★ベルの徒然なるままに★

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映画『嫌われ松子の一生』

2006年06月28日 | 映画鑑賞記
先々週のお話ですが、映画『嫌われ松子の一生』を見てきました。
劇場で予告編を見たときから、邦画にしては珍しいミュージカル調の作りが気になっていたんです。ただ、前評判はというと、結構、賛否両論が激しく別れる作品のようでしたね~。でも、やはり、人気映画なのか、公開から一ヶ月近く経っていたのに劇場は、いっぱいいっぱい! ほぼ満席でした。

気になるストリーですが。
この映画、予告編で見たときから、昭和中期くらいの舞台設定だと思っていたので、オープニングが「平成」だったので、ちょっとビックリしました。

平成13年(くらいだったかな?)。
ミュージシャンを夢見て、福岡から東京に出てきた、1人の若者・笙(配役:瑛太)。
けれでも、夢は実現せず、カノジョ(柴咲コウ)からも別れを告げられ、生きる目的すら失い、自堕落で投げやりな生活を送っていました。

そんな時に、福岡から父親(香川照之)が上京。父親の手には、骨壺が。父が言うには、家族には隠していたが、自分には30年前に絶縁した姉が居た・・・とのこと。30年近く音信不通だった姉でしたが、つい先日、東京のある河川敷で他殺死体で発見され・・・それで、じつの弟である、笙の父親の所に連絡が行ったとのこと。彼は、取り急ぎ、上京し、遺体を荼毘に付したものの、仕事があるので、もう福岡に帰らなくてはいけないのです。そのため、息子である笙に、殺された姉の住んでいたアパートの片付けをするように言いつけるのでした。

そんな事情があり、笙は嫌々ながらも、その存在すら知らなかった伯母のアパートを片付けに行くハメになりました。

で。
その伯母ことが、「松子」(中谷美紀)。享年53歳。そう、この映画のタイトルともなる主人公の松子なのでした。

笙が行った先のアパート。松子の部屋は・・・。有り得ないほど汚い・・・はっきり言ってゴミ屋敷。そのゴミ屋敷を掃除しながら、アパートの他の住人から、松子についての話を聞きます。が、評判は、すこぶる悪い物ばかり。松子はアパートの住人の中でも鼻つまみ者だったようです。そして、ろくな荷物すらないゴミだらけの部屋を片付けていくと・・・。中から出てきた、数少ないまともなものがありました。
大阪万博・太陽の塔のキーホルダーが付いたボストンバック。
成人式で晴れ着を着た松子の写真。
そして、光Genjiのポスター。
唯一ともいえる、これらのアイテムを見た笙は、「松子」という伯母は一体、どんな人生を歩んできた人なのだろう・・・なぜ、最後はこんなゴミ屋敷に住んでいたのだろう・・・なぜ、誰に、殺されたのだろう・・・と、松子の人生に思いを馳せるのです。
また、殺される直前に、壁に書き残した、「生まれてきて、すみません」という謎の言葉。

そこから、舞台は、昭和の中期にさかのぼり、松子の物語が始まります。

昭和22年、福岡の名家に生まれた松子。
彼女は成人し、中学の教師となります。生徒からも慕われる、歌の上手な教師だったのですが、修学旅行先で生徒が起こした窃盗事件のトラブルに巻き込まれ、教師を辞職。そして、家出するのでした。

家出した後は、作家志望の男(宮藤官九郎)と同棲をするのですが、貧乏な暮らしと男からの暴力の日々でした。そんなある日、男は、松子の目の前で電車に飛び込み自殺。

けれども、その後、松子は幸せを手に入れます。死んだ男のライバル作家(劇団ひとり)の愛人となるのでした。不倫関係ではあるものの、いつかは、妻となることを夢見、彼女は幸せでした。けれども、彼女との関係が奥さんにバレ・・・愛人からも捨てられます。

行き場を無くした彼女は、トルコ嬢(今で言うところのソープ嬢ですね)になり、元来の真面目で勤勉な性格を活かし、その道のお勉強に励み、風俗界でトップを極めるのでした。けれども、時代の流れか、風俗界では、熟練した風俗嬢より、素人チックな現役の女子学生たちが持てはやされるようになります。最早、熟練トルコ嬢のニーズはなくなり・・・松子はトルコ嬢としての職も失ってしまいます。時代は、ちょうど、オイルショックの時でした。

その後、行きずりの男(武田真治)と意気投合し、やはり、風俗関係で一儲けするのですが、彼女が体を張って稼いだお金を、男がすべて、若い恋人に貢いでいたことを知り、逆上します。そして、男をナイフでメッタ刺しで殺してしまうのでした。

自殺するつもりで上京した松子ですが、自殺は未遂に終わってしまいます。
そんな失意の松子に声をかけたのが、冴えない外見ではあるものの誠実な性格の床屋さん(荒川良々)。その床屋の男の所に転がり込むように同棲を始め、共に働き、ひとときの落ち着いた暮らしを体験するのです。けれども、そこに警察がやってきて・・・。殺人容疑で松子は逮捕されます。

