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★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

『悪の教典<下>』

2010年09月24日 | 小説・漫画・書籍
先月の日記に書きましたが。
『悪の教典』というミステリを読んでまして。

ここの所、家であまり本を読んでいなかったので、なかなか進んでいませんでしたが、先日、下巻を読み終えました。

ハイ、IQが高く好青年な高校教師が、実は、物凄い殺人鬼でして。
社会的な信用ある姿とは、裏の顔で、どんどん悪事を重ねていくというピカレスクロマン。
ラストまで、読みました。

因みに、上巻の感想はこちら
↓↓↓↓
8月23日『悪の教典』

ラストまで読んだ感想というと、物凄く怖かったです~。

ただ、ネットでも言われていた通り、上巻と下巻では、作品の雰囲気も物語性もガラッと変わってしまいました。

上巻では、生徒からも先生からも非常に信頼を置かれている好青年な高校教師が、その高いIQを駆使して、淡々と悪事を重ねていく・・・・・・という物語で。
世間では「善人」と見られている人の、裏の姿とのギャップが、物凄く怖かったり、また、人を殺すことに、何の躊躇いも、罪悪感も感じない主人公にゾッとしたり。
はたまた、そんな人間が、教師をしていて、周りからも信用されているところも怖いしで。
とにかく、ジワリジワリと来る静かな恐怖というのが感じられたのですが。

下巻は、一転して、「殺戮の夜編」・・・・・・とでも言いましょうか?
なんか、映画『13日の金曜日』の迫り来るジェイソンのような・・・ホラー映画的恐怖でした。

上巻と下巻の物語展開のギャップは、否めませんでしたです(^^;


物語としてはですね~。
上巻で、自分が教師生活において「邪魔」と判断した人間を、どんどん消していく、主人公・蓮実聖司。

ある生徒は退学に追い込まれ。
ある者は殺され。
またある者は、重体になったり。
はたまた、ある者は、無実の罪で、逮捕されたり。
・・・・・・・と。

でも、あまり色々やり過ぎちゃったせいか、蓮実先生のコトを、おかしいと思い始める生徒が出てくるのですよね。

頭が良くて、ちょっと反抗的な面のあるケイスケ・・・あ、違った、圭介という男子生徒。
学校で絶大な人気をもってる蓮実に対し、常に、批判的な目を向けている・・・という感じでしょうか?
だからこそ、彼の行動に疑問を持ち、蓮実の過去を調べたりしはじめる訳ですが。
でも、結局、それが命取りになって、圭介は蓮実に殺されてしまいます。

がしかし。
圭介を殺したことこそが、蓮実にとっても命取りになってしまったというか。

蓮実が、肉体関係を持っていた、女子生徒が居たわけですが。
その女子生徒が、嫉妬心から蓮実の携帯を見て、殺した圭介との関わりに気付いちゃうのですよね。

とはいえ、その女生徒は、蓮実にゾッコン的に惚れているので、テキトーに言い逃れれば、きっと、それ以上は疑問に思わなかったでしょうに。

確実に安全を狙って、恋人(というか、単に性欲処理相手)にしていした、その女子生徒まで、殺すことに決めちゃうのですよ。


んで。
夏休み。

文化祭準備のために、1クラスにつき1日だけ、学校に泊まって良い日・・・というのがあるのですが。
その時に、その女子生徒を飛び降り自殺に見せかける為、学校の屋上から突き落とすのですよ。
でも、それを、別の女子生徒に見られ、突発的に、そっちの子も殺し。

死体の処分、及び、つじつま合わせの話作りに、暫し困る。

そんな時、失踪した圭介(実際には、蓮実が既に殺して、死体は山に埋めている)のことを疑問に思い、蓮実の過去について調べていそうな生徒2人のヒソヒソ話を偶然キャッチ!
でも、声から、その生徒が誰なのか、判別付かず。

どうしたものかと、悩んだあげく。

木は森に隠せ・・・の法則で、死体は死体の山に隠せ・・・ということを思いつきます。

つまり、その日、学校に泊まっている、自分の担任のクラスの子、全員の皆殺しを決意するのです。

もともと、学校にはケータイを使ったカンニング防止のための、ジャマー電波の装置があり(電波法違反です)、それを使って、まず、ケータイを使用不可にし。
罪を被せた上で、自殺に見せかけて殺す犯人役に仕立てるため、同僚教師を言葉巧みに呼び出し、監禁。
その教師の私物である、猟銃を持って、宿直の教師などを殺した上で、校内放送で、生徒達に呼びかけます。

