★ベルの徒然なるままに★

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『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』藤木稟

2015年04月13日 | 小説・漫画・書籍
3月25日に発売でした、『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』。
シリーズ10巻目に当たる作品の新刊。



発売日当日に、本屋さんで平積みになっているのウハウハと嬉しく眺めつつ、購入。

すぐに読み終わっていたのですが、感想を書くのが遅くなってしまいました。
・・・いや、3月下旬からずっと、編み物とか編み物とか編み物とか・・・に夢中だったのでA^^;;


と、いう訳で。

遅ればせながら、『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』の感想をば☆



今回は、なんと、日本が舞台・・・とのことで。
もう読む前から、ワクワクしていたのです(≧▽≦)

っていうか、ずっと、このシリーズを読んでいて、奇跡調査官である平賀とロベルトが世界各地を回る度に、「いつか、日本には来ないのかなぁ?」、「来て欲しいなぁ」と思っていたものです。

平賀も、名前から分かるように、日系人で、日本語も分かるようですし。

いつかは、日本が舞台に・・・!と期待していたので、めちゃめちゃ嬉しかったです。


で。

この物語の舞台は、日本は熊本・天草。
歴史の授業などでも習う、天草四郎ゆかりの地で起こった奇跡。

天草にある無人島に、真夏に突如、雪が降り積もり、その天空に巨大な十字架が出現した・・・という奇跡。
また、その奇跡の現象が起こる二日ほど前。
ヨットで日本を目指していた海洋冒険家が、大型台風に巻き込まれ、死を覚悟したその時。
海上に現れた主イエスの姿に導かれ、その、無人島に流れ着いた・・・という不思議な出来事も起こっていたのです。
しかも、その冒険家は、島で黒髪の天使に逢ったと証言しています。



日本に住んでいる者なら、普通に考えても絶対にありえないと思う、7月の熊本での降雪&積雪。

更に、天空に現れた巨大十字架に、冒険家が目撃したという海の上のキリストの御姿。

しかも、それらは、しっかりと動画としても記録されている・・・。


政府から弾圧を受けながらも、決して信仰を捨てず、主を信じ続けた、隠れキリシタンの里。

それゆえに、神の祝福があったのか?

はたまた、何かを企む人為的なものか?

日本独特な思想・文化に戸惑いつつも、その真贋を見極めようとする平賀とロベルトの周りでは、奇跡のみならず、地元に伝わる妖怪伝説を彷彿とさせる怪奇現象も起こっていきます。
そして、遂には、人の死も・・・。



・・・というようなあらすじですね(*^^*)


やっぱり、日本が舞台だと嬉しいですね~。

平賀とロベルトが、関西空港に降り立ったシーンから、もう、ワクワクしちゃいました。

特に、私は、出身が山口県なので、九州は身近なのです。

子供の頃の修学旅行でも、天草などには行きましたし。
大人になってからも、熊本は、何度か足を運んでいます。

なので、平賀とロベルトの物語が、リアルに感じられて。
いつも以上にワクワクしましたです。

そして、今回のお話も、とても面白かったです~。

なんというか、やはり、日本が舞台ということもあって、今までのシリーズに登場していた教会や信仰、信者とは少し雰囲気が異なっていて。
信仰そのものも、とても日本的で。

それもまた、独特な感じでした。

そんな東洋色のあるキリスト教文化の中に、地元に伝わる妖怪、不知火や油すましまで絡んでくるから、読んでて怖い!!

なんだろう・・・今までのシリーズだと、オカルトチックな怖さがある物語も、結構ありましたよね。

でも、今回は、日本だからか、怪談チックな怖さというか。
いわゆる、日本古来の妖怪や幽霊の影を感じて。

単なる恐怖・・・というより、おどろおどろしさ、薄気味悪さを感じる怖さっていうのかな。

耳なし芳一とか、お岩さんとかの話を聞いてゾッとする、肝試しで墓地を回ってゾッとする(・・・いや、やったことないけど)、そういうタイプの「怖さ」が常にあった気がします。

ジャパニーズホラー?

