はと@杭州便り

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満身創痍の中国農村―山東省における10年の農業実践から見えてきたもの

2015-09-07 17:06:06 | その他
中国社会科学院大学院の蒋高明教授による、この10年の農村の変化についてのレポートです。

蒋教授は2005年から山東省平邑県の土地を借りて生態系農業(できるだけ農薬を使わない農業)を実践される中で、農村の汚染問題はこの10年で改善されるどころかますますひどくなっていると指摘。

自然の営みに反した生産モデルに加え、都市からの大量のゴミと、発展する都市ではとっくに淘汰された産業が農村に持ち込まれた結果、多くの汚染問題が発生するようになっています。

中国の食の安全、環境に関わる問題です。
経済が急速に衰えつつある今、これらの問題は放置されたまま、農村には産業も育たず貧しいまま、都市のツケを払わされるかのように汚染だけがひどくなっていくのではないかと心配です。そしてその農村の問題は、都市に住む人々にとっても決して無関係ではありません。

ほんの一部ですが、久しぶりに翻訳してみました。
ご興味のある方はどうぞ。

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調査一:息もできないほどの臭気

2015年7月、山東省を含むいくつかの省では猛暑に見舞われ、最高気温が40度を超えるところもあった。
このような猛暑の中、化学工業工場や養豚・養鶏場などの周辺では、息もできないほどの臭気が漂っていた。

2年前、私の農場の西北に突然非合法の養鴨場が出現した。
完全に工場化された養鴨場で、鴨は卵からかえると25日で出荷され、大規模な殺鴨工場で殺された後、南方の都市へ出荷され、何も知らない消費者の口に入る。経済の発展した都市では、汚染を別の場所へ移転させるために、このような養鴨工場や大規模な殺鴨工場を貧しい農村へ移転させているのだが、皮肉なことにこれらの工場は水源地の上流にあるため、ここの汚水や安全性に問題のある食品は、回り回って再び都市住民の食卓に上るわけだ。

養鴨場の臭気は鴨の糞便によるもので、普段でも耐えられないほどなのに、連日の猛暑で普段の数倍に達し、臭気は天を覆っている。
政府の既定では家禽類の糞便は分離処分し、水で洗い流してはいけないことになっているが、良心のカケラもない養鴨場ではそんなことは全くお構いなしに糞便を水で川に洗い流し、しかも洗う際に大量の苛性ソーダを使っているため、糞便は肥料に変わるどころか流域に広がる農作地を死の土地へと変えてしまっているのだ。

ここの鴨は生後25日で出荷するため、大量の飼料添加物が与えられている。各種重金属、抗生物質、ホルモン剤などが飼料に加えられた鴨は、普通ではあり得ないスピードで成長する。この鴨肉には深刻な品質安全問題があるのは言うまでもないが、鴨の糞便も深刻な環境汚染問題をもたらしており、長期にわたってこの養鴨場で働く農民は皆健康上のリスクを負っている。


調査二:飲めない地下水

私は農村で、最近水を買う村人が増えていることに驚いた。最初に気づいたのは2013年の春節だったが、今では村人の間で水を買うのが当たり前になっている。沂蒙山金線河両岸に広がる10数か所の村では、昔は皆川から水を汲んで飲んでいて、周辺の小さな町から引かれている水道水すらあまり飲むことはなかった。今では川の水も井戸水もとっくに飲めなくなっただけでなく、水道水すら飲めなくなっているのだ。
少しでも裕福な家ではお金を出して深い井戸を掘ってもらっている。井戸掘りが一つの商売になっているほどだ。

川の水が飲めなくなった原因は、流域の食肉業、養殖工場による汚染である。川の水は既に相当汚染されており、水質基準の「劣五類」に分類されている。浅い井戸水が飲めない原因は、農薬汚染だ。農民は少しでも労働量を減らすために、大量の化学肥料、除草剤などの農薬を使い続けたため、ついに飲み水である井戸水まで汚染されてしまった。以前は飲み水の心配などしなくて良かった農民たちが、今では毎日買う飲み水代に悩まされている。

水は山の上から買ってくる。村の上に広がる蒙山は緑に覆われ、農地は少なく、水は清らかで少し甘みがある。しかし数年前私たちが調査したところ、その水源地も汚染の危機にさらされている。観光客が増え、山の上にはあちこちレストランができていた。そのレストランの排水はそのまま川へ流されているのだ。

農民は一体どのくらいの化学肥料・農薬を使っているのか。普通は1ムーにつき150~200㎏の化学肥料、1~1.5㎏の農薬が使われているが、実際に農作物、または農作物を守るために必要なのはその10~30%に過ぎず、その70~90%を占める大量の化学物質は汚染のために使われていると言っていい。
大量の化学肥料、除草剤などの農薬は地表に固まり、土壌汚染を引き起こし、土地を痩せさせている。土地が痩せれば痩せるほど、農薬・化学肥料産業が盛んになる。政府は化学肥料、農薬、農業用フィルムなどの生産企業に補助金を出しているため、これらの化学物質は非常に安価で、1ムーの畑に使われる除草剤の費用はわずか2.1元に過ぎないため、農民たちはわざわざ節約しようとは思わないのだ。

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出典:中科院博導蒋高明調査報告:千瘡百孔的中国農村
http://blog.sina.com.cn/s/blog_4a01359b0102w5c9.html

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