みつばちマーサのベラルーシ音楽ブログ

ベラルーシ音楽について紹介します!

トーダルのライブ出演について

2008年02月22日 | トーダル
 すでにお知らせしていますように、もうすぐトーダルが初来日、日本で2回のコンサートに登場します。
 2月23日のコンサートではプログラムが配られ、「月と日」収録曲以外でトーダルが歌うベラルーシ語の歌(「緑の樫の木」「道」「海」)の歌詞の日本語訳が掲載される予定です。
 しかし3月1日のライブでは、プログラムは作成されない、ということで、マーサ&トーダルは少々がっかり。
 何せ、ベラルーシ語が分かる日本人はほとんどいないので、トーダルが歌を歌っても、意味が分からないではないですか。
 本番のMCで説明できる、と言われたけど、歌詞を全部日本語で説明するのは、難しいですね。
 ・・・なので、このブログ上で歌詞の日本語訳を公開します。

 ・・・と思っていたのですが、確認したところ、日本語訳は配られるそうです。良かった! イベント企画のVesna!さん、早とちりしてすみません。そしてありがとう!
 歌う曲も決定しました。「満足しているオンドリの歌」と「SOS」です。

 でもせっかくなので、3月1日のライブの候補曲の歌詞の日本語訳は公開したままにしておきます。
 ライブに来られる方、トーダルの歌う曲の歌詞にご興味のある方、はぜひご覧ください。
 それぞれの歌について詳しくは、各収録アルバムの解説をご覧ください。作品への理解が深まるかも。


・・・・・・・
 
「満足しているオンドリの歌」

(作詞 レアニード・ドラニコーマイシューク 作曲 トーダル アルバム「オモチャヤサン」収録曲)

僕は悩みなしで生きている。
イヌの餌をつつく。頭を下げて
穀物を見つけたようなふりをして。
僕のとさかは赤いケシの花のよう。
尾羽根は模様入り・・・
メンドリを追いかけても疲れ知らず

僕の生活の知恵は単純なもの。
メンドリがいるうちは
オンドリも生きていけるってこと!

僕は美男子。メンドリをナンパする。
悩みなんかあるわけないよ!
他の鳥が飛んできたら、うまく隠れる。
鶏小屋では僕は王様。悪魔だって怖くない。
人間のご主人が入ってきたら、
メンドリの群れの中にこそこそ隠れる

僕の生活の知恵は単純なもの。
メンドリがいるうちは
オンドリも生きていけるってこと!

僕より若いオンドリはとさかも柔らかくておいしいよ・・・
普段、馬鹿なことをやってる奴が
ちゃっかりいつも餌の桶のすぐそばにいる。
ニワトリは脳みそが少ないって言われているけど
とっても元気に暮らしているよ!
世話は人間がしてくれるしね・・・

僕の生活の知恵は単純なもの。
メンドリがいるうちは
オンドリも生きていけるってこと!
僕の生活の知恵は単純なもの。
メンドリがいるうちは
オンドリも生きていけるってこと!


・・・・・・・

「君の優しさ」

(作詞 ゲナジ・ブラウキン 作曲 トーダル アルバム「LIRYKA」収録曲)
 
君は尋ねた
僕が何を持って行くのか
雪とみぞれの道中で
とても悲しいときに。
僕は答えた。
「君の優しさだよ。」

君は考え込んで尋ねた
何が一番大切なのか
仕事、幸せ、成功、インスピレーション?
僕は囁いた。
「君の優しさだよ。」

ヒントもなく、石油ストーブもない
失望と孤独の中で
信じる、そして祈る
ただ彼女にその優しさを

何が僕の人生に足りないのか
10回でも100回でも
君がこんなことを尋ねたら
言うよ。
「君の優しさだよ。」


・・・・・・・

「SOS」

(作詞 ルィゴール・バラドゥーリン 作曲 トーダル アルバム「愛の汽車」収録曲)

日照り続きで開墾地はすっかり干上がった
二人で雨乞いをしよう
僕は鶴を捕まえておく
君にはテンがいるからね

SOS、SOS 鶴に飲ませてくれ
SOS、SOS 泉の水は熱すぎる
SOS、SOS テンも焼けてしまうぐらい
鶴は浅瀬に飛んでいった

身も心もきれいな人が僕は好きだよ
君のテンの毛色は驚くほどきれいだね
僕の鶴に飲ませてくれないか
グラスの底に向かって鶴がうつむくぐらい、たくさん

SOS、SOS 鶴に飲ませてくれ
SOS、SOS 泉の水は熱すぎる
SOS、SOS テンも焼けてしまうぐらい
鶴は浅瀬に飛んでいった
僕は一人、君も一人

全部飲ませてくれないか
丸ごと一瓶飲ませてくれ
全部、全部、全部・・・
底にたまった酒かすが舞い上がるまで

SOS、SOS 鶴に飲ませてくれ
SOS、SOS 泉の水は熱すぎる
SOS、SOS テンも焼けてしまうぐらい
鶴は浅瀬に飛んでいった

浅瀬は野火も酔いも消してしまった
酔いが一気に冷めていく
鶴は飲みすぎてしまったね
くちばしを閉じてぐったりしている

SOS、SOS 鶴に飲ませてくれ
SOS、SOS 泉の水は熱すぎる
SOS、SOS テンも焼けてしまうぐらい
SOS、SOS 鶴に飲ませてくれ
SOS、SOS 泉の水は熱すぎる
SOS、SOS テンも焼けてしまうぐらい
鶴は浅瀬に飛んでいった

・・・・・・・

「海」

(作詞 ウラジーメル・カラトケービッチ 作曲 トーダル アルバム「長い引き出しの歌」収録曲)

花崗岩のような波が押し寄せる海
赤く日焼けた人たち
君は僕を愛していた
でも、もう今は愛していないね
遠い過去の経験は厳しく僕に迫る
枯れた苦いよもぎと糸とが絡み合った
織物のような僕たちの愛は
心に苦しみと悲しみを残して飛び立った

なんて凶暴な力だろう
血だらけの境界線は
僕たちの愛とともにもう壊された
僕はまるで神と一緒に取り残されたよう・・・
永遠に、永遠に、熱い鉄のように鍛えられる
君のすんなりした足が僕の苦悩の巣だ

僕は立てた誓いを思い出す
胡椒の実のような色の岩
石榴の実のような色の君の唇
心臓は心臓を叩く
肌の上の雫の首飾り
日に焼けた赤銅色の胸
君は僕を愛していたかい・・・? 
・・・愛していたね。
でも、もう今は愛していない。
そして、もう二度と愛さない、愛さない、愛さないんだ・・・・


朝日新聞とのインタビュー

2008年02月19日 | トーダル
 あんまりこういうことをしてはいけないと思うのですが、今回、朝日新聞がトーダルにインタビューした質問のうち、記事に載らなかった質問を公開しようと思います。
 朝日新聞の記者さんがした質問というのは、日本人の方がトーダルに対して持っている疑問を代弁していると思うので。
 インタビューはマーサのところへメールで送られてきたのを翻訳し、トーダルに電話をして口頭で伝えて、返ってきた返事を日本語に訳してメールにして記者さんに送る、という形を取りました。

Aが朝日新聞の質問。Tがトーダルの回答です。

・・・・・

A 「どうして日本の歌を歌う気になったのでしょうか。」

T 「最初この「月と日」を作る話を聴いたとき、これはとてもおもしろそうだと感じました。それにこの作品の製作を通じて日本の文化について知りたいと思いました。
 私のグループの名前はWZ-オルキエストラと言いますが、このWは古いベラルーシ語で東、Zは西の頭文字なのです。つまり、東西オーケストラと言う名前のグループなのですが、どうしてこう名づけたかというと、ベラルーシは東西ヨーロッパの間に位置しているからです。
 だから以前、私にとっては東というのはロシアのことでした。
 しかし、日本はもっと東にあって、ロシアよりもっとおもしろいと思います。
 今はWZ-オルキエストラのWは日本のことだと思っています。」


A「製作中、『日本の人に怒られないか』と気にされたそうですが、なぜそう思ったのでしょうか。」
(参照 HP「ベラルーシの部屋」「月と日 思い出エピソード」)
http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/songs/2005/episode.html


T「今回初めて外国の作曲家の作品をアレンジすることになりました。つまり、その原作者の考えや、今までこの曲を長年聞いてきた日本人の考えなどが、歌の背景に蓄積されています。
 それを編曲者である私一人が壊してしまってはいけない、と思いました。私は日本の歌の背景について、ちゃんと理解しているわけではないので、うっかり日本人リスナーの気持ちを壊すようなことをしてしまうかもしれない、と心配したのです。
 やっぱり芸術は責任重大な仕事ですから。それにリスナーの気持ちをいつも考えながら、音楽の仕事をするようにしています。」


A「CD製作中に、日本の歌について感じたことを教えてください。」

T「この「月と日」製作はとてもおもしろかったです。どうしてかというと、歌の中に自分が今まで知らなかった日本人の哲学が含まれていたからです。
 一方で、製作は慎重に進めました。いろいろな映像を撮影した後、モンタージュ一つで、全然イメージの違う映像ができてしまうことは、よくあるでしょう?
 それと同じで作業の方向をどのようにするのか、よくよく考えました。単に日本の歌をベラルーシ語に訳すだけではなく、曲の合間にアダム・グリョーブスのベラルーシ語の詩を入れたのがよかったと自分では思っています。
 一つの言語から一つの言語に翻訳して、それでやるべきことはした、ではなく、二つの異なる文化がもっと深い世界で混ざり合ったような作品に仕上がったと思っています。
 アレーシ・カモツキーが訳したベラルーシ語の歌詞も、単なる翻訳ではなく、詩としてとても高い評価ができるものですよ。」