という訳で。

これまでのシリーズとも、また、ひと味違った雰囲気を楽しめましたです。



で。

これは、あくまで、私の勝手な印象ですが。

日本が舞台という事もあり、ちょっと、番外編っぽい雰囲気も感じたかなぁ。


というのも。

前回の『月を呑む氷狼』では、シリーズ全体を通しての敵であるジュリア司祭の事や、また、平賀やロベルトは勿論、読者達にとっても目下の関心事、ローレンの件も、かなり詳しく色々分かってきましたよね。

なので、てっきり、今回も、その続きに何か進展があるのかな?と期待していた訳ですよ。

また、真夏にピンポイントで降る雪なんかも、「世界システム」を彷彿とさせましたし。

でもでも。
今回は、そっち関連の話は、一切絡んでこなかったからなぁ。

あ。

でも、一連の事件についてって、考えてみれば・・・。

『ラプラスの悪魔』で本格的に動き出し。
次の巻の『終末の聖母』では、あまり動きが無く。
そして、その次の巻の『月を呑む氷狼』では、一気にいろいろな事が分かったり・・・で。

もしかしたら、1巻おきに描かれるのかしらん?
でもでも、『終末の聖母』でも、ローレンの影がチラリズムはしていましたし、エピローグなんかでも、それに纏わるエピソードも出ていたけど。
今回は、全くと言って良いほど、出て来なかったからなぁ。

だから、余計に番外編っぽい感じがしたのですよね(*^^*)

もちろん、ローレンの事は色々と気になりますが、こういう、純粋な奇跡調査も、シリーズ初期のような雰囲気で大好きです。


そしてそして。

今回は、ちょっと、観光色も豊かだったかな?

天草にある実在の資料館等が登場し、そこをロベルトが訪ねたりもするのですよね~。

舞台が日本で色々と分かるだけに、より観光チックに感じたというか(^m^)
そういうのも、また、面白かったです。


それから、日本文化に戸惑う平賀&ロベルトの姿にも、思わずニヤリ。

っていうか、平賀って、名前からも、日本人っていうイメージが濃かったのです。

いや、もちろん、日系人とちゃんと書かれていますし、ドイツで育っているとのことなので、「日本人」ではないのは分かっていたのですが。
なんか、こう・・・日本人的なイメージを持ってました。(私が勝手に)

でも、実際には、日本にも、子供の頃に来ただけとのこと。
家では日本語を使っていたというけど、多分、私達のように、日本で生まれ日本で暮らしている者ほどは、日本語を操れない・・・みたいな感じかな。

という訳で、物語冒頭、今回は、日本での奇跡という事で、会派の枠を超えて、平賀が適任と判断された~とサウロ大司教から告げられた時は、平賀、焦ってましたものね(笑)

日本語も猛勉強する・・・と言ってましたし。
調査で一日中、日本語ばかりを見て居た時は、平賀の脳味噌、オーバーヒート起こしてましたし(笑)

そして、複数の言語を習得しているロベルトも、流石に、日本語は分からないようで。

言葉が通じないロベルト・・・というのも、シリーズ1作目以来じゃないかしらん?


椅子ではなく床に直接座る(厳密に言うと、床ではなく「畳」ですが。平賀も言ってたけど)のに、抵抗を覚えるロベルトの姿も面白い。

そんなロベルトに、畳を教えてあげたり、コタツの素晴らしさを語る平賀にも、またニヤリ。

平賀はよく、床に直接座ったり、寝転がったりしている・・・とのことですが、それは、日本のコタツ文化の影響だったんだ~とロベルトが悟るところも面白かったです。



それから。

日本文化の何が彼らを苦しめたかって!!!!!

連日の、豪華お刺身のお夕食(≧▽≦)


天草に滞在中は、教会の信徒さんの計らいに寄り、最寄りの民宿に宿泊することになった2人。

なんと言っても、漁港のある地域ですよ~。

そりゃ、おもてなし料理は、地元で獲れた新鮮なお魚を使った、お刺身ですよね~っ。

今は京都の山の中に住んでいますが、元々、海のある地域で生まれ、ずっと、海の近くで育ってた「我は海の子」の私なんかは、お刺身大好き、なんて羨ましい!と思う訳ですが。

