おぉきに。

気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

五人の名探偵 新本格ミステリ30周年記念トークショー(第二部)

2017-09-12 13:40:24 | イベントレポ
休憩中、先生方五人分のマイクの調子が悪く、書店員さんがいっぱいマイク持ってきてチェックしてはるけど、……遥か昔の高校時代に放送部員だったので言わせていただければ、マイク5本をひとつのテーブルに寄せたらそらこんがらがるしハウリングもしますって……。

試行錯誤の結果、マイクはなんとか生きてる3本をまわすということになりました。ホスト役の綾辻先生はマイク固定で。
綾:(客席に)お聞き苦しいこともあるかと思いますが温かい目でお願いします。

と言うことで、第二部スタートです。

まず綾辻・有栖川両先生が再度登壇されて、それから「京大のミス研仲間です」という綾辻先生の呼び込みでお一人ずつ登場されました法月先生、我孫子先生、麻耶先生。
……相変わらず麻耶先生、俳優でもおかしくないくらいの男前さんでいらっしゃいます……。

綾:ではまず一人ずつ自己紹介を…。というか…。まずは法月くんから。

法:デビューのきっかけはですね…、
綾:宇山さんが、「あとに続くものはいないのか?」って。
法:乱歩賞に応募したのを宇山さんに読んでいただいて「書き直したら」って言われて。それが87年9月。そのとき就活してて、銀行に入って。売り手市場だったから内定拘束っていうのがあって、8月末から9月初めにかけて。六甲山とか箱根の山の中とかに連れて行かれました(会場笑)
それで銀行に入ったけど、ずっと書いていて。昭和63年10月に『密閉教室』でデビューして。(銀行の)仕事には向いてないしつらかった…。
デビュー前の我孫子くんが歩いて行けるところに住んでて、「まだ銀行辞めないのか、小野さん怒ってるぞ」って言われました(笑)
宇山さんから早く次のを書くように言われてそれが『雪密室』で、清水の舞台から飛び降りる気持ちで銀行を辞めて、辞めて松江に半年くらい帰ったんです。それで二作目書いて何とかなりそうと思って京都に帰ってきた。

我:綾辻さんと一緒に磯田さんのマネジメント会社にお世話になりながら原稿書いて売り込みしてました。
同じく宇山さん経由で。後輩だったんですよね。
綾:僕が留年して五回生だったのでミス研に入ってきた我孫子くんと会えたんですよね。留年してなければ会ってない。下宿も近くて。(94年の)『かまいたちの夜』ね。(みけねこ注。すみません、メモ取れてないんですここらへん……すみませんすみません)

麻:僕はみなさんのようなドラマティックな話もなく。《蒼鴉城》に中編を書いて宇山さんの目に留まって、それを長編に書き直して。
大学に入った時にはもう綾辻さんはデビューされてたし、法月さんも。創元からは有栖川さんがデビューされてて、流れとしてはもう誰がデビューしてもおかしくない流れでした。
綾:『翼ある闇』は侃々諤々だったねえ。
麻:ですね。一作出たからもういいやって思ってました。学生時代の記念に出すって感じで。まさか今まで(作家)やってるとは。
普通に就職しようと。我孫子さんが顧問で法月さんは銀行の愚痴ばっかりで、「こんな人達にはなるまい」と思ってました(会場爆笑)

綾:宇山さん、新人を出すのが楽しくてしょうがなかったからねえ。若い人で人生狂わされた人たくさんいたと思うよ。

麻:やりたいようにやってきましたから、(人生)やり直したくないです。バッドエンドになりそう(笑)

有:鮎川賞のパーティーで麻耶さんに「卒業できた?」って訊いたら「できました」って。若くてまだ大学生だった。

綾:我孫子くんは大学……、

我:追い出されました(笑)

綾:30年近く経ってもこうして京都に住んでて仲が良いって珍しいですよね。
……ワセミス、すごい仲悪いんですよ(会場爆笑)

法:鮎川賞の第一回目かその次の年だったかのパーティーで、僕ら関西ですから東京のミステリマニアの集まりには構えて行ったんですね。
戸川さんのご実家に二十代の若造が集まって徹夜で延々ミステリの話しして、『五十円玉二十枚の謎』という本になったり。

