転職エージェントの株式会社エミリス(大阪府東大阪市)が、昨年11月、第二新卒で転職した経験がある158人を対象に「第二新卒の転職に関する意識調査」を実施しています。(インターネットによる任意回答、有効回答数女性94人/男性64人)
これによると、第二新卒として転職に踏み切ったきっかけの1位は、「仕事内容が合わない(27.2%)」というもの。「思っていたような仕事ではなかった」「希望していない部署に配属された」などと言われると、「新人なんだからしょうがないじゃない」…と思わないでもありませんが、若者たちの「見切り」は案外早いということなのでしょう。
また、「第二新卒での転職はしたほうがいいと思うか」という質問に対しては、「したほうがいい」と答えた人が86.7%にのぼり、実際に第二新卒のタイミングで転職した人の多くが「転職は成功だった」と考えていることがわかります。
その理由として最も多く挙げられているのが、「第二新卒は需要が高い(15.2%)」というもの。人手不足感の高まりにより「売り手市場」化が進む中、「次はもっといいところ」という思惑が転職の原動力なっているということでしょう。
因みに、「第二新卒で転職した方がいい」とする理由の2位は、「合わない職場に居続ける必要はない(13.9%)」というもの。やはり昨今の求人状況からか、若い世代の割り切りの速さが見て取れます。転職サイト花盛りの昨今、転職に躊躇のない新入社員たちを引き留める術に、頭を悩ませている人事担当者も多いことでしょう。
新卒で入社した人の3年以内の離職率は34.9%(2021年3月大学卒業者、厚生労働省調べ)で、前年より2.6ポイントも上昇している由。なぜ、せっかく入った会社を辞めてしまう新社会人が増えているのか。
2月20日の情報サイト「AERA dot.」に『転職ネイティブ世代は「こんなはずじゃなかった」ですぐ離職 「リベンジ転職」の落とし穴とは』と題する記事が掲載されていたので、参考までに概要を小欄に残しておきたいと思います。
記事によれば、2024年の1年間で入社直後の4月に大手転職サイト「doda(デューダ)」に登録した新社会人の数は、調査を開始した2011年比で約28倍に達しているとのこと。実はここ数年、「1年以内」「1~3年以内」の転職を希望する新社会人の割合は4割を占めるというということです。
中でも、入社直後に違和感を抱き、「こんなはずじゃなかった」と、転職の相談を受けることが多い由。その理由のひとつとしてdoda編集部は、令和元年から3年にかけてのコロナ禍の影響を挙げていると記事はしています。
コロナによってインターンシップが中止され、対面での説明会や面接ができない企業が続出した。就職活動の第一歩ともいえる業界研究が十分にできないまま就職した結果、多くの「ミスマッチ」が生じてしまったというのがその要因とのこと。コロナ禍では、企業の新卒採用活動の「中止」や「縮小」も相次いだ。希望していた業界への就職を断念する大学生も多かったということです。
そうした状況から、採用が再開されるのを待って、当初、希望していた業界への『リベンジ転職』をする人も多いとのこと。さらに、コロナ禍の反動で人手不足が深刻化し、人材の獲得競争が激しくなったと記事はしています。
早々と内定を出す企業が増える中、「自分は何をやりたいのか」ということを十分に吟味・分析しない段階で内定をもらい就職した結果、「この会社ではなかった」というギャップを感じるケースが増えた。そしてこの状況は、今も続いているということです。
他方、転職サイトに登録する新社会人が増えた背景には、「転職市場での自分の価値を知りたい」と感じている新社会人が増えたこともあると記事は指摘しています。
転職サイトに登録すると、企業から「法人営業、予定年収400万~600万円」といった求人情報が発信される。それを見れば、自分が他の企業からどう評価されているかの目安がわかるし、エージェントのキャリアアドバイザーに相談すれば、現在の環境や、将来の可能性も観的に分析してもらえるということです。
さて、2022年7月から23年6月の1年間に転職した人を対象に行った調査(単一回答)によると、20代で最も多い転職の理由は、「人間関係が悪い/うまくいかない」(12.6%)で、30~50代と比較して、2~3倍ほど高い割合だったと記事はしています。
職場の中で20代ばかりが人間関係が悪いわけはないので、おそらくそれは当人の思い過ごし。周囲はそれまでの新入社員と同じように接しているつもりでも、上司から少し厳しく言われたり、先輩からそれほどはフレンドリーでない態度を示されただけで、「あぁ、自分は嫌われている…」と感じるナイーブな若者が増えているということでしょうか。
また、(転職理由の)複数回答では、「給与が低い・昇給が見込めない」が35.2%、「人間関係が悪い/うまくいかない」が25.9%。3番目に多いのは「社員を育てる環境がない」の23.5%で、前年の14位から大きく順位を上げたと記事は併せて指摘しています。
こうした状況は、「職場にフィットしない」というネガティブな理由ばかりでなく、次第に「職場で成長したい」というポジティブな転職が増えていることを示しており、転職の質が変化している様子も回答からは感じられるということです。
さて、それはそれとして…まあ、夜10時以降の(若者向けの)ゴールデンタイムにテレビをつければ、人気ドラマの合間に挟まるCMはビールか転職エージェントのものばかり。カッコいい俳優や人気のアイドルに、耳元で1時間の間に何回も「あなたには可能性がある」「満足してる?」「転職しない?」とささやかれれば、試してみようと思う人も多いはず。
周囲の同期みんなやってるみたいだし、秘密は守ってくれるらしい。それに、登録するのに全然お金がかからないとなれば、お試し登録しない理由はないというもの。私だってそういう世代だったら、話のネタにと登録してみて、もしも条件のいい話が来たら面接くらいは受けていることでしょう。
「需要は市場に作られる」というのもまた真理。WEB技術などを巧みに活用し、一生懸命畑を耕してきた(エージェントなどの)サービス供給サイドから働きかけも、今の状況を作他大きな要因(のひとつ)なのではないかと、どこかで感じている自分がいます。