お刺身を食べない文化の人達だと、それは・・・かな~り辛いと思う(笑)
めちゃめちゃ辛いよね。

連日連日のお刺身責めに、残すわけにもいかず苦労する2人。

「日系人神父の意地があります!」

と言って、頑張ってお刺身を食べる平賀。

本人たちの苦労を想うと、笑っちゃイケナイのですが、笑っちゃいました。

そっか~。

お刺身って、日本独特な食文化だったのですよね。普段、あまり意識してないけど。


そんな訳で。

日本ならではの文化に戸惑う2人の様子が見られるというのも、かなり貴重なのではないでしょうか。

この辺りも、今回のストーリーの見所でしょう☆



そしてそして。

彼らが調査していく内に、色々と分かって来る隠れキリシタンの歴史。

これも、色々と考えさせられるテーマでした。

他の国の事はよく分かりませんが、日本人の宗教観って、やっぱり、少し変わっていると思うのです。

仏教徒が多い・・・と言っても、法事やお葬式くらいから宗教行事ってしてない人が多いでしょうし。

そして、仏教徒でありながら、お正月は、神社に初詣に行くし。
結婚式も、神式やキリスト教式で挙げる場合も多い。

更には、ハロウィンやクリスマスも祝う(←まあ、ここら辺は、商業戦略もあるのでしょうが)。


そんな訳で、日本人の日常には、法事やお葬式、お正月の初詣、結婚式、クリスマス・・・等々、色んな宗教が普通に取り込まれちゃっているのですよね。

また、それに加え、日本には、八百万の神というのもありまして。

全てのものに神様が宿っているっていう考えもありますよね。


で。
これは、私の場合なのですが。

食べ物を粗末にしちゃいけないっていうのも。
もちろん、大切な食糧を無駄にすべきでは無いという考えもあるのでしょうが、私なんかは、その「勿体ない」という感覚って、単に「食糧を無駄にする」以上の意味合いを感じてしまうのですよね。
上手く言えないけど、食べ物にも神様が居て、それを粗末にすると罰が当たっちゃうような・・・?

物に対しても、それを単なる無機物とは考えられなくて。
まだ使えるのに捨ててしまったりするのは勿体ない、罰当たる・・・とか思っちゃう。

こういう感覚って、もしかしたら、全ての物に神様が宿っている・・・っていう考え方の一つなのではないかなぁと思うのですよ。

宗教上の神様を熱心に信仰している訳では無いのだけど、自分の心の中に「神様」が居て。
悪い事をすると、胸が痛んだり、罰が当たるかも~と思ってしまうのは、心の中に神様が居るからかなぁとか。

神道ではないけど、御祓いをして貰うと、清められたような気分になりますし、神社に行くと、手を清めた上で、手を合わせ、頭を下げる。

キリスト教徒ではないのだけど、教会を見学したりすると、厳粛な気持ちになる。

それから、クリスマスとかをお祝いしちゃったりも、ね。

そんな感じで、一つの宗教に捕らわれない、独特の宗教観があるような気がするのですよね。

私の場合は・・・ですが、そういう日本人って多くないかなぁ?



で。

今回の奇跡調査でも、そういう日本人独特な思想・文化が描かれていて、とても興味深かったのです。


幕府に弾圧され、仏教徒を装いながら信仰し続けた密儀のようなキリスト教。
宣教師も追放されて居なくなってしまった時代に、それは段々形を変え、日本独自の信仰として発展していった・・・というのも、日本ならではという感じで、なるほど~と思いました。


他国の文化を取り込み、自分達の合うように臨機応変に変化させていく・・・そういう日本ならではの感覚の面白さも感じましたです。


それから。

今回は平賀のルーツの国・日本ということで、平賀の活躍も大きいですっ!

いつも、ロベルトに助けられたりしていますが、今回は、平賀がロベルトのピンチを救います。

本当にロベルト、危なかったのですよ!
命の危機もですが、ロベルトのあの美しいお顔に傷が付いたら・・・と、読んでてヒヤヒヤしましたです。

そして、一人で勝手な行動をし、自ら危険に飛び込んでいったロベルトを平賀が叱る・・・という一面も。


あっ。
でも、いつも、ロベルトに助けられているように見える平賀だけど、よく考えてみたら、『ラプラスの悪魔』でも、ロベルトのピンチを救ってたっけ。

いやいや、でもでも、あれは、ロベルトも平賀たちに爆発の危機を伝えていた訳ですから、お互いに力を合わせピンチを切り抜けたって感じですし。

今回ほど、平賀単独でロベルトの危機を察知し、助けに走ったというエピソードも初めてなのでは??
逆は結構ありますがね(^m^)

そういうところも日本が舞台・・・ならではでしょうか?


という訳で。

いつもの奇跡調査とは、一味違った雰囲気があって、面白かった『原罪無き使徒達』。

凄く良かったです。


そして、早くも続きが楽しみです。


そういえば、本についていた帯によりますと。

この後、6月に、奇跡調査官の短編集が出るらしいですね。

そして、10月と、来年の2月に新刊が。

新刊ラッシュだそうです!


短編集といえば、ガラケーの時代に読んでいた、角川の「小説sari sari」。
そこで連載されていた、平賀の弟・良太の話も大変気になります。

そういえば、『終末の聖母』以降、良太の事って出て来ないしなぁ。どうなったんだろ・・・・。


短編集も楽しみですし、新刊も楽しみですね。

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