A「どんな情景を思い浮かべながら日本の曲を歌ったのですか?」

T「今のところ日本の情景はテレビでしか見たことがありません。なので、日本の歌を歌いながら思い浮かべるのは、自分が知っているベラルーシの風景です。
 たとえば、「われは海の子」ですが、ベラルーシには海はありません。私自身はネマン川という大きな川のほとりに生まれ育ちました。
 ですから、この歌を歌うときはいつも、ネマン川の岸辺を思い浮かべています。」


A「トーダルさんが、ベラルーシ語で歌う理由を教えてください。」

T「日本人が日本語で歌を歌うように、ベラルーシ人である自分はベラルーシ語で歌っています。
 残念ですが、ベラルーシではベラルーシ語で話したり、書いたりする人が減ってきています。このまま何もしないでいると、ベラルーシ語文化そのものが消えてしまうかもしれません。
 ベラルーシ語で歌うことは何と言ってもまず、自分がベラルーシ人だから。そして、ベラルーシ語文化の一つである、ベラルーシ語音楽を継承したい。
 また、ベラルーシ語を忘れかけているベラルーシ人に、母国語の大切さを呼びかけたい、と常に思っています。」


A「日本人へのメッセージをお願いします!!(意気込み、どんな演奏会にしたいか、など)」

T「今回のコンサートに来てくれた方たちが、少しでもベラルーシのことを知ってくれたら、と思っています。そして公演終了後、今まで知らなかった世界を知ったような気持ちになって、会場を後にしてくれたら・・・と願っています。
 聴いてみたけどトーダルの歌は気に入らなかった、という日本人も出てくるかもしれません。でも、それは別にいいんです。私としては日本人のいろんな意見が聞きたいです。これが芸術家にとってとても大事なことだと思っています。」


A「今回、日本に行こう!と思われた理由を教えてください。」

T「日本での演奏は、ベラルーシ人アーティストにとって非常に重要です。それは遠い国だからです。
 ベラルーシから遠く離れた国で、ベラルーシ語の歌を歌う。これはベラルーシ人全体にとっても、大切なことです。ベラルーシは世界的に有名な国ではありません。まだその文化など、世界の人に知られていません。
 今回日本で、ベラルーシのことを知ってもらう機会ができたことは、とても大切なことなのです。
 私自身はまず、「月と日」を聴いた日本人の観客の皆さんの反応が見たいです。
 もちろん、日本そのものも見てみたいですね。日本人の生活はどんなものなのか、とかいろいろ知りたいです。日本は黒澤明の映画ぐらいでしか見たことがないので。」


A(上の質問と関連して)「日本はアジアの東の、未知の国ですが、不安はないですか?」

T「日本は世界的に有名な国ですよ! 未知な国なのはベラルーシのほうです。(笑)
 だいたい私は冒険が好きなんです。ベラルーシの小さな村であっても、行ったことのないところへ行ってみたい。だから、不安はありませんよ。
 日本へ行って、未知の国ベラルーシのことを歌を通じて広めたいですね。」



もうすぐ出発&朝日新聞に掲載されました!

2008年02月18日 | トーダル
 あと数時間でトーダルの日本公演に向けてベラルーシを出発します。何だか緊張しますねえ。
 でももうすぐトーダルの歌声が日本で響くかと思うと、うれしいですねえ。あとは無事日本まで連れて行くだけですね。

 ところで、トーダルの初来日について、朝日新聞さんからトーダルとマーサはインタビューされていまして・・・23日のコンサートまでに記事が掲載される、というお話だったんですけど、今のところ、まだ掲載されていないみたいですね。
 
 ・・・と思っていたら、今日(2月18日付)朝日新聞の夕刊『関西版、社会面』に、掲載されました!
 載るかどうかお約束できません、と言われていたトーダルの写真も掲載されるましたよ。おお・・・
 関西圏にお住まいの皆様、是非、ご覧ください!
そうでない方もぜひ朝日新聞のサイトでご覧ください。ここをクリック↓
「日本の童謡、ベラルーシ語で歌ったらチャート1位に」

http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200802180010.html


 トーダルにはこの新聞を一番の日本土産にしてもらいましょう。
 しかし、朝日新聞の記者さんからは
「トーダルさんってベラルーシ人ですか?」
ときかれて、驚きました。(^^;) でも、記者のSさん、本当にありがとうございました! (時差のせいで日本時間の朝4時に電話してくださった・・・)
 
 まだ記事を読んだわけではないので分かりませんが、記者さんはトーダルをただベラルーシから日本へ歌いに来る歌手、というふうにではなく、今や死語になりつつあるベラルーシ語を音楽を通じて継承していこうとして努力している歌手、という視点で記事を書いてくれるような話だったので、マーサはうれしかったです。(全くそのとおりで・・・)

 ・・・と思っていたんだけど、実際には違っていましたね。(^^;)
 でもいいんです。ベラルーシのことを日本の新聞記者に質問されるだけでも、ありがたいことです。

 ベラルーシでも貴重になりつつある、そして日本ではめったと聞かれないベラルーシ語ソングをぜひ聴きに来てくださいね。

「愛の汽車」(2004年)

2008年02月17日 | トーダル
 2004年にトーダルが詩人のルィゴール・バラドゥーリンの詩に作曲して発表したアルバム。
 収録曲のうち「春の日」がロングランヒットした。
 音楽がいいけど、いつも思うのはジャケットデザインが悪すぎること。
 トーダルのCDのジャケットデザイン、も一つなのが多いような気がするけど、その中でも、このCDジャケットは最悪ではないか?

 でもまあ、なかみの音楽がいいから、それでいいのだが。
  
 バラドゥーリンさんのベラルーシ語は、すごく難しくて翻訳作業が大変。なぞなぞのような歌が多い。
 たとえば「10.SOS」もなぞなぞ、というか謎の歌。
 ベラルーシ人がベラルーシ語で聴いても分かりにくいのに、日本語に訳すともっと分かりにくくなってしまいます。
 でも、分かる人には分かります、この歌の言わんとしている意味が。マーサはさっぱり分からなくて、トーダルになぞなぞの答えを教えてもらって、やっと分かりました。
 トーダルも「バラドゥーリンさんのベラルーシ語は、ベラルーシ人にも難しい。めったに使わなくなった言葉を使っているから。」と話していました。
 でも・・・聴くと分かりますが、日本人だから笑える歌でもありますね。これはベラルーシ人には分からないな・・・
 ちなみに歌詞の「君にはテンがいるからね」のテンは毛皮に使われるイタチ科の動物です。

http://contents.kids.yahoo.co.jp/zukan/mammals/card/0149.html


(さらなる詳しい解説についてはしばらくお待ちください。)

・・・・・・
 収録曲

1.愛の貴族
2.女優
3.奥方様
4.ちょっと年配の地主たち
5.夢
6.春の日
7.待っている
8.僕たちの星
9.一生かけて
10.SOS
11.問いかけ
12.影はたそがれる
13.新年

「長い引き出しの歌」(2006年)

2008年02月16日 | トーダル
トーダルが2006年に発表したアルバム。
 トーダル&WZ-オルキエストラとしてではなく、あくまで「トーダル」で発表。どうしてかというと、演奏しているグループがいろいろだから。
 2000年から2005年までの間に、作曲したり、録音したものの、今まで発表したアルバムに収録できなかった未発表作品や、人気曲の別バージョン曲をまとめたアルバム。

 いろんなタイプの音楽があって聴いていてとても楽しいです。
「トーダル? どんなミュージシャンなのか聴いてみたいけど、どのアルバムを聴けばいいのかよく分からない。」
という日本人の方にお勧めのCDです。
 きっと気に入る曲が見つかります。

「6.ユダヤ人」「9.海」 「10.頭のないヴィーナス」の歌詞の作者であるウラジーメル・カラトケービッチについて一言。
 氏名がベラルーシ語表記になっていますが、ロシア語表記にするとウラジーミル・コロトケヴィチ。
 コロトケヴィチは作家で、代表作の小説は「スタフ王の野蛮な狩り」です。
 「スタフ王の野蛮な狩り」はベラルーシフィルムが1979年映画化し、翌年のモントリオール国際映画祭審査員特別賞、カトリカ推理映画祭第一賞、パリ国際SF映画祭特別賞を受賞しました。
 日本人にはあまり知られていないベラルーシ映画の中で、一番有名な映画です。
 監督のワレーリー・ルビンチクとともにコロトケヴィチは脚本も手がけました。
 詳細はこちら。(ロシア映画社アーカイブス)

http://www.saturn.dti.ne.jp/~rus-eiga/arc/films/s/sutafu/index.htm

 HPやブログで「舞台はロシア」と書いている日本人がいるけど、間違いで、完全にベラルーシが舞台です。
 1999年のアメリカ映画「スリーピー・ホロウ」(ジョニー・デップ主演、ティム・バートン監督)の元ネタになった映画です。ベラルーシ映画を元ネタにしたアメリカ映画があるなんてびっくりですね。
「スリーピーホロウ」についてはこちら。

http://info.movies.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=159810


 さて、この「海」という曲、間奏部分で
「クワ、クワ、クワ、クワー・・・」
とトーダルが一人でコーラスしている。これは何なのか、トーダル何なのか尋ねたら
「蛙の鳴き声。」
ということだった。でも曲のタイトルは「海」なのに、どうして蛙なのか? 
「私は水鳥の鳴き声だとずっと思っていたんだけど・・・。」
とつっこむと
「そういう解釈もありうる。」
と言われた。要するにクワクワの正体が何なのか好きなように想像してください、ということらしい。
 さらに曲の最後の一番盛り上がるところで
「君は僕を愛していたかい・・・? ・・・愛していたね。でも、もう今は愛していない。そして、もう二度と愛さない、愛さない、愛さないんだ・・・」
と歌った(↑日本語訳)後、
「オー ジェーエーイ!!! オイヨイヨヨイヨーイ・・・!」
と叫ぶんだけど、この「オー ジェーエーイ!!!」も謎だったので、トーダルに尋ねた。すると
「適当に叫んだ。」
という返事だった。(^^;)
 「オイヨイヨヨイヨーイ」というのは日本語に訳すと「ああ・・・そんな・・・」といった失望の感嘆詞。要するに男が女にふられる歌なので落胆しているらしい。
「オー ジェーエーイ!!!」は、そんな男の魂の叫びらしいよ。


