新潮文庫
1997年2月 発行
解説・井上ひさし
330頁
雑誌「新青年」への連載開始が遅れたうえ、誤魔化し誤魔化し書いてきた「悪霊」
物語の先を思いつけずついに休載
1934年1月、書けない苦しさから逃れんと家出をした江戸川乱歩・40歳が腰を落ち着けたのは
溜池にある主に外国人向け長期滞在用の<張ホテル>
そこで天啓を受けたかのように書き始めた「梔子姫」
江戸川乱歩がホテルに滞在した4日間を描いています
客の世話をする中国人美青年や滞在中のアメリカ人夫妻から受ける刺激
乱歩の部屋の隣の空室に関わる恐ろしい話
現実世界と「梔子姫」の世界、乱歩の夢の奇妙な符合
乱歩の日常をよくよく調べあげたものらしく、無理なく一人の作家の人間像を描き出しています
さらに、乱歩が書いたとしか思えない作中作「梔子姫」
「百先生 月を踏む」の作中作も百先生そのものでしたが、深く深く読み込んでいなければ出来ない技ですね
井上ひさしさんによる解説がユニークです
本書をテキストに創作講座を行う、という設定で本書の素晴らしさを『力説』されています
久世光彦という作家は、言葉を使って、物語の時代、場所へ読者を導き、イメージを読者へ送り届けることが出来る
このような作業が出来ない人にはろくなものは書けない、とまで仰っています
ある程度、乱歩作品を読んでいるほうが、楽しめる作品かと思います
本書をきっかけに乱歩を読むのも良いでしょう
そして本書を再読
さすれば、猶更本書の面白さを堪能できることでしょう
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