そして、刑務所での服役生活が始まります。

刑務所で、美容師の資格を取り、刑期を終え、床屋の元に帰っていく松子。けれども、彼は、松子を待ってはいませんでした。結婚し、新しい家庭を築いていたのです。

松子は、1人、美容師として生きていきます。刑務所時代を共にした友人も出来、しばらくは、孤独ではあるものの、安定した生活でした。

けれども、あるヤクザの男に声をかけられたときから、また、彼女の人生は落ちていくことになります。中学教師時代に、窃盗事件を起こし、彼女を辞職に追い込んだ、張本人の男子生徒・龍(伊勢谷友介)。彼は成人してヤクザになっていたのでした。松子は元教え子の龍と恋人同士になり、極道の女としての人生を歩み始めます。
彼に言われるまま、ヤクザ達のお酒の相手をしたり、時には、体を売ったり。また、怪しげなモノの取引のお遣いをしたり。
そんな時、龍が警察に捕まります。
でも、彼女は、アパートを借り(ここが、後にゴミ屋敷となるアパートでした)、部屋を毎日掃除し、花を飾り、彼の帰りを待つのです。
そして、迎えた、龍の出所の日。彼女がせっかく迎えに行くものの、龍は彼女の元から逃げていきます。

それにショックを受けた松子は、もう、誰にも自分の人生に介入させないことを決意し、引きこもりになるのでした。アパートの住人とも挨拶もしない。お化粧もしない、お掃除もしない、お風呂にも入らない・・・。ただ、食べて、お酒を飲んで、テレビを見て、ボーとして。こうやって、いつかは死んでいくのね・・・と思っていたときに、ハマったのが、光Genji(^^;  コンサートに行きまくり、あげくの果てには、内海君に当てた、熱烈なラブレター(ファンレター)を出すのです。そのファンレターの凄いことと言ったら・・・。原稿用紙数百枚分はあるのではないかというくらいの分厚さ。ポストに入らないくらいでしたもの・笑。けれども、待てども待てどもお返事は来ず。益々引き籠もりな日々になり、やがて、精神を病み、精神科へと通うことになります。

そんなとき、病院で、昔、彼女と共に刑務所で服役し、出所後も友人として仲良く付き合っていた、AV女優(黒沢あすか)と再会。落ちぶれた松子を見かねた彼女は、自分の会社で美容師の仕事をしてくれ・・・と彼女に名刺を渡すのでした。

その名刺をもらった翌日。その名刺を握りしめて、松子は他殺死体として河原で発見されるのです・・・。

松子はどんな最期を迎えたのか・・・。それは、映画の最後の最後でちゃんと解りますよ。


とりあえず、ここまで書いてみても、
「一体、どんな人生やねん!!!???」
というほど、不幸のどん底でアウトローな人生を送った松子。彼女は、本当に幸せだったのだろうか・・・彼女の人生は一体何だったんだろうか・・・という気持ちになります。
けれども、こんなに不幸な物語ですが、映画自体がミュージカル調に作ってあるのと、随所随所におもしろ可笑しいギャグが散りばめてあるので、そんなシンミリとした物語ではないんですよ。ただ、ふとしたときに、その「おもしろ可笑しさ」や「ギャグ」が返って、寂しさや惨めさを強調させるなぁとは思いましたが。

そして、ひとつ気が付いたのは。この映画、どんな画面にも、必ず「花」が出てくるんですよ。貧しいときでも幸せなときでも、風俗嬢をしているときでも、孤独なときでも。そして、松子が殺人を犯した、その部屋にも。必ず、「花」が飾ってあります。
こんな過酷な人生の松子でしたが、ただただ、誰かに愛して欲しかっただけなんですよね。ごく普通の女の子のように、王子サマを夢見ていただけ・・・でも、決して叶えられることのなかった、その王子サマの夢への切望が、必ず画面上に出てくる「花」だったのではないかなぁと思いました。あのシーンシーンで登場する花は、松子の幸せへの願いの象徴、「女の子」であることの象徴だったのではないかなぁと思わずには居られませんでした。

そして。アパートの皆からは嫌われていた松子ですが、それまでの人生で彼女に関わってきた人たちは、皆、一様に松子を褒め称えるのです。人生とは、人から何を貰うかではなく、人に何をしてあげるかによって、その価値が決まる・・・。そういう意味では、松子は自分はボロボロになりながらも、周りの人たちには、精一杯尽くしてあげてきたのでは、希望を与えていたのでは・・・と。そう思うと、悲惨な彼女の人生も、意義のある物のように思えてきますし、だれもが松子を愛するだろうなぁと思いました。

とはいえ、相当にシュールな作品です。可笑しいんだけど、笑うに笑えないというかA^^; それでも、興味があるという人には、オススメかも知れません。が、気軽に見るには・・・重い作品かも知れませんね。私自身、こんなに重い作品とは思いませんでした~。予告編だと、もっとおもしろ可笑しい作品の印象を受けましたしね~。







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