(他の曲についての解説は、トーダルに詳しく教えてもらったので近いうちに更新します。)

・・・・・・

収録曲

1.ベレゾフカの宇宙飛行士 (インストゥルメンタル 作曲:トーダル)
2.ハイ・タク - そうなれ! (ベラルーシ民謡)
3.クラレスの草 Ⅱ (ベラルーシ民謡)
4.ユダヤのダンス (インストゥルメンタル 作曲:トーダル)
5.不幸なヤギの歌 Ⅱ (作詞:レアニード・ドラニコ-マイシューク 作曲:トーダル)
6.ユダヤ人 (作詞:ウラジーメル・カラトケービッチ 作曲:トーダル)
7.リューバチカ (民族詩 作曲:トーダル 演奏:クリヴィ 映画「新鮮な肉は花火とともに」主題歌)
8.明るさ、美しさ (作詞:V.ジィルカ 作曲:トーダル)
9.海 (作詞:ウラジーメル・カラトケービッチ 作曲:トーダル)
10.頭のないヴィーナス (作詞:ウラジーメル・カラトケービッチ 作曲:トーダル)
11.金星 (作詞:M.バグダノビッチ 作曲:S.ラク-ミハイロウスキー)
12.かわいい人 (作詞:R.バラドゥーリン 作曲:トーダル)
13.自由なズーブルの歌 Ⅱ (インストゥルメンタル 作曲:トーダル)
14.ベッラ・チャオ (トーダル バージョン)
15.ボレロ (作曲:トーダル 演奏:国立ベラルーシ文化大学弦楽四重奏)

・・・・・・

「LIRYKA」(2007年)

2008年02月15日 | トーダル
・・・ せめて空の極みに
    歌声も音も捨ててしまおう
    濡れそぼつナナカマドの木立
    実の先は赤く光っている・・・
    雨は降り続ける
    でも、それがどうした?
    秋を不安がらせておこう・・・

       (「8.雨は降り続ける」より。)

・・・・・・・・

 2007年12月にトーダル&WZ-オルキエストラが発表したアルバム。
 ちなみに発売記念コンサートの様子はトーダルの公式ブログで見られます。

http://generation.by/doc14-115.html


 まずアルバムタイトルの「LIRYKA」って何だ? と思われるので、説明します。
 LIRYKAというのは、ベラルーシ語で「Лірыка」 日本語に訳すと「抒情詩」のことです。ちなみに「リルィカ」と発音します。
 これはベラルーシの詩人ゲナジ・ブラウキンが書いた作品、つまり抒情詩に、トーダルが作曲したものです。
 抒情詩、というだけあって、歌詞の内容はとても美しい。ベラルーシへ行って、しかも田舎の一軒家の窓辺に座って、花が咲いているのや、鳥が飛んでいるのや、雨が降ったり、星が光っているのを眺めているような気がしてきます。
 しかし!
 やっぱり一筋縄ではいかないトーダルなのであった。
 そういう美しい世界をですね、彼はロックの曲をつけて、シャウトしてしまいました。
 ブラウキンさん、最初このアルバムを聞いたとき、びっくりしただろうなあ・・・。
 日本で言うと、60歳代の自然を詠う大御所歌人のところへ、30歳代のミュージシャンがある日突然やってきて、
「あなたが作った短歌に作曲したいんですが。」
と言い出し、ああ、いいですよ、と返事したら、いきなりロックにされていた・・・という感じでしょうか。

 リルィカ・・・なんて美しい響きの言葉をアルバムタイトルにしていますが、わざわざ英語転記して「LIRYKA」にしたのも、そういうニュアンスを表現したかったからでしょう。
 マーサはいつもベラルーシ語音楽のアルバムタイトルを日本語に訳すとき、とても悩むんだけど、今回もだいぶ考えましたね。
「抒情詩」とか「リルィカ」とかジャケットデザインが目玉(^^;)だから「君の瞳」とかにしようかと考えたんだけど、結局、オリジナルタイトルをそのまま残しました。
 日本人からすると分かりにくいかもしれませんが、やっぱり、「LIRYKA」という言葉がこのアルバムの内容をよく表現していると思います。

 さて、トーダルは1999年に「ロック・カラナツィヤ」コンクールで「ベラルーシ最優秀ロックシンガー男性ボーカリスト部門」で優勝しており、これに優勝すると「ロック・キング」の称号(^^;)が与えられます。でも、ちゃんと王冠を授与しています。
 ちなみに「ベラルーシ最優秀ロックシンガー女性ボーカリスト部門」で優勝すると、「ロック・クイーン」の称号と王冠がもらえますが、1999年は当時同じグループ「クリヴィ」のメンバーだったベラニカがもらっています。

 というわけで、今回久しぶりにロック・キング時代のトーダルに戻って、このアルバムで熱唱しているわけです。
 しかし、もともとの歌詞は美しいし、トーダルの声が声楽で鍛えたバリトンなので、いくらシャウトしていても、何だか、きれいなロックに聴こえますね。

 ロック、ロックと紹介しましたが、実際には全曲ロック調の作品ではありません。
 1曲目はいきなり、ブラウキンさんが、自分の詩を自ら朗読しているのが収録されています。(全14曲収録、と言うことになっているけど、実際には13曲収録されている。)
 初めて聞いたとき、びっくりするかもしれないけど、ちゃんと楽曲も収録されていますので、ご安心を。
 ブラウキンさんが朗読している詩「私たちの歌」は、なぞなぞみたいで、意味深です。分かる人には答えはすぐ分かりますが。

 ロックの作品は実は「2.最大の力」「4.広い愛」「6.風が葉を揺らす」「8.雨は降り続ける」の4曲だけなのです。
 しかし、どの曲もいいです。非常にいいです。
 トーダル、めちゃくちゃかっこいいです。(「6.風が葉を揺らす」はちょっと笑ってしまった・・・。)
 歌詞は「8.雨は降り続ける」が特にいいですね。
 しかしまあ、「オモチャヤサン」に出てくる動物を除くと、今回初めて、トーダル作品の歌詞に出てくる人称を「俺」と「お前」で訳してみました。(「4.広い愛」)
 いつもは「僕」と「君」なんだけどねえ。

・・・・・・・

LIRYKA  作詞 ゲナジ・ブラウキン

1.私たちの歌 (朗読 ゲナジ・ブラウキン)
2.最大の力
3.僕のことを思い出したかい?
4.広い愛
5.隣の女
6.風が葉を揺らす
7.ボートで川を逆上った
8.雨は降り続ける
9.月は黄色いボート
10.すてきな夢
11.君の瞳
12.ナイチンゲール
13.君の優しさ
14.新年前夜

・・・・・・・

 ロック以外の作品についても、それぞれご紹介すると・・・
「3.僕のことを思い出したかい?」
 とてもきれいなバラード。今回収録の作品にはどうも「孤独感」「男女の間の距離感」があちこちに感じられて、少々悲しい空気が漂っている。しかし、悲しがってばかりもいられないので、トーダルはロックもしているんだろうな。

「7.ボートで川を逆上った」「11.君の瞳」
 両方とも歌詞が、めちゃくちゃ後ろ向き。「7.ボートで川を逆上った」は曲調もしんみりしているが、「11.君の瞳」は歌詞はひどく後ろ向きなのに、曲はやたら明るい。ノリがいいので、よくコンサートでトーダルも歌っているけど、普通、こういう歌詞にこういう曲はつけない。

「5.隣の女」
 トーダルがウラジーミル・ヴィソツキーのように歌っている。しかし曲は3拍子で、歌詞は牧歌的。しかしその内容は完全に「隣の男の妄想」(^^;)
 そんなに隣に住んでいる女の人が気になるんなら、今すぐ「こんちは。隣に住んでいる者ですが。」と家に会いに行けばいいのに・・・と思った。

「9.月は黄色いボート」
 ロマンチックなベラルーシの農村の愛の世界。ベラルーシの田舎へ行ったら、こういう情景があちこちでありそう。私にも誰か、花輪を作ってくれい。(^^;)

「10.すてきな夢」
 曲調は「NHKみんなのうた」に採用されそうなかわいらしさなのに、歌詞の内容はずばり「ベラルーシの若い女の子の妄想」(^^;)
 しかも、トーダル、歌いながらそういう女の子たちのことを実は馬鹿にしてるだろう! とつっこみを入れたくなる。そんなに馬鹿笑いしないで、女の子にも夢を見させてくれよう・・・(^^;)
 注釈を加えると、「ラジビル一族」というのは、中世、ベラルーシ地域を治めていた貴族のことです。
 詳しくはHP「ベラルーシの部屋」のネスヴィシュをご覧ください。

http://belapakoi.s1.xrea.com/gh/city/nesvish/index.html


「12.ナイチンゲール」 すごくおかしくて、かわいくて、悲しくて、なかなか終わらなくて、しかもかっこいい曲。ある意味、このアルバムの代表作だと思う。

「13.君の優しさ」 トーダルが初めて作った「アフリカ風」の曲、だそうです。歌よりも間奏のところでトーダルがしゃべっているほうがずっと長いという作品。明るくてかわいらしい、楽しい曲だが、歌詞はやっぱり「ちょい寂しい」世界を描いている。

「14.新年前夜」 お正月の歌。しかし、歌詞も曲も、「明日は正月、めでたいな。」という雰囲気ではない。
 注釈を加えると、「ゴリゾントとビチャジのテレビ」というのは、どちらもベラルーシ製のテレビのこと。
 ゴリゾントはミンスクに、ビチャジはビテプスクにあるテレビを製造している、ベラルーシでは有名な企業である。
 ちなみにゴリゾントは地平線、ビチャジは騎士、という意味である。

 うーん、ずいぶんたくさん書いてしまった。
 ロックしているトーダルを聴きたい人には、一番お勧めのCDです。

(全曲日本語対訳付きで、ただいまVesna!で発売中!)


