皆様、明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて早速ですが、最近になり各インターネット囲碁サイトに次々と超絶囲碁AIが現れていますね。
さすがにこれはリサーチしないといけない!ということで新年一発目から囲碁AIブログです。
まずはYahooニュースのトップにもなった「GodMoves」
KGSに11月29日、12月1日だけ現れて3局の棋譜があります。
正体不明でAIという確証はありませんが、1局を通しての消費時間が7分弱
Zenに3戦3勝しています。
そして何よりその棋譜が斬新。
全てGodMovesの黒番でした。
1図 1局目、横向きに中国流を構えたことからAlphaGoではという噂になりました。乱戦の末、黒が勝ち。
2図 2局目 1手目天元から!しかしその後は普通に進行。黒9の肩ツキにZenも白16とお返しの肩ツキ。
囲碁AIは肩ツキが大好きです。結果は黒の圧勝。中国流より1手目天元の方があっさり勝ったように見えたのが不思議です。
3図 3局目 ナナなんと黒1、3の天元1間ジマリ しかも黒15から白16ツケに手抜きで黒17と裏からツメ
4図 (白1~黒24、通算18~41)
続いて当然白1ですが、自然な流れで下辺が黒地っぽくなりました。
そして大好きな肩ツキ黒18。黒24のリズムもよく天元1間ジマリも良い位置で黒好調です。
結果これも黒の完勝。ちなみにZenは趙治勲名誉名人と打ったバージョンとほぼ一緒でKGSでは約9割の勝率を記録しています。
置き碁やコミなしの先も含んでの勝率9割ですから、互先では滅多に負けていませんでした。
GodMovesはAIなのか
消費時間や肩ツキが好きなところはAIのようですが、天元1間ジマリを囲碁AIがやるかどうかは疑問という意見もあり
私見では最初の数手だけは人間の意志が入ってると思いましたが、結局のところ未だに正体不明です。
しかしこれは2016年大晦日から2017年の元旦囲碁AI祭りの序章にすぎませんでした。
最近ネット囲碁サイトでは中国発の野狐囲碁が盛んですが、そこにも囲碁AIがいます。
世界最大のゲーム会社テンセントが開発したもので「絶芸」「刑天」という二つが確認されています。
「絶芸」は11月29日夜の対局を最後に現れていません。これを書いていて気づきましたが
絶芸が消えた日とGodMovesが出現した日が一緒ですね
一見すると時間が一緒のようにも見えましたが、アジアの時間とGMTなので出現時間はかぶってないはずです。
現在は12月27日に現れた「刑天」がよく対局しています。
刑天と絶芸が違うソフトなのか、同じソフトをアップグレードしたものかは分かりません。
序盤のパターンは非常によく似ていますが、テンセントが開発している囲碁AIは複数あるとの情報もあります。
野狐囲碁のIDはハンドルネームの下に実名が書いてあり、世界のトッププレーヤーは名前バレしてる状態で刑天と対局しています。
観戦者数は毎局2000人超です。
世界のトッププレイヤーが束になって襲い掛かっていますが、刑天は20局打って勝率は8割です。
5図 刑天(黒)vs潜伏〔柯潔九段〕(白)
黒1から3が人間には気がつきにくいかと思いましたが、よく見ると棋理に適っています。
地を気にして右辺に目がいってしまいますが
まず弱い石を繋げて中央のラインを作るのが良いのですね。なるほど。
そして黒3と打ち俄かに中央が黒っぽいです。続いて
6図 白4と反発しましたが、黒23までいつの間にか攻勢に立っています。結果は黒の勝ちでした。
この全体感覚が非常に勉強になります。
一方でどういう碁のときに刑天が負けてるかというと
7図 刑天(黒)vs潜伏〔柯潔九段〕(白) 白Aと打ったところです。白△と黒□の攻め合いはどうなってるのでしょうか?
8図 ご覧のように白の1手勝ちです。
この碁は99%白の勝ちでしたが、回線が切れてしまって黒の勝ち
柯潔九段もネットで悔しがっていたとか。しかし内容は白の圧勝でしたね
この他にも柯潔九段は刑天に勝っており、全局的な乱戦から死活の勝負にしてるのが特徴です。
もともと囲碁を打つ囲碁ソフト(詰碁用ではない囲碁AIのこと)は死活が苦手と言われています。
ですが、最近は学習が急ピッチで進んでおり、その弱点も隠れていました。
しかしやはり、序盤に比べて相対的には少し弱く、全局的な戦いに持ち込めれば、人間にもチャンスがありそうです。
尚、「刑天」とは古代中国の神の名だそうです。
前置きが長くなりましたがここからが本題です(笑)
最初に少し触れたZenですが、KGSから東洋囲碁に引越しDEEPZENとして対局しています。
100局以上打ち、勝率は約9割。
これは1年前から考えれば驚異の進歩ですが、それが霞むほどの打ち手が突如として東洋囲碁に現れました。
その名は「Master」東洋囲碁で30連勝を記録し元日からは野狐で打っていますが、世界チャンピオン経験者に5連勝。
未だに負けなしです
出てきた当初は韓国のAIという説がありましたが
野狐で世界チャンピオン経験者にしかつかない金の冠マークがあることからAlphaGoとも噂されています。
では少し打ち方を見てみましょう。
9図~12図 Master黒番の布石です。
9図 黒番の場合、この布石は非常に多いです。白4の小目に対しては見た限りでは黒5の大ゲイマジマリですね。
黒21、23のスピーディーな手法も頷けます。
10図 白4が星の場合は黒5の2間高ジマリ。そして大好きな肩ツキ黒7!これも複数局打たれています。
11図 現在(1月2日日本時間15時半)進行中の碁も似たパターン。黒29といきなり三々に入るのも好きなようです。
12図 同じくすぐ三々に入った例。なるほど、星に接する両辺がほぼ等価の場合は三々に入るのか、打たれてみれば理に適っている・・・
13図 白番の布石も見てみましょう。肩ツキが好きなのは知ってましたが、ここまで大好きとは・・
白10、16、20と3回打ちましたね。
14図 ツケの運用も目立ちます。白18。同じような例がいくつかありますので他も紹介します。
15図 なんと大ゲイマジマリにツケ。しかし実はこの様な手は、私は囲碁クエスト13路でAyaZにたくさん打たれています。
凝り形に導くようにすぐツケる手がAIは得意ですね。13路と19路では少し性質が違うかとも思ってましたが、これを見ると真理は近いのか・・・
16図 AlphaGoの自己対戦で有名な白1のツケと雰囲気が似ていますね。実は全く同じ局面が現れ、Masterはどう打ったかと言うと・・・
17図 Masterは白1と入り、道策を彷彿とさせる打ち回しです。
大分長くなりましたが、2017年早々囲碁AIから目が離せない展開です。
囲碁AIは寝ないで打てるので追いかけるのが大変ですが、全力でリサーチしようと思います。
リアルタイム情報はツイッターの方が速いのでそちらもよろしくお願いします。
それでは今日はこの辺で。また会いましょう