2012年に佐々木禎子さんに捧げられた歌がロシアで2曲発表されました。
一つはタンボフのミュージシャンの曲「日本の鶴 Song for Sadako Sasaki」です。「日本の鶴」という歌はもう1971年に作られたので、タイトルに差別化を図らないと、同じような題名ばかりになってしまいますね。
と思えてくるぐらい大量の「サダコの千羽鶴の物語」がロシア語圏内に生まれているのです。
「日本の鶴 Song for Sadako Sasaki」は作詞タチヤーナ・クルバトワ、作曲オリガ・エゴロワ、作曲パーベル・エゴロフ、歌アントニーナ マシェンコワです。
YouTubeのオリガ・エゴロワのチャンネルで視聴できます。
「Песни Ольи Егоровой.Японский журавлик.Song for Sadako Sasaki」で検索してみてください。
歌手の声がとてもきれいです。声域が広くて、熱唱系バラードで、平和希求、鎮魂のメッセージが熱唱されています。動画の映像も広島の原爆やサダコの千羽鶴の物語に忠実であろうという真摯な姿勢が感じられます。反戦ソングのお手本のような歌です。
タンボフのミュージシャンが作った歌ということで思い出すのはタンボフの詩人イワン・クチンの「千羽の白い鶴」です。
同じく2012年にロシアのサンクト・ペテルブルグのバンド、スプリン(2014年結成)が「Дочь самурая(侍の娘)」という楽曲をリリースしました。
この歌はアルバム「Обман зрения 」に収録されており、佐々木禎子に捧ぐと献辞されています。
しかし、歌詞にはサダコの名前もないです。「田んぼの上を飛行機が飛ぶ」という歌詞はあるので、日本の上空を飛んでいるエノラ・ゲイのことを歌っているのかと予想はできます。「真剣になれ、侍の娘!」というフレーズもありますが、これがサダコのことを指しているのかも不明。日本人の少女という意味で侍の娘という表現を使っているように思えます。
そしてメロディーはSong for Sadako Sasakiのような今までの「サダコの千羽鶴の物語」にありがちなバラード調ではなく、ロック調です。時代ですねえ。
21世紀のロシアのロックバンドが、「佐々木禎子に捧ぐ! 『侍の娘』!」と歌って、ファンは「クール!」と喜び、しゃれたプロモーションビデオまで作ってしまう時代になりました。
さて、この歌のプロモーション・ビデオですが、TouTubeで視聴できます。
歌詞の内容より、動画のほうがある意味において日本らしかったです。
関心のある方は「Дочь самурая Сплин」で検索してください。
舞台はロシアのどこかの高校。なぜかチャイナドレス姿の先生が、生徒に習字を教えている。書いている言葉は日本語で「侍の娘」。そこへ日本人の転校生が入ってくる。これこそ侍の娘。その姿は本当に原宿にいそうな女子高生。その子も習字を始めたら、後ろの席の誰かが半紙を丸めて投げ、日本人女子が書いた習字の紙は破れてしまう。クラス中に起こる嘲笑。(いじめ・・・)
侍の娘は立ち上がり、周囲にガンを飛ばす。喧嘩が始まるのかと思いきや、日本人女子は半紙を折って、鶴(日本と平和のシンボル)を作る。何してんの?と覗き込むロシア人高校生。誰も喧嘩はしなかった。(かと言って侍の娘が敗北したのではない。)
いやあ、すてきな内容の動画ですね。そうそう、喧嘩やいじめ(戦争)より、平和ですよ、平和。
はっきり言って、献辞があるところ以外、「サダコの千羽鶴の物語」に直接通じる部分は少ないですが、今の時代、世界に平和を!と叫んだり祈ったりするより、まずは「クラスに平和を! 人種差別はやめよう!」と若者世代にロックで訴えるほうが、世界平和につながるのですよ・・・というミュージシャンの姿勢にとても共感できました。
2010代にロックバンドのメンバーになっている世代が、侍の娘といえば日本人女子でしょ、日本人少女と言えばサダコでしょ、サダコといえば折り鶴でしょ・・・という発想になるほど、「サダコの千羽鶴の物語」が頭にインプットされるようになりました。
ただ、もうサダコはおかっぱ頭に着物姿のステレオタイプではなく、その時代の最先端ファッションに身を包んだティーンエイジャーに変身までしているのです。
そして、侍の娘は強い侍の子どもなんだから、精神的に強い日本人少女という意味が込められていると思いました。
病と闘いながら折り鶴を作り続けた佐々木禎子さんは精神的に強い少女であるという捉え方です。
そして、人種や性別に関係なく精神的に強い侍の娘にみんななれと、応援している歌なのだと感じました。
