【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

火神主宰 俳句大学学長 Haïku Column代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

今こそ、インターネットを使った俳句を

2021年03月12日 18時44分00秒 | 総合文化誌「KUMAMOTO」

NPO法人 くまもと文化振興会
2021年3月15日発行

特集「2021年、今年こそは」
〜今こそ、インターネットを使った俳句を〜


永田満徳

俳諧連歌が成立した室町時代末期より、俳諧の発句を芸術の域に高めた芭蕉による蕉風俳諧、正岡子規による近代俳句改革を経て、今日、俳句の歴史はおよそ五百年を閲(けみ)している。そして、今や、俳句は、世界に開かれたインターネット時代を迎えて大きな転換期を迎えている。

七年前、私が学長を務める俳句大学はネット時代を見据えて、俳句の可能性を探ることを目標の一つに掲げて創立された。ネットの長所としては、県を越え、国を越えて、個人が自らの俳句を発表できるということだろう。Zoomを使ったリアルタイムなネット句会も魅力である。これは、新たな「座」(句座)の創出である。

折しも、コロナ感染症を回避するために、情報通信技術を使ったテレワークという柔軟な働き方が推奨されている。俳句大学は、SNS交流サイトFaceBook やインターネット、夏雲システム(オンライン)を使った俳句活動を行っている。コロナ禍の影響は少なく、むしろ、より積極的に、より活発に活動している。

具体的には、俳句大学ではインターネットの「俳句大学ネット句会」、あるいは、 Facebookグループ「俳句大学投句欄」における、①講師による「一日一句鑑賞」、②会員による「一日一句相互選」や③「週末は席題で一句」、④「連休は写真で一句」や、Facebookグループ「俳句大学初心者教室」など、ネット時代の俳句の可能性を探る活動を積極的に行っている。令和二年八月発行の機関誌「俳句大学」第四号は、その俳句大学が運営するネット句会、Facebookグループの活動は無論のこと、国際俳句交流のFacebookグループ「「Haiku Column」、中国圏の二行俳句のFacebookグループ「華文俳句」などを掲載し、俳句大学の取り組みの全貌を明らかにすることを目的に編集し、200ページに近い俳句誌になった。

一昨年、俳句大学を基盤として、ネットに特化した「日本俳句協会(japan-haiku-association)」が設立された。すでにインターネットの普及によって海外でのHAIKU作家との交流も格段に増えてきた。主にSNSを介したリアルタイムな交流も盛んになってきており、日本の俳句への関心も非常に高くなっていることから、今一度、芸術性のある芭蕉の俳諧精神に立ち返ることが必要である。日本俳句協会という新しい「場」は、世界に通用する俳句(HAIKU)における芸術性の確立に向けて、国際俳句交流協会をはじめ、既存の俳句協会と互いに協力し合うことによって世界俳句の発展に貢献していくことを目指している。

さて、俳句大学国際俳句学部では、六年前にSNSの国際俳句交流の場を提供するFacebookグループ「Haiku Column」を立ち上げ、私は代表として、また、向瀬美音氏は主宰として「Haiku Column」を管理している。現在、参加メンバーは2300人を越え、1日の投句数も200句に及ぶ。瞬時に交流できるFacebookという国際情報ネットワークの恩恵を受けているのも特色である。

国籍もフランス、イタリア、イギリス、ルーマニア、ハンガリー、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、アメリカ、インドネシア、中国、台湾と多様である。使われている言語は三ヶ国語で、フランス語、イタリア語は向瀬氏、英語は中野千秋氏が担当している。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、人道的なグループということで人気があり、HAIKUによる国際文化交流が国際平和に繋がっていることを痛感する毎日である。

これらの国際俳句の試みは、機関誌『HAIKU』のVol.1からVol.6で紹介され、一昨年八月一日に朔出版から出版されたVol.5では、世界中から一五〇人が参加して、総ページ数は五五〇ページを超える。

二〇一七年四月に「俳句ユネスコ無形文化遺産協議会」が設立された。この運動によって、俳句が広く認知されていくことは俳句の国際化にとってよいことである。しかし、この運動を推進するに当たって、「何をもって、『俳句』とするか、そのコンセプトの共有に危惧を抱く」(西村和子『角川俳句年鑑』巻頭提言・二〇一八年版)という意見は重要である。俳句大学の〔Haiku Column〕ではHAIKUとは「切れ」による詩的創造による短詩型文芸であるとして、「切れ」が明確になる二行書きのHAIKUの普及に努力してきた。現在、三行書きのHAIKUが多いが、「切れ」の本質に立ち返る契機として二行書きのHAIKUの重要性は大きいと考えている。

日本の俳句の翻訳の場合であるが、はやくも俳句の構造上による〈二行書き〉の問題を取り上げていたのは角川源義である。角川源義は『俳句年鑑昭和四十九年版』(昭和四十八年十二月)において、「俳句の翻訳はほとんど三行詩として行われている。これは俳句の約束や構造に大変反している」として、「私は二行詩として訳することを提案する」と述べ、「俳句の構造上、必ずと云ってよいほど句切れがある。切字がある。これを尊重して二行詩に訳してもらいたい」とまで言い、「切字の表現は二行詩にすることで解決する」と結論付けている。角川源義が「切れ」(切字)による二行書き(二行詩)を提言していることは無視できない。俳句の本質である「切れ」と、俳句大学が提唱する「取合せ」は、二行書きにして初めて明確に表現できるのである。

日々の「Haiku Column」の二行書きのHAIKUの投句を見ても、日本人が発想しない「切れ」と「取合せ」を発見するたびに、俳句の国際交流が「俳句(HAIKU)」の解放と新しい現代俳句の展開に重要であることが痛感される。

今年は一層、インターネットの積極的活用によって、国内の俳句活動を始として、海外の俳人との交流を深め、真の「俳句(Haiku)」の在り方を探り、ウィズ コロナ、ポスト コロナ社会を見据えた国際俳句文化の更なる発展に寄与していきたいと考えている。

(ながた みつのり/日本俳句協会副会長・俳人協会熊本県支部長)

                      


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