トーダルのブログで「日本のお土産アンケート」してます

2008年02月15日 | トーダル
 トーダルが自分の公式ブログで、日本公演のことを書き込んでいます。
 で、「もし日本に行ったら、どんなものを持って帰りたい?」と質問しています。自分のお土産選びの参考にしたいのであろうか・・・
 この質問に対するベラルーシ人からのコメントは、いろいろ。

「桜の花の枝」
「扇子」
「俳句集 短歌集」
「お酒」
「お金」
「海苔」
「お茶」
「日本の太陽」
「海岸で拾った小石」
「自分を持って帰るのを忘れるな。」
「日本人の女の子」
「鞍馬山」(←こりゃすごい。どうやってベラルーシまで持って帰るんだろ。)

 ベラルーシ人の頭の中はどうなっているのか。これだから好きだな、ベラルーシ人。

「ソ連軍の日(2月23日)に日本でコンサート?! こりゃおもしろい。」という意見もあり。仕方ないよ、偶然土曜日だったんだから、今年は。

書き込まれたコメントに対するトーダルの返事。
「わあ、大きいトランク買わなきゃ。」
 それに対する友達からのコメント。
「私のトランク貸してあげる。」
 その人からのコメント。
「お土産に『日本』って書いてあるマグカップちょうだい。何か日本の絵がデザインされているのでもいい。冷蔵庫にくっつけるマグネットでもいい。」

 みんなかわいいよねえ。(^^)

「薔薇と踊るタンゴ」(2006年)

2008年02月14日 | トーダル
・・・赤く香る薔薇は棘の記憶。
  踊るタンゴは夢幻の熱・・・

 「月と日」発表後、半年経った2006年春にトーダル&WZ-オルキエストラが発表したアルバム。
 略して「ばらタン」!

 しかし、こんなふうに呼んでいるのは私だけなので、
「トーダルのさあ、ソロ活動始めてから、初めて自分の写真、表ジャケに印刷した、あのCD・・・」
「ああ、ばらタンね。」
「そうそう。でもって、ジャケットのばら持ってる写真。あれ、よーく見たら、上半身裸で、脱いだ赤シャツ肩にかけてるだけなんだよ。」
「ええ、ほんと? 知らなかったあ。道理で変な服だな、と思ってたんだよね。」
「それにしても、どうして自分の写真を表ジャケにめったに使わないんだろう。自分の顔に自信がないのか、トーダル。」
「この間、本人にそれをきいたら『さあ、どうしてだろうねえ。』とはぐらかされたよ。」
「はぐらかすの、うまいよあの人。『質問され慣れ』してるね、あれは。」
「ばらタンの中身の音楽はいいよねえ。」
「うん、相変わらず。トーダルって感じ。」
「本人は今回は『大人のセクシー路線』を狙ってみた、と言っていたよ。」
「うーん、そうかなあ。それほどセクシーじゃないよね。『飛行機』とか『オオカミ』とか、ユーモア系のような気もするけど。」
「『オオカミ』はユーモア系じゃなくて、変系(変形?)だよ。ま、彼もいろいろやってみたいんだろうね。」
「そうだろうね。私が好きなのは『一人』。」
「『さらば、ヤブロンスカヤよ、さらば』もいいよね。情熱的。」
「セクシーっていうより、情熱路線だよね。」
「アルバムタイトルも、タンゴっていうぐらいだから、情熱的だよね。」
「でも、実際にはタンゴの曲、ほとんど収録されてない。(笑)」
「ベラルーシ国内では『9番目の哀歌』がヒットしたけどね。」
「あれは反戦歌だから、ベラルーシ人の心に響くんでしょう。発表したのは2005年でちょうど終戦60周年に当たっていたから。」
「トーダル、それを狙ってた感があるよね。」
「うん、この曲はアルバム収録前に『2005年度ベラルーシ語音楽最優秀曲」1位になったからね。」

・・・というような会話を私は一人二役でしているのだった。(少しむなしい。)
 しかし、このブログで「ばらタン」のことを紹介したので、きっと略して「ばらタン!」と言ってくれる人が増えるはず。(少し期待。)
 バラ切りした牛タンの略ではないので、注意。

 せっかくなので、むなしいが会話形式でこのまま、「ばらタン」の紹介を続ける。・・・

「曲もそうだけど、歌詞が情熱的なんだよね。」
「言えてる。詩人のニャクリャーエウさんがまたすごい。」
「トーダルのコンサートによく来てるけど、ステージに上がって、自分の詩を朗読するんだよね。」
「トーダルより目立ってるかも。」
「詩人だけど、俳優みたいなんだよね。」
「確かに。ニャクリャーエウさんの情熱的な性格が作品に出てるよ。」
「訴える言葉の中に力強さがある。『8.黄金の喪失』なんか、どちらかと言うと癒し系の作品なのに、詩人の強さを感じる。」
「それでもって、トーダルが曲の最後にあかんべーをしている。(笑)」
「癒し系の歌がお笑い系で終わっているよね。」
「最近、トーダルとかクセニヤちゃんとか、効果音のように、よく作品の中で笑っているね。」
「ま、トーダルはいろいろやってみたいんだよ。(笑)」
「ニャクリャーエウさんは大真面目なのにね。ところで、この歌詞の世界は意外に夢か幻か・・・という部分が多いよ。」
「そう、『5.ワジェンキ公園』は具体的な地名が出てくるのに、詩の内容は白昼夢みたい。」
「そういうと、作品のほとんどが多かれ少なかれ、白昼夢的世界を描いているね。幻想、この世のものならぬ、と言った感じかな。」
「ヒット曲『道』も、こんなに力強いのに、見方によっては、白昼夢。」
「道と会話してるもんな。でも、こういう曲、ベラルーシ人は好きだよ。『9番目の哀歌』も反戦歌なのに、イリュージョンっぽいところがある。」
「わざとぼかすのがかえっていいのかも。『一人』も不思議な歌だよね。」
「『君は一人。一人よりも多い一人』という歌詞とかね。」
「一人より多い一人って、ニャクリャーエウさん、小学校で算数の成績・・・(笑)これは冗談としても、少々謎めいている世界です。」
「だから、日本語としてはちょっとおかしくても、わざと直訳になる部分を残して翻訳してみたよ。」
「ふつう、翻訳するときは、彫刻で言うところの荒削りのような訳をしてから、細かいところを仕上げるように翻訳していくけど・・・。」
「そう。でも今回はニャクリャーエウさんの作品が持つ、言葉の力強さと幻の世界を表現するために、わざと日本語では少しおかしく聞こえる直訳的表現を、作品のあちこちに残しておきました。日本語の詩として読むと、『きれい』じゃないかもしれないけど、ばらタンの持つ、浮世離れした世界感を表現したかったので。」
「荒削りの部分が、日本人の心にひっかかるようにね!」
「そう。トーダルの曲作りも、情熱と幻感覚が、よく出ていると思うよ。」
「歌い方もね。」

・・・・・

「薔薇と踊るタンゴ」 作詞 ウラジーメル・ニャクリャーエウ

1.夕闇
2.道
3.僕を行かせないで
4.飛行機
5.ワジェンキ公園
6.さらば、ヤブロンスカヤよ、さらば
7.飲み会
8.黄金の喪失
9.僕たちの夢の中に
10.9番目の哀歌
11.オオカミ
12.一人

・・・・・ 

 注釈を加えると・・・
「5.ワジェンキ公園」はポーランド、ワルシャワにある公園のこと。
 このアルバムはベラルーシ語の作品だけれど、このように「ポロネーズ」「ショパン」といったポーランドを表現している言葉がちりばめられている。
 これ(異国情緒)も、ばらタンの幻感覚を醸し出している理由の一つかも。
 ワジェンキ公園についてはこちら。マーサは2回行ったことがあるけど、ほんと、広かったです。

http://sachiko.vip.interia.pl/polska/lazienki.html


「6.さらば、ヤブロンスカヤよ、さらば」に登場するヤブロンスカヤとは、ポーランド人の女優だそうで、詩人ニャクリャーエフと何かロマンスがあったのか? と思ってトーダルにきいたけれど
「知らない。」
という返事。知らないけど、「さらば、ヤブロンスカヤよ、さらば!」っていつも熱唱してるのか・・・

「11.オオカミ」の歌詞は、歌詞カードを見ると、「УУУУУ」つまり「ウー ウー ウー ウー ウー」としか書いてないので、日本語訳もそのようにしてあります。
 しかし実際にこの曲を聞いてみると、「ウー ウー ・・・」という歌詞は歌っていません。でもオリジナルの歌詞カードの記載のほうをそのまま訳しました。(訳すというほどのことでもないけど。)
 もちろんこの曲に関しては作詞はニャクリャーエフではなく、トーダルである。(作詞にもなってないけど。)
 この「オオカミ」という曲はアルバム「オモチャヤサン」に収録されている「腹ぺこオオカミの歌」とは別の作品です。
 腹ぺこオオカミが5年後、こんなふうに進化(退化?)しちゃってますね。

それからアルバムタイトルそのものはニャクリャーエフさんではなく、トーダルが考えてつけたそうです。


(CD「薔薇と踊るタンゴ」はVesna!店舗にて、発売中。全曲日本語対訳付き!)

