光文社
2013年2月 初版1刷発行
304頁
のべ43人もの介護を受ける高齢者を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺人と1件の傷害致死の容疑で起訴された〈彼〉
戦後犯罪史に残る凶悪犯に下された判決は死刑でした
殺すことで被害者と被害者の家族を救いました
僕がやっていたことは介護です
喪失の介護「ロスト・ケア」です
検察官・大友の取り調べに対し、そう嘯く〈彼〉
自らの行為は正しいと言い切ります
大友は、死刑判決が確定した後、ようやく〈彼〉の本当の目的に気づきます
〈彼〉が死んだとしても〈彼〉の物語は残ります
それを目の当たりにして、目を覚ました人々が少しでも良い方向にこの社会を、この世界を変える、それが〈彼〉の目的だったのです
ミステリーとしても楽しめますが、介護をめぐる社会状況を世に知らしめるものとしての価値が高い作品と思いました
また、殺人犯を焙り出す過程で『統計』が使われたのが新鮮でした
介護を描いた映画、ドラマ、小説は多いです
しかし「現実はこんなものじゃない」という声をよく聞きます
両親ともに早くに亡くなっており介護の経験がない自分
本書に描かれる介護の凄まじい現場に息が詰まりそうになりました
数年後か十数年後か、主人の介護が始まるのかもしれません
自らが介護される側にいるかもしれません
正直、現実はさらに過酷と言われても想像も出来ません
その頃には介護現場の状況が今より良くなっている、とは全く思えません…
葉真中さん初読
松山ケンイチさん主演の映画を知り読んでみました
どんな風に映像化されているのか興味津々です
介護の実情等色々読んでいて怖くなったり、不安になったり・・・な内容でしたね。
勉強になる処も一杯あって読む価値ある本だなーと思いました。
こにさんのご両親は早くにお亡くなりになられたんですね・・・。
寿命って、あまりに早いのも悲しいし、逆に介護が必要な状態での長生きも大変ですし・・・
介護に明るい未来がないのは確実で、本当に不安ばかりですよねぇ。
私は、母親が43年前に46歳で、父親が19年前に70歳で亡くなりました。
二人とも病気で、病院での看病はあったけど、当時は自宅で看取りは少なくて、病院で亡くなってそのまま葬儀場へ。
だから自宅での云々は未経験でね。
出来れば主人も自分もピンピンコロリで逝きたいわ~。
原作は未読ですが、映画は観ましたよ!
>ここまで介護に踏み込んだのは読んだことがなく
仰るように僕も映画を観てそれは強く感じました。
介護(認知症)映画は他にもいくつかありましたが、
この作品はその中でも秀逸な作品でした。
僕も両親が認知症でその苦労は経験してきたので。
特に映画では長澤まさみさんが一皮も二皮も剥けた演技で素晴らしかったです。
映画、益々観たくなりました。
斯波の言葉から、親の認知症や介護を知らない私は、ある意味幸せなのかも、とも思ってしまいました…。