1位は「給与・年収が上がること」(41.4%)、 2位以下には「希望する仕事に従事できること」(38.6%)、「プライベートな時間を確保できること」(32.9%)が続いたということです。

 学校を卒業し期待を胸に就職したのはいいけれど、あてがわれた職場は思っていたのとは違っていた。1年・2年はそれなりに頑張ってみたけれど、(転職をしてでも)「もっとやりがいのある仕事をしたい」「希望する仕事に就きたい」と考える若者が多いということでしょう。

 イマドキの若者の自己評価が高いとしても、若いうちの仕事がそう面白いものでないのは(きっと)今も昔も変わらないもの。私自身、仕事が(少しずつでも)面白く感じるようになったのはずいぶん後のことで、20代の頃にあれやれこれやれとあてがわれていたあまり意味のない仕事については、(まぁ、「雑巾がけ」だと思って)淡々とこなしていたような気がします。

 だからと言って、「今の若いものはガマンが足りん」とか嘆いてもそれはそれで詮無い事。「仕事がつまらん…」と悩む現在の若者たちに向け、2月7日の総合情報サイト「All About」に、ライフキャリアガイドの小寺良二氏が、『総合職を避ける若者たち…年収と昇進以外の“本当の価値”とは』と題する一文を寄せているので、参考までに指摘の一部を残しておきたいと思います。

 最近、予想していない「異動」や自分の意に沿わない「配属」に拒絶反応を示す若者が多いと聞く。内定辞退を防ぐため、入社後の配属先を確約する企業も増えているが、異動がない「地域社員」や「準社員」などの雇用形態もある中で、「総合職」を選んで働く価値はどのような点にあるのか…と小寺氏はこの論考で問いかけています。

 まず、「総合職」とはどのような職種なのか。氏によれば、一般的に総合職は社内の中核業務を担うポジションであり、仕事内容は多肢にわたり、将来的には管理職や幹部候補として期待されている人材とのこと。そのため、基本的にはジョブローテーションとして部署の異動があり、転勤も発生しやすいのが特徴だと氏は説明しています。

 こうした総合職に対して、「一般職」は総合職のサポート業務を担う役割であり、書類作成などの事務作業から、顧客対応まで細かいタスクを担う。しかし最近では一般職を採用する企業は減少傾向にあり、派遣社員や契約社員を採用して一般職の役割を担ってもらうことが多いと氏は話しています。

 総合職は一般職よりも年収が高く、昇進も早いことがメリットと考えられていたが、今の若者には高い収入を得たり上のポジションを得ることよりも、「自分のやりたい仕事をやる」「地域を選んで働く」ことのほうが重要だと考える人も多くなってきたということです。

 それでは、さまざまな働き方を選べる時代になってきている中で、転勤や異動を伴う総合職を選ぶ意義は(「年収」や「昇進」以外に)どんなものがあるのか。氏によれば、キャリアデザインの理論の中に「筏(いかだ)下り」と「山登り」という考え方があるそうです。

 キャリアの初期段階では、筏下りのようにさまざまな業務にぶつかりながら経験を積んで力をつけ、その経験から自分の登る山(専門分野)を見つけて山登りをするようにその分野を極めていくという考えだと氏はここで説明しています。

 実はこのキャリア初期段階の「筏下り」の時期において、総合職という働き方は都合がいい。それは、自分の意志とは関係なくいろいろな経験を積めることだというのが氏の認識です。

 総合職での他部署への異動や地方への転勤は、ある意味会社からの「無茶ぶり」と考えられる。本人がその地域に住みたいかどうか、その仕事をやりたいかどうかは関係なく、会社から一方的に「やれ」と言われる。その不条理さを受け入れられず退職を考える若者がいるのは事実だが、もし本人の中長期的なキャリアを考えるのであれば、その無茶ぶりを経験してみるのも一つだと氏は話しています。

 なぜならば経験値が乏しい若年期は、実際にやってみないと自分に向いているかどうか判断できないことが多いから。自分(←小寺氏)の経験を振り返っても、経験の浅い当時の自分の意志だけで事業部や働く地域を選んでいたら、自分のキャリアの幅は狭いものとなっていただろうということです。

 総合職だからこそ、受けた会社からの無茶ぶりが自分のキャリアの可能性を広げてくれたとのこと。とはいえ、日本の「総合職」は海外から見ると理解しがたい部分もあるようで、ジョブローテーションによってさまざまな経験が得られる一方で、自身の専門性を定めにくいという側面もあると氏は続けます。

 このため、最近では職務内容に合わせてその職務に適した人材を採用する「ジョブ型雇用」を導入する企業も増えてきている。「総合職」や「一般職」以外に、ある特定の業務のスペシャリストを目指す「専門職」という職種もあるということです。

 そうした中、たとえ総合職であったとしても「自分はどの分野の専門家になるべきか」という観点は持ち続けたいところ。いろいろな経験をしながら、自分がやりたいことや向いていることを考え、もし極めていきたい分野が見つかったらその経験を積めることを“キャリアの最優先事項”にするのもいいだろうと氏はこの論考をまとめています。

 「自分のやりたい仕事」「適した仕事」を社内で得られれば働き続ければいいし、もし難しい場合は社外への道を模索するのも一つの手段。「多様な経験ができる」という総合職のメリットを最大限に生かしつつ、中長期的に自分の専門性や大切にしたいことを見つけるきっかけにしてほしいと話す(専門家としての)小寺氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。