・・・・・・
  
(「12.一人」より)

   高いところには鳥
   深いところには魚
   地平線の蜃気楼の中に旅人
   君は一人。
   日々を捨ててしまわないように
   法則を知っておくように
   君は一人
   君は一人。一人よりも多い一人・・・


 

トーダル来日公演決定!

2008年02月12日 | トーダル
トーダルの初来日
 そしてコンサートへの出演が決定しました。
 
 京都にあるヨーロッパ輸入雑貨ショップVesna! が開店5周年を迎えるのを記念して、コンサートを2月23日と3月1日に開催します。
 この音楽イベントにトーダルが出演します。ついに日本に来ることになったトーダルに会いに、そしてバリトンの美声を聴きに京都へぜひお越しください。
 トーダルは日本の歌「月と日」収録曲を歌います。予定は「村祭」「浜辺の歌」「十五夜お月さん」「故郷」「朧月夜」。このうち3曲はオルケステル・ドレイデルさんと夢の共演。日本公演バージョンを演奏します。「月と日・日本コンサート・オリジナルバージョン」お楽しみに!
 そのほか日本の歌ではない自分の持ち歌も披露します!
 
 トーダル以外にも日本人の豪華出演者が登場します。盛りだくさんの内容で、「え、東欧とロシアの音楽???」
と言う方にも楽しめるコンサートだと思います。
 マーサ自身もとても楽しみにしています。そしてトーダルに感想が聞きたいですね。(特にマトリョミンの感想が聞きたい・・・。)

・・・・・・・ 

Vesna! 開店5周年記念イベント

『Part.1』 東欧とロシア音楽演奏会

*日時  2008年 2月23日(土) 午後5時30分 開演(5時開場)
*場所  京都府京都文化博物館 別館ホール(京都市中京区三条高倉)
*入場料 3,000円(チケット制・全席自由・限定180名様)

*京都府京都文化博物館 別館ホール HPはこちら*

http://www.bunpaku.or.jp/exhi_hall.html
 


*出演者の方々 (出演順)

■Vesna!マトリョミン合奏部(電子楽器マトリョミン)
  合奏部部員でマトリョミン演奏致します。頑張ります!!(←部長さんより)

http://www.mandarinelectron.com/matryomin/club_vesna.html


■オルケステル・ドレイデル(東欧ユダヤ音楽クレズマー楽団)

(樋上千寿:クラリネット 白石雅子:アコーディオン 高橋延吉:ドラム)
シャガール研究者で演奏家の樋上を中心に2003年4月結成。
東欧ユダヤ音楽の研究と演奏活動を開始する。2007年には宇都宮美術館と
千葉市美術館主催のシャガール展関連イベントで演奏を依頼される。

*オルケステル・ドレイデルホームページはこちら*

http://www.geocities.jp/smile_dreydel/dreydel.html
 

■トーダル(ベラルーシ語音楽グループ「トーダル&WZ-オルキエストラ」)

ボーカル、ギター、クラリネット担当。ベラルーシ共和国グロドノ州出身
ベラルーシ共和国より今回の演奏会に出演する為、初来日。
2005年9月 日本でお馴染みの四季の歌をベラルーシ語に翻訳、アレンジした
曲10曲を収録したCD「月と日」をベラルーシ国内にて発表。
収録曲「村祭」はベラルーシ語音楽部門ヒットチャートで1位となる。

*トーダル「月と日」についてはこちら*

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/songs/index.html
 

こちらの過去ログ(HP「ベラルーシの部屋」2006年5月過去ログ)で、「月と日」コンサートの画像がたくさん見られます。

http://belapakoi.s1.xrea.com/logs/2006/index.html


 このコンサートでトーダルが演奏するのは・・・
「朧月夜」「故郷」「浜辺の歌」「村祭」「十五夜お月さん」
「緑の樫の木」(ベラルーシ民謡。アルバム「バラード」収録曲。)
「道」(アルバム「薔薇と踊るタンゴ」収録曲)
「海」(アルバム「長い引き出しの歌」収録曲)
 ・・・の予定です。お楽しみに!!!


『Part.2』 SPECIAL THANKS!ライブ

*日時  2008年 3月1日(土)午後7時
*場所  ライブハウス『アバンギルド』(京都・木屋町三条下ル ニュー京都ビル3F)
*入場料 4,000円 (チケット制・限定80名様)
     ※1ドリンク+フード+プレゼント+楽しいゲスト達+音楽+笑顔 付き
     ※Part.1と2、両方のイベントにご参加頂ける場合、300円引き

 トーダルのほか、Vesna!マトリョミン合奏部、オルケステル・ドレイデルのメンバー、秘密ゲストが出演します。お楽しみに!
 このライブでトーダルが演奏するのは・・・
「村祭」「故郷」のほか
「満足しているオンドリの歌」 (アルバム「オモチャヤサン」収録曲)
「SOS」(アルバム「愛の汽車」収録曲)
・・・の予定です。
 これらのベラルーシ語楽曲(トーダルの持ち歌)の歌詞の日本語訳については「みつばちマーサのベラルーシ音楽ブログ」をご覧ください。

 このほか、マトリョミン合奏部とロシア語で「わにのゲーナの歌」を歌います。ロシアン・アニメソングを歌うトーダルは聴いたことないので、楽しみ!
 それに、オルケステル・ドレイデルさんといっしょにクレズマー(ユダヤ音楽)も演奏するので、ベラルーシ人が聴いたことないトーダルが日本で見られるかと思うと、得した気分ですねえ。


*ライブハウス『アバンギルド』の HPはこちら*

http://www.urbanguild.net/
 



●チケットのお求めは、雑貨ショップVesna!まで●

 お電話、メール、または店頭でお求めください。ただいま好評発売中です。
 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

http://vesna-ltd.com/event/5event.html


・・・・・・・・

 トーダルも今から日本行きをとても楽しみにしています。どれほど楽しみにしているかは、こちらをご覧ください。(音楽とは別のことを楽しみにしているかもしれないが・・・)(^^;)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/314b32891a1f9d506537f8dfb84645c3


 少々気が早いですが、イベント終了後、ベラルーシへ帰国後は、コンサートの詳細をこのブログでご報告しますので、お楽しみに!
 
 

「バラード」(2002年)

2008年02月09日 | トーダル
 ・・・ 悲しみは小夜鳴鳥のように鳴きながら飛んでゆく。
   ・・・ 明るい世界の上を・・・
    ・・・ 「誰の後を追いかけようか?」
             (バラード7 「悲しみ」より。)

 トーダルがソロ活動としてはセカンドアルバムだけど、「トーダル&WZ-オルキエストラ」の名前で発表した初めてのアルバム。
 19曲収録の中で、2曲はベラルーシ民謡をアレンジしたもの。そのほかは、古いベラルーシの詩に民謡風の曲をつけている。

 タイトルどおり耳に心地よいバラードが多いのですが、19曲のうち10曲はそれぞれ1分ぐらいしかないインストゥルメンタルで、実質的には9曲のバラードが収録されている。
(トーダルって、曲の曲の間に何か入れるのが好きだよな。) 

 トーダルが以前参加していたグループ「パラーツ」や「クリヴィ」がしている音楽と同じジャンルである。つまり、ベラルーシ民謡を自分風にアレンジするという手法だが、パラーツと同じアレンジの仕方はしていない。パラーツほど、ロックでゴージャスな感じはなく、楽器もバイオリンとバヤンが主体で、素朴な編曲は、ベラルーシ民謡らしさをたくさん残している。
 クリヴィ時代にしたかったけど、できなかったアレンジなんですこれが、というトーダルのメッセージもここに出ている、と言える。
 ベラルーシの民謡の古い持ち味を多く残しているため、
「ああ、ベラルーシだなあ・・・」
と聴いていて感じることができる。
 CDジャケットのデザインは地味だけど、ベラルーシの伝統文化である切り紙細工がモチーフになっていて、あくまでベラルーシ色にこだわっています
 ベラルーシらしさを感じたい日本人には一番お勧めのCD。アルバムタイトルどおり、哀愁漂うせつない曲が多い。
 トーダルが発表した数々のアルバムの中で、マーサが3番目に好きなアルバム。やっぱり、ベラルーシらしいから、外国人には心惹かれるものがあるね。

 ただ・・・
 日本語に訳された歌詞を読んだらびっくりするかも・・・
 日本人の感覚からすると、
「昔のベラルーシ人は何考えてたのか?!」
と思うような不思議な歌詞がいっぱい。シュールです。
 どうしてこんな風な変った歌詞が多いのかと言うと、ベラルーシ人は、駄洒落が好きで(正しくは音韻を踏むのが好き)言葉遊びが得意だからです。
 話の流れとしては、おかしくなっても気にせずに、どんどん駄洒落になる言葉を繋げていってしまいます。それをベラルーシ語歌うと、「韻を踏んでいて美しい歌。」とベラルーシ人は感じるのだけど、日本語に訳すと言葉の美しさが分からなくなってしまい、意味だけ訳したのを読むと、「?」な歌になってしまうことが多いです。
 そしてタイトルはその歌の一番最初の言葉がそのままタイトルになることが多い。で、その言葉から別の言葉が生まれ、そこからまた別の言葉が生まれ・・・と連想ゲームのように繋がっていき、歌の最後には全然、歌のタイトルと違う話になっていたりします。(例 バラード9の「緑の樫の木」など。樫の木がコサックになって、いつの間にか魚のカワカマスになってしまう。)

それと、ベラルーシ民謡の歌詞の特徴は、会話が多いこと。登場人物たちが、あるいは人間が自然と普通に会話しており、その会話の中身が、そのまま歌詞になっていることが多い。しかも会話が突然始まったりする。
 馬の番をしていたはずの女の子、カーシャがいきなりなぞなぞに答えないといけなくなったりする。(「カーシャは馬の番をした」バラード2)
 しかも、なぞなぞに答えられても、答えられなくても罰ゲーム(のようなもの)が待っているとは、どういうことなのか・・・。 