だからこの歌は「強い精神力を持っていた佐々木禎子さん」に捧げられているのです。
Song for Sadako Sasakiはソ連時代からの流れに続く典型的反戦ソングです。ある意味ステレオタイプです。しかし「侍の娘」は世界平和に目を向けているのではなく個々の心の中に向けて、メッセージを送っています。精神的な闘いに注目しています。
個人としての強さがテーマです。これも「サダコの千羽鶴の物語」が持つ一面だと言えます。佐々木禎子さんは病床で黙々と鶴を作っていました。「世界が平和になりますように。」と考えながら折っていたのではなく、「自分の病気が治りますように。」とあくまで個人的な願いのために鶴を折っていたはずです。そして最後まであきらめようとしませんでした。
「サダコの千羽鶴の物語」は世界平和という大きな目標を持っているように見えますが、その出発点はただ1人の少女のプライベートな願いという小ぢんまりとしたものでした。
ただ小さい出発点から、今はグローバルに広がったということです。
そして捉え方も多様化していきました。
余談ですが・・・この動画の中で転校生の役をした人が、かわいいし、本当に東京に行ったら道端で会えそうというぐらい、日本にいそうな女の子なので、どこの誰なのかネットで調べてみました。
するとこの歌がリリースされたときのロシアの芸能ニュースサイトで「ロシアに留学中の本物の日本人が出演した。」と書いてある記事を見つけて、やっぱり日本人なんだ! と思い,さらに調べると「モスクワに住んでいるクリスチーナ・リーさん」であることが分かりました。名字がリーって・・・本当に日本人なの? 私のカンではちがいますね・・・。
クリスチーナ・リーさんがネットで公開しているお誕生日から計算すると、動画の撮影当時は16歳か17歳。(高校生でロシアに留学?)母国語もロシア語みたいなので、生まれも育ちもロシアという東洋系の方ではないかなと思いました。日本人ではなさそう。
でもクリスチーナ・リーさんはかわいい。折り鶴も上手に折れる。新しいサダコ像になりました。人種などもうどうでもよいと思いました。
画像はスプリンのYouTube公式チャンネルからのスクリーンショットです。
おかっぱ頭の女子小学生が折り鶴を持っているというステレオタイプから、スタイリッシュな女子高生に進化しましたね。
(16)に続く。
一つはタンボフのミュージシャンの曲「日本の鶴 Song for Sadako Sasaki」です。「日本の鶴」という歌はもう1971年に作られたので、タイトルに差別化を図らないと、同じような題名ばかりになってしまいますね。
と思えてくるぐらい大量の「サダコの千羽鶴の物語」がロシア語圏内に生まれているのです。
「日本の鶴 Song for Sadako Sasaki」は作詞タチヤーナ・クルバトワ、作曲オリガ・エゴロワ、作曲パーベル・エゴロフ、歌アントニーナ マシェンコワです。
YouTubeのオリガ・エゴロワのチャンネルで視聴できます。
「Песни Ольи Егоровой.Японский журавлик.Song for Sadako Sasaki」で検索してみてください。
歌手の声がとてもきれいです。声域が広くて、熱唱系バラードで、平和希求、鎮魂のメッセージが熱唱されています。動画の映像も広島の原爆やサダコの千羽鶴の物語に忠実であろうという真摯な姿勢が感じられます。反戦ソングのお手本のような歌です。
タンボフのミュージシャンが作った歌ということで思い出すのはタンボフの詩人イワン・クチンの「千羽の白い鶴」です。
同じく2012年にロシアのサンクト・ペテルブルグのバンド、スプリン(2014年結成)が「Дочь самурая(侍の娘)」という楽曲をリリースしました。
この歌はアルバム「Обман зрения 」に収録されており、佐々木禎子に捧ぐと献辞されています。
しかし、歌詞にはサダコの名前もないです。「田んぼの上を飛行機が飛ぶ」という歌詞はあるので、日本の上空を飛んでいるエノラ・ゲイのことを歌っているのかと予想はできます。「真剣になれ、侍の娘!」というフレーズもありますが、これがサダコのことを指しているのかも不明。日本人の少女という意味で侍の娘という表現を使っているように思えます。
そしてメロディーはSong for Sadako Sasakiのような今までの「サダコの千羽鶴の物語」にありがちなバラード調ではなく、ロック調です。時代ですねえ。
21世紀のロシアのロックバンドが、「佐々木禎子に捧ぐ! 『侍の娘』!」と歌って、ファンは「クール!」と喜び、しゃれたプロモーションビデオまで作ってしまう時代になりました。