「この学校に猟銃を持った、不審者が侵入した。皆、焦らずに、屋上に逃げてくれ。すぐに助けを呼ぶ」

と。

この放送を聴いた生徒達の反応はそれぞれで。

蓮実を全面的に信用する親衛隊的女生徒達は、彼を信じて屋上へ向かいます。

はたまた、不審者がいるにも関わらず、そんな校内放送をすること自体がおかしい、先生は信用できない・・・と思った生徒達は、バリケードを作って、教室に籠城。

また、何人かの生徒は、犯人の隙をついて、外に逃げ出し、助けを呼ぶという決断を。

またまた、アーチェリー全国大会の腕前を持つ子は、その腕を信じて、犯人と対峙する決断を。

などなど。

38人の生徒達は、それぞれ、バラバラな行動を取るのですが。
蓮実が張り巡らした罠、計画によって、結局、学校から脱出すること叶わず、どんどん殺されていくのでした・・・・・・・・・。


という。
ホント、13日の金曜日のジェイソンから逃げまどう人々のような状況になり。
下巻のほとんどは、この、蓮実による殺戮の一夜がメインです。

どれだけ知力を尽くし、犯人に立ち向かおうとしても、一人、また一人と殺されていく様子は、本当に怖かったです。

怖かったけど・・・・・・・。

でも、やっぱり、上巻との雰囲気の違いが、あまりにもありすぎて、ちょっと気になっちゃった・・・かな。


いや、なんていうか。

この主人公の蓮実は、「非常にIQが高い」という設定なのですが。
もう、殺戮の夜に入った段階で、果たして、そんなにIQの高い人物がやるようなこととは思えなくなったというか、なんというか。

本当に頭のいい人だったら、こんな、1クラス全員殺すなんて、野蛮で無茶なことではなく、もっと違うクリーンな方法で、窮地から脱していたような気がしますね。

あとは、やっぱり、高校生が38人も居たら。
全員殺すって、無理だと思うのですが・・・。
結構、蓮実は、偶然に助けられるシーンも多く、もし、現実だったら、被害者は出たとしても、大半の生徒はなんとか逃げ延びれたりするのではないかなぁ~と思うのですよね。
そこらへんは、ちょっと、現実味にかけるというか。
上巻で、とても頭の良い悪人だっただけに、下巻でも、もっと、スマートに悪事をやって欲しかったかなぁ~と。
うん。
最初は格好いい悪役だと思ってたけど、下巻では、ただの殺人鬼、つか、もう、ジェイソンみたいだったもんなぁ。

そして、ラストの持っていき方も、安易なような。
ネタバレになってはいけないので、ラストの詳しいオチは、避けますが・・・。

いや、色々と、最後に明かされる衝撃な展開は面白かったですし、全体を通して、ホラー感は高かったですよ(^^)

でも、蓮実的には、ラストで、もう、次のゲームに入っている・・・・・・というのは、無理がありそうな気がしました。

そういえば。
なぜ、蓮実が、そんなに教師の職に固執するのか。
上巻では、分からなかったのですが、下巻では、ちゃんと描かれていました。

難関国立大に行った後、外国の大学に行き、外国の有名な投資系銀行に就職していたのに、なぜ、教師に転職?という謎は、ちゃんと下巻で明かされるのですが。
なんか、分かるような分からないような・・・。
やっぱり、彼は、学校という閉鎖的な空間で、「王様」になりたかったのかな?
他人を自分の意のままに操ったり、動かしたりすることに快感を感じていたのかな~とも思うのですが。
その心理は、共感できなかったかな~。
まあ、別に、私自身、王様になりたいとかいう願望無いしね~A^^;;


わたし的には、下巻より上巻の方が面白かったと思います。
でも、上巻でジワリジワリとくる恐怖が、下巻では、全面的に開放されるというか、張りつめていた静かに恐怖が爆発し、パニック的な恐怖に変貌している様は、面白いと思います。

全体を読み終えて、ミステリというより、ホラー小説だったなぁと思いました。
久しぶりに、「怖い」と思える本を読んだと思いますが、こういう怖い話は、実は、大好きだったりする私でした。