 摩訶不思議なベラルーシ民謡の歌詞の世界に行ってみたい人は、ぜひこのアルバムをお聴きください。
(まあ、日本の民謡でも「ソーラン節」のソーランって何? と外国人にきかれると、普通、すらすら説明できないよなあ・・・)
 それにロシア民謡は日本語に訳されているけど、ベラルーシ民謡はほとんど翻訳されていないので、そういう視点での興味のある方もぜひ、お聴きください。

 
・・・・・・・・
「バラード」 ベラルーシ民族詩、ベラルーシ民謡

1.秋
2.白樺を切らないで (バラード1)
3.叫ぶ
4.カーシャは馬の番をした (バラード2)
5.東
6.棺 (バラード3)
7.西
8.お伽噺 (バラード4)
9.君はどこに?
10.息子のダニーラ (バラード5・ベラルーシ民謡)
11.ヤーシカ
12.美しいダロータ (バラード6)
13.棺
14.悲しみ (バラード7)
15.空気
16.鶴 (バラード8)
17.盛土
18.緑の樫の木 (バラード9・ベラルーシ民謡)
19.叫ぶ 

・・・・・・

 少し説明すると・・・「11.ヤーシカ」のヤーシカは男性名。
「17.盛土」というのは、昔ベラルーシで一軒家の周りに、風を防ぐために盛り上げられた土のことです。土塁のようなものでしょうか。これで、冬の間、風が家に直接吹き付けるのを防いでいましたが、夏場はその上に座って、おしゃべりをしたり、民謡を歌ったりする、憩いの場でもありました。

 収録曲のうち、マーサが特に好きなのは「2.白樺を切らないで」「8.お伽噺」「14.悲しみ」です。
 「8.お伽噺」はヤマタノオロチみたいな話でおもしろいです。
 「14.悲しみ」は、曲はベラルーシ民謡なのに、歌詞が(駄洒落歌詞に比べるとわれわれ、現代日本人にも分かりやすく)普遍的で、とてもいいです。この歌に出てくる「彼女」というのは名前などは出てきませんが、「一般的な若い女性」をさしています。
 確かにシュールですね・・・ベラルーシ民謡の世界。これは少々意外だった。

(CD「バラード」はただ今、Vesna!で発売中。全曲日本語対訳付きです。)

 

「オモチャヤサン」(2001年)

2008年02月08日 | トーダル
「店長の開店の歌」より・・・
・・・何世紀にもわたり、一緒に遊んでいるけれど
   いつまでたっても分からない。
   人がオモチャと遊んでいるのか?
   オモチャが人と遊んでいるのか? ・・・・・

 クリヴィを脱退し、ソロ活動に入ったトーダルが2001年に発表したファーストアルバム。
 どうして「おもちゃ屋さん」とか「オモチャ屋さん」などに翻訳せず、全部カタカナの「オモチャヤサン」にしたのかは、理由があります。
 それは、おもちゃという言葉の持つかわいらしさとは全く違う、「ブラックユーモア」と「風刺」が満ち満ちているから。

 トーダルが
「僕はクリヴィを脱退して、自分の音楽を追求します!」
と、いきなりソロ活動に入ってしまい、
「そうか。それじゃあ、どんな音楽を作るのかな? 楽しみ。」
と思っていたファンは「オモチャヤサン」を聴いて、びっくり仰天したと思うよ・・・。
 ベラニカなんか、これ聴いたとき
「ええっ?! こんな作品を作りたいからクリヴィをぬけたの、トーダルは!? むきーっ!!」
と自分の髪の毛を引っ張ったかもしれない・・・
 と想像してしまうほど、今までのトーダルとは違った印象と、強烈なインパクトを与える曲が収録されています。

 どうして「オモチャヤサン」というのかと言うと・・・
 収録されている12曲全部が「オモチャヤサン」ことおもちゃ屋の店長の歌と、売られている(しかも生きているという)おもちゃの歌になっているから。
 さらにそれぞれのおもちゃの歌の合間に、店長の宣伝文句が入るという懲りよう。
 ただ、このおもちゃは全部動物のおもちゃで、どうも動物の形をしたぬいぐるみのおもちゃらしい。そしてその動物が自分の持ち歌を歌うのです。
 収録曲のタイトルについては下記をご参照ください。
 
 しかしまあ、これ、「おもちゃの歌」って言っているけど、本当は動物の歌で、しかも人間の歌です。
「こういう人、いるよねえ。」
「いるいる!」
と言う具合に聞けます。そして笑えます。
 歌詞の内容もさることながら、歌の合間の店長の宣伝がかなり強烈です。ちなみにこの店長の宣伝文句も詩人のレアニード・ドラニコ-マイシュークさんが書いたものです。しゃべっているのはトーダルだけどね。
 せっかくなので、一部ご紹介しましょう。
 
 たとえば8番の「自由なズーブルの歌」の後、店長がリスナー(つまり「オモチャヤサン」の買い物客)に向かって話しかけます。
「(前略)ズーブルに荷馬車はくくりつけられませんが、ウマにはつけられます。(中略)
馬具をつけようとすると首を振っていやいやをするウマもいますが、鞭で引っ張ったけば、おとなしくなります。(中略)
荷馬車に乗って鞭を振るご主人が紳士的な人間なら、ウマのほうも恥ずかしくないんですが、そうじゃない人間だった場合、ウマも恥ずかしく思っていることだけは覚えておいてくださいね。」

 この宣伝文句の後、9番の「おとなしいウマの歌」が始まります。その歌詞はこんな具合。

「僕はおとなしく我慢強い。
 住んでいるところはベラルーシ。(中略)
 重荷を背負って汗だくになって働いているうちに
 人生は過ぎ去っていく。
 僕に干草をあげるのを忘れないで。
 麦をあげるのを忘れないで。」

 そして、この歌の後、店長の宣伝文句が入ります。

「働きすぎて、疲れきり、よぼよぼの年寄りになってしまう。こういう怖いことが起こることもあります。
 でも、これは私の店のウマのことではありません。うちのウマはオモチャですから、全然疲れないし、買えばあなたの家にずっといます。どこへも逃げないよ。
 あなたも仕事に疲れたら、このウマのように家にずっといればいいんです。自分の仕事だけを適当にやって、給料という名の麦をもらえばいいんです。余計な仕事なんてするだけ損です。自分の能力を見せびらかして、周囲に認めてもらおうなんてしなくていい。(中略)
 いつもにこにこ愛想よく、上司の言うことには何でも、『はい。』とだけ答えておく。間違っても反対意見なんか言っちゃいけませんよ。(中略)
 個人的意見などというものを挟まないようにすれば、職場のみんなはあなたに満足してくれます。
 まあ、個々の人間が全員賛成ばかりしていると、社会全体というものは、だんだん腐ってくるんですが。
そのことをよく知っているのはクマです。」

 そしてこの宣伝文句の後、すぐに10番の「お人好しなクマの歌」が始まります。
 いやあ、このウマ「住んでいるところはベラルーシ。」と歌っているのですが、私には「日本」に聞こえてしまうんですよね。
 オモチャヤ店長が言っていることも、全部日本、ならびに日本人にも当てはまると、思いませんか?
 いやはや、詩人のレアニード・ドラニコ-マイシュークさんは天才だね。尊敬する。よくこれだけ、思いつけたよ・・・。人間と動物と社会をすごく観察しているんだなあ、と思いました。
 ちなみにマーサが一番好きなのは「賢いカラスの歌」です。 

 とにかく、どの歌も「これでもか!」というぐらい強烈です。笑えるんだけど、心の底からの楽しい笑いはできないですね。
 ちなみに歌っているのは、店長も動物も全員トーダルです。店長の宣伝もトーダルが語りに語ります。
 トーダルが歌うと本当にその動物が歌っているように聞こえます。そこのところがまたすごい。性格も歌い分けている。7番の「満足しているオンドリの歌」なんか、コケコッコーとか鳴いているわけではなく、人間の言葉の歌詞を歌っているだけなのに、本当にオンドリが歌っているように聞こえます。
 トーダルの芸達者なところがよく分かるアルバムですね。
 ちなみに他の動物の歌もあり、全部で20種類の詩があるのだそうです。
 そのうち10種類をトーダルが選んで曲をつけました。(他の動物の詩も読んでみたい。)

 ゲストで有名な歌手ヤドビガ・パプラフスカヤ(このブログ内「ミュージカル「預言者」② と③参照。)がトーダルといっしょに歌っているのも、特筆ものです。ああ、きれいな声。ほんと、声がきれいだと得だと、感じます。それにしても、トーダルからの出演依頼に応じたよね。私はこの人のこと、元祖ベラルーシ人眼鏡アイドルだと思うのだが・・・。(ちょっと失礼?)

