俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 35〜
◆『くまがわ春秋』10月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.10月号)
台風(たいふう) 「秋-天文」
外波山チハル
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狙撃兵めくや台風次つぎ来
【永田満徳評】
台風は北上するにつれ、その進路に一喜一憂する。いくつかの台風の襲来のうち、次第に狙いが定まったように直撃する様を描いている。「狙撃兵」という比喩が不穏な台風の動きをうまく表現している。
【季語の説明】
北太平洋の南西部に発生する熱帯低気圧のうち,最大風速が毎秒17.2メートル以上に発達したもの。直径数百から千キロメートルほどの渦巻で,中心に向かって反時計回りに吹き込む。風速は中心から数十キロメートル離れたところが最大で,中心では静穏になっていることが多い。進行方向に対して右側が強い。
鈴虫(すずむし) 「秋-動物」
西村楊子
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鈴虫や耳鼻科の予約キャンセルす
【永田満徳評】
「鈴虫」は鈴を振るような鳴き声が特徴。聞こえが悪くなり、「耳鼻科」に予約したところ、鳴き声が聞こえるので、聴覚検査を「キャンセル」したのである。それが返って、鈴虫を愛でる気持が出ていて、いい。
【季語の説明】
「鈴虫」はバッタ目コオロギ科の昆虫。代表的な秋の鳴く虫のこと。鳴き声は人にいい影響を与えるという。鳴き声に魅了され、飼育する人も多い。日本では鳴き声を楽しむ文化があり、愛しい人を恋慕する情景として、虫の声を詠んだ和歌が数多く存在する。鈴虫の鳴き声はオスがメスの関心を引きつけるもの。
稲(いね) 「秋-植物」
外波山チハル
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稲の穂を活けて野の風通しけり
【永田満徳評】
「稲の穂」と「風」との関係が詠み込まれている。花瓶替わりにした器に「稲の穂」を挿したところ、「野の風」が吹いてきたという。稲の穂が家の中に野の香りがする風を引き入れたという発想が面白い。
【季語の説明】
「稲」は熱帯アジア原産のイネ科の一年草。稲の栽培は、原始時代に野生の稲の種子をまいて収穫したのが始まり。今から約3000年前の縄文時代後期にはすでに大陸から稲作が伝わっていた。稲は秋の実りを代表し、お米は日本人の食文化の柱である。季語では実った穂が垂れ黄金色に輝く秋の稲のことになる。