さて、この歌のプロモーション・ビデオですが、TouTubeで視聴できます。
歌詞の内容より、動画のほうがある意味において日本らしかったです。
関心のある方は「Дочь самурая Сплин」で検索してください。
舞台はロシアのどこかの高校。なぜかチャイナドレス姿の先生が、生徒に習字を教えている。書いている言葉は日本語で「侍の娘」。そこへ日本人の転校生が入ってくる。これこそ侍の娘。その姿は本当に原宿にいそうな女子高生。その子も習字を始めたら、後ろの席の誰かが半紙を丸めて投げ、日本人女子が書いた習字の紙は破れてしまう。クラス中に起こる嘲笑。(いじめ・・・)
侍の娘は立ち上がり、周囲にガンを飛ばす。喧嘩が始まるのかと思いきや、日本人女子は半紙を折って、鶴(日本と平和のシンボル)を作る。何してんの?と覗き込むロシア人高校生。誰も喧嘩はしなかった。(かと言って侍の娘が敗北したのではない。)
いやあ、すてきな内容の動画ですね。そうそう、喧嘩やいじめ(戦争)より、平和ですよ、平和。
はっきり言って、献辞があるところ以外、「サダコの千羽鶴の物語」に直接通じる部分は少ないですが、今の時代、世界に平和を!と叫んだり祈ったりするより、まずは「クラスに平和を! 人種差別はやめよう!」と若者世代にロックで訴えるほうが、世界平和につながるのですよ・・・というミュージシャンの姿勢にとても共感できました。
2010代にロックバンドのメンバーになっている世代が、侍の娘といえば日本人女子でしょ、日本人少女と言えばサダコでしょ、サダコといえば折り鶴でしょ・・・という発想になるほど、「サダコの千羽鶴の物語」が頭にインプットされるようになりました。
ただ、もうサダコはおかっぱ頭に着物姿のステレオタイプではなく、その時代の最先端ファッションに身を包んだティーンエイジャーに変身までしているのです。
そして、侍の娘は強い侍の子どもなんだから、精神的に強い日本人少女という意味が込められていると思いました。
病と闘いながら折り鶴を作り続けた佐々木禎子さんは精神的に強い少女であるという捉え方です。
そして、人種や性別に関係なく精神的に強い侍の娘にみんななれと、応援している歌なのだと感じました。
だからこの歌は「強い精神力を持っていた佐々木禎子さん」に捧げられているのです。
Song for Sadako Sasakiはソ連時代からの流れに続く典型的反戦ソングです。ある意味ステレオタイプです。しかし「侍の娘」は世界平和に目を向けているのではなく個々の心の中に向けて、メッセージを送っています。精神的な闘いに注目しています。
個人としての強さがテーマです。これも「サダコの千羽鶴の物語」が持つ一面だと言えます。佐々木禎子さんは病床で黙々と鶴を作っていました。「世界が平和になりますように。」と考えながら折っていたのではなく、「自分の病気が治りますように。」とあくまで個人的な願いのために鶴を折っていたはずです。そして最後まであきらめようとしませんでした。
「サダコの千羽鶴の物語」は世界平和という大きな目標を持っているように見えますが、その出発点はただ1人の少女のプライベートな願いという小ぢんまりとしたものでした。
ただ小さい出発点から、今はグローバルに広がったということです。
そして捉え方も多様化していきました。
余談ですが・・・この動画の中で転校生の役をした人が、かわいいし、本当に東京に行ったら道端で会えそうというぐらい、日本にいそうな女の子なので、どこの誰なのかネットで調べてみました。
するとこの歌がリリースされたときのロシアの芸能ニュースサイトで「ロシアに留学中の本物の日本人が出演した。」と書いてある記事を見つけて、やっぱり日本人なんだ! と思い,さらに調べると「モスクワに住んでいるクリスチーナ・リーさん」であることが分かりました。名字がリーって・・・本当に日本人なの? 私のカンではちがいますね・・・。
クリスチーナ・リーさんがネットで公開しているお誕生日から計算すると、動画の撮影当時は16歳か17歳。(高校生でロシアに留学?)母国語もロシア語みたいなので、生まれも育ちもロシアという東洋系の方ではないかなと思いました。日本人ではなさそう。
でもクリスチーナ・リーさんはかわいい。折り鶴も上手に折れる。新しいサダコ像になりました。人種などもうどうでもよいと思いました。
画像はスプリンのYouTube公式チャンネルからのスクリーンショットです。
おかっぱ頭の女子小学生が折り鶴を持っているというステレオタイプから、スタイリッシュな女子高生に進化しましたね。
(16)に続く。