 ところで、収録曲の内容にちょっと注釈を加えると・・・ 

 4番の「賢いカラスの歌」で「百年は一日のよう。生き続けても疲れない」という歌詞がありますが、これはベラルーシではカラスは100年生きると言われているからです。日本で言うところの「鶴は千年、亀は万年」みたいなものでしょうか。

 6番の「不幸なヤギの歌」の歌詞。
「でも、しょっちゅう嫌がらせを受ける
子どもも大人もみんな
僕のことをヤギと呼ぶ」
 どうしてヤギと呼ぶのが嫌がらせになるのか、というと、ヤギはベラルーシ語で「馬鹿」とか「間抜け」と同意語として使われるため。

 7番の満足しているオンドリの歌の歌詞。
「僕より若いオンドリはとさかも・・・」のとさかですが、原作ではとさかではなく、「そ嚢」と歌っています。これは食道が膨らんで、一時的に食物をためておく器官のことです。(「そ嚢」のその字が出てこない。口へんに素)
 そ嚢と言われて、すぐに分かる人はとても少ないと思ったので、とさか、と訳しています。

8番の「ズーブル」とはヨーロッパバイソンのこと。分かりやすく言うと野牛。
 野生のものではベラルーシとポーランドにまたがる白い塔の森にだけ生息する希少動物。詳しくはHP「ベラルーシの部屋」の過去ログ「TBS『世界遺産』撮影裏話 生息する動物たち」をご覧ください。

http://belapakoi.s1.xrea.com/logs/tbs0415/menu.xhtm

「オモチャヤさん」のCDジャケット、表ジャケットには普通の牛(ただしピンク色)がデザインされており、内側にはズーブル(ただし変な色)がデザインされている。
 ちなみに表ジャケットには牛の写真が使われているけど、「ウシの歌」はない。(謎)どうしてこんなデザインにしたんだろう。よく分かりません。 

 「昼休みの休憩」とは商店で働く店員のための昼休みの休憩時間のこと。今でこそほとんどなくなったが、昔はあった。お昼ごろに買い物客を追い出し、1時間閉店してしまう。休憩時間が始まる5分前などに買い物に来ると
「もうすぐ昼休みの休憩時間です。入店しないでください。」
と入り口のところに立っている店員に入店を阻まれる。
 お客の買い物の便利さ、商店の利益などより、労働者ために、規則正しく、健康的で、みんなが同時に集まってわいわい食べる昼ごはんを優先させた制度。
 さすが、労働者の国、ソ連。
 ちなみに美容院でもこの制度があったため、昼休みの休憩時間になると、カット中でもパーマ中でもほったらかしにされた。
 今のベラルーシは(特に都市部では)利益優先に変化し、商店の休憩時間はもうない。
 
(「コンドラトの子守唄」のことは調べたけど分からなかったので、今度トーダルにきいておきます。)

・・・・・・・・

「オモチャヤサン」 作詞 レアニード・ドラニコ-マイシューク

1.店長の開店の歌
2.腹ぺこオオカミの歌
3.怖がりアナグマの歌
4.賢いカラスの歌
5.機嫌の悪いイヌの歌
6.不幸なヤギの歌
7.満足しているオンドリの歌
8.自由なズーブルの歌
9.おとなしいウマの歌
10.お人好しなクマの歌
11.コルホーズのヒツジの歌
12.店長の閉店の歌  

・・・・・・

 「オモチャヤサン」はただ今Vesna!で発売中です!
 もちろん、この黒い笑いが日本人の皆さんにも分かるように、歌詞、店長の宣伝文句とともに、日本語訳がちゃーんとついています。
 私も宣伝はしておいたよ。売れるかどうかは別として。(笑)

「店長の閉店の歌」より・・・
・・・親愛なる人間よ、
   小さい子どもも年よりも
   みんな、ねじを巻いて動いている
   生きてるオモチャみたいだよ・・・

WZ-オルキエストラ

2008年02月06日 | トーダル
WZ-オルキエストラとは一言で説明するとトーダルのバックバンド。2002年に結成された。

「WZ」とは何を意味するのか? というと 古いベラルーシ語で「東西」を表す言葉の頭文字。(WOSCHOD と ZACHOD)

 日本語に訳すと「東西オーケストラ」という意味。命名したトーダルによると、ベラルーシは東西ヨーロッパの間に位置しているから、だそうです。
 この「東」というのは、ベラルーシから見て東にあるロシアのことをさしており、マヤコフスキーの詩に作曲してロシア語の歌も歌ったのは、そういう理由もあったからだそうです。
 でも「月と日」を発表後はこの「東」はロシアではなく、もっと東にある日本のことを意味しているんだそうです。
 つまり今ではグループ名は「日本と西ヨーロッパの間にあるオーケストラ」という意味ですよ。
 スケール、大きいです。
 もっとも結成当初は4人しかメンバーがいなかった。

アリャクサンダル・シュバラウ(アレックス):バヤン
クセニヤ・ミンチャンカ:バイオリン、ジャム・ビー(打楽器)、ボーカル
アレーク・イワノビッチ(イワ):アコースティック・ギター、アコーディオン
ヴャチァスラウ・シャルギエンカウ(スラーワ):コントラバス
 
 その後、メンバーが交代したり、曲に合わせて、メンバーが一時的に参加したり、と顔ぶれは流動的。
 トーダルの曲作りの上ではバヤン(ロシアのアコーディオン)とバイオリンを多用しているところが、大きな特徴となっている。

 メンバーの詳細はまた改めて投稿しますね。

トーダルの人生 4 ソロ活動 そしてWZ-オルキエストラ

2008年02月06日 | トーダル
<ソロ活動開始>

 2000年クリヴィを脱退し、ソロ活動を始めたトーダルは、新しいアルバムの製作に取りかかった。それは2001年にソロ活動ファーストアルバム「オモチャヤサン」となって誕生する。
 クリヴィをあんなにもめて脱退したほどトーダルがやってみたい音楽とは何なのか・・・と思っていたファンは「オモチャヤサン」を聴いたとき、びっくり仰天したと思う。
 「オモチャヤサン」はもちろんクリヴィ時代の音楽とは全く異なる作品だった。
 なぜなら、そこには「ブラックユーモア」と「人間社会への風刺」がぎっしりつまった異色の歌が収録されていたからだ。
 もっとも歌詞はレアニード・ドラニコ-マイシュークという詩人が書いた物で、トーダルが書いたわけではない。しかし、わざわざこの詩人のこの作品を選んだところにトーダルの挑戦があったと思われる。

 こうしてソロ活動ファーストアルバム「オモチャヤサン」で衝撃を与えたトーダル。
 確かに作品の中でも異色のアルバムと言えるけれど、(「月と日」も異色かも。(^^;))ベラルーシ音楽史上の中で見ても相当異色の作品である。聴いていると笑えるのに、笑顔が凍りつく瞬間がたくさんある・・・。

 その一方で、子供向けの舞台音楽にも手を出すことになる。
 ミンスク子ども劇場がスウェーデンの児童文学「屋根の上のカールソン」(原作アストリッド・リンドグレーン)をベラルーシ語の劇にして上演することになり、その音楽をトーダルが担当した。

<WZ-オルキエストラ結成>

 2001年トーダルは自分のグループ「トーダル&WZ-オルキエストラ」を結成する。
 結成当初はトーダルが吹くクラリネット以外に楽器は、ギター、バイオリン、バヤン、コントラバス(ベース)ぐらいしかなかったが、この基本編成に加えて、アルバムの作品によって、さまざまな楽器(メンバー)を自由に加える形を取っている。 
 「トーダル&WZ-オルキエストラ」として最初に発表したアルバム「バラード」はベラルーシ民謡をアレンジしたもの。
 つまり、クリヴィ時代にしていた音楽と傾向は同じなのだが、クリヴィ時代とは全くちがう編曲の方法を採っている。
 これがトーダルがやりたいと思っていたがクリヴィ時代はできなかった音楽の一つだったのだろう。

 その後も1年に1枚か2枚という超ハイペースでアルバムを発表している。
 基本的には「オモチャヤサン」同様、ベラルーシの詩人の作品をトーダルが読んで、気に入ったものに作曲する、という形式でアルバムの製作を行っている。(「季節の香り」「愛の汽車」「薔薇と踊るタンゴ」「LIRYKA」など)
 一方で、ロシア語の作品を手がけたり(「MW」など)、日本の歌を歌ったり(「月と日」)しており、また「I want you now」は英語で、アルバム「ベッラ・チャオ」に収録された2作品ではイタリア語で歌うなどしている。
 さらにユニセフから依頼されユニセフ創立60周年記念アルバム「子守唄」を製作するなど、最近は「ベラルーシナンバーワンの国際派アーティスト」と呼ばれるようになっている。
 2008年はスウェーデンの詩人の作品をベラルーシ語に翻訳した歌詞に作曲するという「スウェーデン・プロジェクト」が待っている。
 活動の場をポーランドにも広げ、学生だったとき、その入り口前でガラス製品を売っていたワルシャワ科学文化会館で、現在ではコンサートを開き、満席の観客の前で自分の作品を歌っている・・・。

 この調子でがんばれ、トーダル! マーサは応援し続けるよ。

 しかし・・・この記事、どこまで続くんだろう? 「トーダルの人生」なんていうタイトルにしなきゃよかった。(^^;) トーダルが死ぬまで(あるいはマーサが死ぬまで)これ、続くんだろうか。
 
 WZ-オルキエストラはまだまだ続くと思うし、次の記事のタイトルは「トーダルの人生 5 WZ-オルキエストラ時代中期」とか「トーダル40歳代」「50歳代」「60歳代」という具合に分けたらいいのだろうか。
(そのころ、どうなってるんだろ、トーダル。本人はこの間「白髪頭の小ぎれいなじいさんになることを目指す。」と言っていたが。)

 とりあえず「トーダルの人生 5」に続く。(そのうち・・・)
   

トーダルの作品リスト

2008年02月06日 | トーダル
<パラーツ時代>

1995年
 「パラーツ」が発表したアルバム「フォークロア・モダン」製作に参加。(2005年に再リリース)


<クリヴィ時代>

1997年
 アルバム「ヘイ・ローリー」発表。(2005年に再リリース)
 アルバム「Narodny Albom」製作に参加。

1998年
 アルバム「霧のかなたに」発表。

1999年
 アルバム「人々に」発表。
 アルバム「Вольныя танцы: слухай сваё」製作に参加。

2000年
 アルバム「僕はここで生まれた」製作に参加。
 クリスマスソングアルバム「聖なる夜」製作に参加。


<ソロ活動・WZ-オルキエストラ時代>

2001年
 ソロ活動を開始。第1作目のアルバム「オモチャヤサン」を発表。(作詞はレアニード・ドラニコ・マイシューク)
  映画「新鮮な肉は花火とともに」(ベラルーシフィルム イワン・パブロフ監督)の音楽を担当し、ラストシーンで音楽家の役で1秒間ほどクリヴィのメンバーとともに出演する。
 ベラルーシ語版の劇「屋根の上のカールソン」(原作アストリッド・リンドグレーン)の音楽を担当する。ミンスクの現代芸術劇場で初演。
 アルバム「Вольныя танцы: альтэрнатыва by」にクリヴィ時代の作品が収録される。

