はと@杭州便り

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大気汚染:今日の杭州と1970年代の日本を比較してみる

2013-06-28 07:03:47 | 杭州生活
杭州の大気汚染のレベルは、一体どの程度なのか。

今の中国の大気汚染のレベルは、「高度成長期の日本も同じくらいだったのでは?」とよく言われる。
当時とは産業構造が違う→汚染物質の種類や複合汚染の形態も異なってくると思うので単純に比較はできないことは承知の上で、何か手がかりはないかと探してみたら、有用なサイトを見つけた。

環境再生保全機構 大気環境・ぜんそくなどの情報館
環境濃度の推移
 
http://www.erca.go.jp/yobou/archives/category/taiki-jouhoukan/taiki-taisaku/taiki-taisaku-joukyou/taiki-taisaku-joukyou-suii

日本の1970年から2010年までの環境濃度の推移(年平均値)をグラフにしたもの。
残念ながら最も環境汚染がひどかったと思われる1960年代のデータはグラフに示されていないが、グラフを見て驚いたのは、70年代前半からどの汚染物質の数値もわずか数年で劇的に減少していることである。

これを元に本日の杭州の観測値を比較してみる。
本日、杭州は雨。最近ではかなり良い数値が出ているように見えるが…?

リアルタイムPM2.5大気質指標
http://aqicn.org/?city=Hangzhou&lang=jp



①二酸化窒素(NO2)

自動車、工場から排出される一酸化窒素(NO)の二次生成物。高濃度で、呼吸器に望ましくない影響を与える。
環境基準:1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること。
杭州のAQI値:最小18~最大54
ppm換算:0.019~0.057ppm
(換算に使えるサイト:http://testpage.jp/m/tool/pm2.5_aqi.php)



最大値で日本の1972年全国平均とほぼ同じ(0.055 ppm)
現在の日本の水準:0.01~0.02 ppm

②二酸化硫黄(SO2)

固定発生源(工場): 硫黄を含む燃料の燃焼、原料の処理。呼吸器への悪影響があり、 四日市ぜん息などの原因となった。
環境基準:1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm以下であること。
杭州のAQI値:最小4~52
ppm換算:0.003~0.037ppm



最大値で日本の1972年とほぼ同じ(0.036ppm)
現在の日本の水準:0.005 ppm以下

…とここまでは、だいたい想定の範囲内。
しかし

③PM10

浮遊粒子状物質、中国ではPM10、日本ではSPMと異なる指標が測定されている。
日本のSPMは10μm以下の粒子と定義されているが,正確には10μm を越える粒子が100%カットされている粒子であり、SPMはPM10より小さく、PM7程度に相当すると言われている。
(ちなみにPM2.5は日本でも近年データを取る様になったため、70年代まで遡れない。)

PM10とSPMは単位が異なるため、グラフだけでは比較ができない。

そこで無作為に本日の日本の観測点を選んでみた。



杭州のAQI値:12-500
西東京のAQI値:1-28

AQIは指標であり、濃度ではないため、比較するためにこれをμg/㎥に換算する。
(換算に使えるサイト:http://www.airnow.gov/index.cfm?action=resources.aqi_conc_calc)

杭州:13-604μg/㎥
西東京:1-30μg/㎥



SPMグラフの中で最大値である1974年の値は現在の約3-8倍、幅があるので多少強引だが5倍として計算すると
1974年のPM10の推定値は5-150μg/㎥。

現在の杭州の値は1974年の日本(全国平均値)と比べても数倍高いという恐ろしい結果に。

もちろん日本の中でも地域差が大きく、公害のひどかった四日市や川崎などでは最大で全国平均の4倍の空気汚染物質が測定されたらしい。
ということは、PM10だけの結果で見れば今日の杭州は70年代公害のひどかった頃の四日市や川崎並…と言えるかもしれない。
(シロウト考察なので、自信がないが)

かなりショック。

結論:60年代の日本はいざ知らず、70年以降に日本に生まれ育った私達の世代では、
公害地域で育った人を除けば今の中国のような大気汚染は経験していない。

しかも日本の場合、70年代初頭を除けばどの大気汚染物質もわずか数年の間に劇的に改善されているため、
公害地域を除いて、長期にわたって汚染された大気の中で生活し、有害物質を体内に取り込むリスクはほとんどなかった。

四日市や西淀川の公害訴訟のHPも読んだ。
被害者の多くが子ども達やお年寄りだったこと、喘息で生涯苦しみぬいて亡くなった方々。
今の日本の環境がここまで改善されるまでに、どれだけ多くの人々の犠牲があったかと思うと本当に心が痛む。私達は先人達の努力に感謝しなければいけないと思う。

そしてこの先、日本の70年代のように劇的に大気汚染が改善されるとはとても思えない、希望の見えない中国…。
どうしたらいいのか、本当に言葉が見つかりません。

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1 コメント

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Unknown (ハシホ)
2013-07-19 12:36:38
とてもわかりやすくまとめて下さって、本当に頭が下がります!
ことあるごとに、丸に近い三角、という言葉に支えられています。

教えていただいたクリンスイ、目安の2倍量のカートリッジと共に日本で買ってきました。一緒にシャワーヘッドも買ってみました。水量もあってなかなかよいですー。
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