ちくま文庫
内田百集成8
2003年5月 第1刷発行
2012年8月 第2刷発行
解説・清水良典 伊藤整
283頁
タイトルに堂々と「贋作」と銘打ってあるところが百先生らしく可笑しい
俄然期待が増します
「真作」は勿論、夏目漱石「吾輩は猫である」
水がめに落ちて死んだと漱石が書いている英語教師苦沙弥先生の猫が、実は死にきらずに、戦後に現れて、ドイツ語教師五沙弥先生の宅に住み込む話です
「真作」で苦沙弥先生の家に集まった、寒月、独仙、迷亭などという風流人の代わりに、「贋作」の五沙弥先生の家には鰐果蘭哉(ワニハカランヤ)、飛騨里風呂(ヒダリブロ)、出田羅迷(デラメイ)、狗爵舎(クシャクシャ)などという風流人が集まります
借金について、シャンパンについて、共産主義について、はたまた『金を貯める文士・蛆田百減(ウジタヒャクゲン)氏』についての清談を交わす面々の様子を観察しているのが猫-贋作ではアビシニヤと名がつけられています-
百先生の愛すべき遊び心満載の本作
先生の作品を複数読んで文章に慣れてから読むことをお薦めします
勿論「真作」もネ
五沙弥先生のサロンは百先生と教え子たちとの交流を反映しています
そんな様子を描いた黒沢明監督の映画「まあだだよ」が思い出されます
表紙カバーに文字が印刷されているのが薄く見えます
これは文庫本の8~11頁
素敵なセンスだこと、と思いましたら
カバーデザインはクラフトエヴィング商會の吉田篤弘、吉田浩美ご夫妻でした!
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