2002年
 トーダル&WZ-オルキエストラとして初めてのアルバム「バラード」を発表。
 英語の歌「I want you now」がアルバム「Personal depeche Belarusian on tribute」に収録される。
 クリヴィのアルバム「ミンスク・ベルリン」に作品が収録される。

2003年
 アルバム「季節の香り」発表。(作詞はアレーシ・カモツキー)
 プロモーションビデオを6作品製作する。

2004年
 アルバム「愛の汽車」発表。(作詞はルィゴール・バラドゥーリン)
 アルバム「ベッラ・チャオ」の製作に参加。イタリア語に翻訳された自作の曲をイタリア語で歌う。

2005年
 アルバム「MW」(歌詞はウラジーミル・マヤコフスキー)
 アルバム「月と日」(日本の歌)発表。日本国内でも販売され、ベラルーシ人アーティストのアルバムとしては、最も多数売れる。
 日本のラジオ番組(「文化放送」「NHK地球ラジオ」「FM東京」)で取り上げられる。また日本の雑誌「マガジンALC」(アルク発行)などでも紹介される。

2006年
 アルバム「薔薇と踊るタンゴ」(作詞はウラジーメル・ニャクリャーエウ)
 アルバム「長い引き出しの歌」(今までのアルバム未収録曲を集めた作品集)発表。
 「ベラルーシポップス ヒット1ダース 2005」に「春の日」(アルバム「愛の汽車」収録曲)と「君の元へ」(アルバム「季節の香り」収録曲)が収録される。

2007年
 ユニセフ創立60周年記念アルバム「子守唄」製作に参加。収録曲のプロモーションビデオに山猫の役で出演する。 
 アルバム「LIRYKA」(作詞はゲナジー・ブラウキン)発表。
 「ベラルーシポップス ヒット1ダース 2006」に「村祭」(アルバム「月と日」収録曲)と「道」(アルバム「薔薇と踊るタンゴ」収録曲)が収録される。

2008年
「ベラルーシポップス ヒット1ダース 2007」に「海」(アルバム「長い引き出しの歌」収録曲)が収録される。
 アルバム「いるもの全て」(今までのアルバム未収録曲に新作曲を加えた作品集)発表。


(新しい作品を発表したら内容に追加します。)

トーダルの人生 3 「クリヴィ」時代

2008年02月05日 | トーダル
<クリヴィとトーダルの誕生>

 1996年、パラーツを作ったものの、リーダーではなかったフランツが、パラーツを脱退し、新しいグループを作ろうと、トーダルに呼びかけた。
 これを機会に、トーダルはパラーツを抜け、そしてボーカルとしてベラニカ・クルグロワを加えた3人のグループ「クリヴィ」を結成する。
 クリヴィとは、昔ベラルーシで旅人が道中に飲む飲み水を入れた水筒のことである。
 つまり、クリヴィの音楽を人生と言う旅で飲む水にたとえたのである。
 
 ここでもフランツは新しいグループを作っても、自分はリーダーにはならず、ベラニカがリーダーになった。ベラルーシでは異色の女性がリーダーのグループである。
 トーダルとフランツは作曲や編曲、楽器の演奏やサイドボーカルを分担した。
 クリヴィ結成時にトーダルは、芸名をフョーダルからトーダルに改名。
 その理由は
「これからは、優しい親切な人なだけじゃだめだ。」
と思ったから。ちなみにトーダルとは、ベラルーシ人の古い男性名で、今は自分の子どもに名づける人はめったにいない、という名前。意味も「強い男」。
 フョーダルはパラーツのメンバーにつけてもらったが、トーダルという名前は自分で選んでつけた。かくして、ここにミュージシャン「トーダル」が誕生した・・・。
 そして、当時のプロデューサーの考えだったと思われるが、トーダルのことは「マルチ・インストゥルメンタリスト」として売り出された。
 マルチ・インストゥルメンタリストとは何かと言うと、つまり「何でも楽器が弾ける人」という言葉である。トーダルが器用で、いろいろな楽器が弾けるため、そのような肩書きをくっつけたのである。
 しかし、マーサが後になってトーダルに確認したところ、「何でも楽器が弾ける」わけではなく、ピアノやバヤン(ロシアのアコーディオン)といった鍵盤楽器はそれほど上手に弾けないことを白状している。
(「クリヴィのマルチ・インストゥルメンタリストの人でしたよねえ。」
と人に言われると、苦笑いをしている。)

 パラーツがベラルーシ民謡とロックを融合させた「フォークロア・モダン」という新しいジャンルを創ったのに対し、クリヴィはそれに「ベラルーシ・エトノミュージック」をさらに融合させようとた。
 ベラルーシ・エトノのエトノとは、エスノ・ミュージックのこと。
 エスノ・ミュージックは主にアジアやアフリカのエキゾチックで、民族色を前面に出した音楽のことだが、「ベラルーシ・エトノ」というジャンルではベラルーシ民族色を下地にした創作的な音楽が多い。

 クリヴィはベラルーシ民謡、ロック、エトノなどのさまざまなジャンルの音楽が融合した新しい音楽を創り始めた。
 そして、これが大成功を収めたのである。
 同じ歌詞を何度も繰り返す手法のメロディーライン、巫女を連想させるヴォーカルのベラニカ。フランツがかぶせるテクノサウンドといったさまざまな音。トーダルの巧みなアレンジ。
 デビューしたとたんに、クリヴィはベラルーシ音楽シーンのスポットライトに登場し、パラーツと人気を二分するようになった。
 そして、ドイツ公演を実現。
 1997年にファーストアルバム「ヘイ・ローリー」を発表したが、録音作業が行われたのはドイツのベルリン、と当時のベラルーシの音楽グループとしては異例の「出世」だった。 

 ところが、フランツはファーストアルバム発表後、1年ほどでクリヴィを脱退。次にとうとう自分がリーダーを勤めるグループ「URI'A」を結成し、現在に至っているが、この人どうして新しいグループを作ってはすぐ自分は抜けてしまうんだろう? ある意味、マーサがとても気になっているミュージシャンの一人である。

 フランツが抜けた後、ピート(本名はピョートル・パウラウ)がメンバーに加入。ギターを担当し、再び3人になる。
 トーダルはほとんど全ての作品の作曲、編曲、楽器演奏、サイドボーカルを担当し、大忙しとなるが、次々に発表したアルバム「霧のかなたに」「人々に」などで、大成功を収めた。
 知名度が飛躍的に上がり、ベラルーシ、ポーランド、ドイツのコンサート会場で大喝采を浴びるようになった。
 1999年には「ロック・カラナツィヤ」コンクールでクリヴィが「ベラルーシ最優秀グループ賞」受賞。
 トーダル自身は「ベラルーシ最優秀ロックシンガー男性ボーカリスト部門」優勝。(別名「ロック・キング賞」)ベラニカも女性ボーカリスト部門で優勝した。(別名「ロック・クイーン賞」)
 また2001年に上映された映画「新鮮な肉は花火とともに」(ベラルーシフィルム)の音楽を担当し、ラストシーンで音楽家の役で1秒間ほどクリヴィのメンバーとともに出演するなど、活動の場所も広げていった。
 こうして90年代を代表するグループに成長したのである。
 
<クリヴィ脱退騒動>

 ところが・・・2000年にドイツのベルリンで行われた音楽コンクール「Musika Vitale」でクリヴィが優勝するという、人気絶頂期にトーダルはクリヴィを脱退した・・・。
 その理由はいろいろあるが、最大の理由は、他のメンバーと意見が合わなくなったこと。
 トーダルによれば、ベラルーシ・エトノではなく、もっと違う音楽にも挑戦したいと言ったのに対し、他のメンバー、特にベラニカが反対したから。
 ベラニカは今までのクリヴィ路線で進めばよく、変更する必要はない、と言い、さらに、あんたは私が歌いたい歌を作曲すればそれでいい、というような自己中心的なことをトーダルに言ったらしい。
 トーダルがそれに反発し、ピートもそれにからまって、大変な口論になってしまったらしい。
 そしてとうとう、トーダルがソロ活動をしてでも、自分のやってみたい音楽がやりたいと言い出したが、それもベラニカが反対したため、また揉めに揉めてしまった。(その情景を想像したくない・・・)

 結局はトーダルが脱退してしまうのだが、しばらくの間、ベラニカ&ピートとは口もきかぬ、という冷えた関係が続いてしまうほどだった。
(しかし、その後すぐに、まずピートと和解。ベラニカとは長い間、疎遠な状態が続いていたが、2007年にはいっしょにステージに立って、クリヴィ時代の歌をデュエットするなど感情的なしこりは解消した模様。)

 こうして、トーダルはソロ活動に入った。トーダルのクリヴィ脱退はファンに衝撃を与えた。しかし、一番ショックだったのはベラニカだったろう。
 トーダルあってのクリヴィだったことは、誰の目にも明らかだった。作曲・編曲・演奏のほとんどを担当していたトーダルが抜け、クリヴィの人気は急激に失速していった・・・。

 トーダルにとっても自分に課したソロ活動への道は、厳しいものになるかもしれない、と自覚していた。しかし、自由な音楽上の実験ができることになり、自分の才能を次の段階へと上げていくことになったのだった。  

 (トーダルの人生 4 に続く。)

画像はクリヴィのメンバー。
右からトーダル、当時のサポートメンバー、ベラニカ、ピート。
トーダルが持っているのはベラルーシの民族楽器手回しリラ。(摩擦弦楽器ハーディーガーディー)