
内閣府が発表した「平成29年版高齢者白書」によると、日本における65歳以上の高齢者人口は3,459万人で、総人口(2016年10月1日現在)1億2,693万人に占める割合(高齢化率)は27.3%と、既に4人に1人を大きく超えています。
いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となった2015年には3,387万人となり、その後も増加傾向をたどっているということです。
なお、これを男女別にみると男性は約1,500万人、女性は1,959万人で、性比(女性人口100人に対する男性人口)は76.6と平均寿命の長い女性の方が3割近く多いことが判ります。
高齢者人口自体は、(グロスでは)今後2042年に3,935万人でピークを打ち、その後は減少に転じると考えられていますが、総人口が急激に減少する中、高齢化率は引き続き上昇していくと推計されているところです。
具体的には、今からおよそ50年後の2065年には高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上となる見込みです。
一方これは、2015年現在、高齢者1人に対して現役世代(15~64歳)2.3人で支えている(「駕籠かき」状態の)社会保障が、およそ半世紀後の2065年には、高齢者1人に対して現役世代1.3人という、まさに「肩車」状態になるということを示しています。
日本の高齢化に関してさらに特徴的なことは、「団塊の世代」が年齢別の人口構成に大きく影響を与えていることが挙げられます。
実際、現在69~71歳となった1947~1949年生まれの(狭義の)団塊の世代だけでも、その出生数は毎年260万人を超えており、3年間の出生数は約806万人と、その後3年間の約648万人に比べて24.3%も多いものとなっています。
現存する人口でみても、この世代は約678万人(2005年国勢調査)で全人口の約5.3%を占めており、さらにこれに続く3年間に生まれた人たちも加えた(広義の)団塊の世代では、実に約1084万人、人口比で8.5%を占めるなど、その特別なボリューム感が判ります。
こうした状況を背景に、3月18日の日本経済新聞には『「重老齢社会」が来る』とのタイトルを冠された興味深い記事が掲載されていました。
記事によれば、我が国の75歳以上の後期高齢者人口は、間もなく65~74歳の前期高齢者を上回るということです。高齢者の半数以上が75歳以上という(高齢者の高齢化による)「重老齢社会」が訪れ、日本の高齢化が新たな局面に入ると記事は指摘しています。
定年退職後も元気なアクティブシニアが活躍する構図は次第に薄まり、今後は寝たきりや認知症など身体的な衰えが強まりがちな後期高齢者が急増する。高齢者をどう支えるのかが、社会にとってより深刻に問われる時代がやって来るということです。
さて、現在の日本では医療の発展などにより65歳を超えても元気な高齢者は多いのは、私たちの周囲を見ればわかることです。個人消費の約半分は60歳以上の高齢者が占めており、中でも豊富な資産を持ち、積極的に旅行に出かけたり趣味に打ち込んだりするアクティブシニアは、むしろ個人消費のけん引役にもなっているようにも感じられます。
一方、総務省の人口推計によると、現在、75歳以上の後期高齢者は平均月3万人ペースで増加しており、早ければ近く発表される3月1日時点の推計で前期高齢者を上回る可能性があると記事は説明しています。
記事は、そうした過程で大きく変わっていくのが「介護」の問題だと指摘しています。
前期高齢者で要介護認定されている人はおよそ3%に過ぎませんが、後期高齢者になるとこれが23%に跳ね上がる。高齢者が高齢者を介護する「老々介護」は、75歳以上になると自宅介護の3割を占めるようになるということです。
また、(そうした「福祉」の問題ばかりでなく)加齢と共に増加する認知症患者の急増は、日本経済を回すお金の流れにも大きな影響を与える可能性があると記事は指摘しています。
最近の研究によると、認知症と診断される人は60代後半で約2%、70代前半でも約5%なのに対し、70代後半になると約10%と急激に増加することが判っているということです。
現在でも、株式などの有価証券の多くは70歳以上が保有しており、高齢化により持ち主が認知症などになれば、そうした資産運用が凍結される可能性が高いと記事はしています。
2035年には最大150兆円の有価証券を認知症の高齢者が保有するようになるという試算もあることから、(市場関係者の間では)「生きたお金が回らなくなれば金融面からの成長が止まる」と懸念する声も既に上がっているということです。
記事によれば、財政の持続性などを研究する慶応義塾大学の小林慶一郎教授は「これからは高齢者を支える負担が増す『重老齢社会』といえる局面に入る。金融や働き方、財政など様々な分野で社会課題からイノベーションを生み出す工夫が要る」と指摘しているということです。
これまで社会を支えてきた大勢の後期高齢者が、近い将来(恐らくは不動産や金融資産を抱えたまま)人生の最終段階を迎えることになるでしょう。
そうした際に思わぬ混乱が起きないよう、(今のうちから想像力を働かせ)後見制度の整備や相続など、制度面からの十分な準備をしておく必要があるとするこの記事の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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