綾:九十年代初めに、1960年代生まれの若者が一つ所に集まってミステリを語る熱気がありましたね。

綾:新本格30周年ということで、30年で印象深かったことは何ですか?被らないように腹が立ったことでも(会場笑)

我:自分では波風なく、大ヒットもなく、平穏に……。かまいたちがヒットするとは思ってなかった。予想外で、字を読むゲームはヒットしないと思ってた。
売れてない本の方が可愛い。かまいたちはほっといてもいいです。あんまり可愛くない。ヒットして親孝行な作品。

綾:一番好きな自分の作品って何?単行本でも。

麻:『メルカトルと美袋のための殺人』かな。思ってるように書けなくて…デビュー前からのも入ってるんで、十年くらいの間の短編集です。

綾:娘さん、今どうしてるの?

麻:司法試験受けるって、検事になりたいって言ってます。……ぜんぶウソですよ(笑)

我:一番好きなのは『狩人は都を駆ける』。意外に良く出来たけど、意外と売れなかった(笑)
ダメな子ほど可愛いってさっきの話で、『ディプロトドンティア・マクロプス』カンガルーが巨大化したり(笑)、探偵役が気に入ってます。
これはミス研に入ってちゃんと字で書いた中編で120枚くらい。のちに長編にしたもので、学生時代からの付き合いです。

綾:『ディプロトドンティア・マクロプス』の元になったものをミス研で読んだときに、法月くんたちと「凄い才能だ!」って、内輪ですごい盛り上がって、本になるときに「とうとう出るぞ!」って言ってたんですが、読者はスルーしちゃって(笑)
今、書店さんがヒットを仕掛けることもあるし、大垣書店さんどうですか?京都だし、ハートウォーミングストーリーだし(会場爆笑)


綾:…(京大ミス研の内輪話が多いせいか、少し後ろに引いておられる有栖川先生の腕をぽんとタッチして)ごめんね、有栖さん(苦笑)

法:一番印象深いのは、『頼子のために』ですね。学生時代、四回生のときに《蒼鴉城》に書いたのが元になってて、中編に伸ばしたんです。これが出たとき、いろんな意味で「やっと一人前になったなあ」と思ったんですよね。思い出深い作品です。
今年の年末に新装版が出るのでよろしくお願いします。

綾:有栖さんは同志社のミス研で、黒崎さんとか白峰さんとかもいて。どんな活動だったの?

有:京大のミス研の《蒼鴉城》みたいな、犯人当てとか、創作にかける情熱とか、京大ほどじゃなかったですよ。普通しませんよ、しょせん読書サークルなんやから。

綾:京大はね…、たまたまですよ、小野さんや法月くんや我孫子くんがいて麻耶くんもいて、そういえば巽(昌章)さんもいましたね。
同志社のミス研もまだありますよね。

有:一度なくなったんですがまた復活して、《カメレオン》も続いていて、一度断絶してるんですがOBということにしてくれて。正直嬉しいです。
「自分の作品で一番好きなもの」なんて、よくそんなバカげた質問するなと思ってたんですが
綾:悪かったな!(会場爆笑)
有:そしたらみんなスラスラ答えてて(笑)。
好きかというより……、『乱鴉の島』は、思った通りに書けた作品ですね。最後、ここまで書けた、と。動機とかロジックとか地味だし、「俺しか分からんか」と思ってます(笑)。「間違いなく俺の書いた小説やな」と。
綾:これ、連載だったんだよね?
有:そう。けっこう褒めてくれた人もいたし、分からん人にはわからんだろうと。自分の書いた中でも、特別な感じです。

有:で、綾辻さんは言えるんですか?自分で一番好きな作品って。

綾:『暗黒館』。これは決めてる。自分でも本当に好き。ただ、今日は『十角館』って言う(笑)



綾:『七人の名探偵』これは講談社さんが編集したアンソロジーで、今日のこの五人に、東京の歌野さんと山口さんの七人。
これについて聞いていきましょうか。じゃあ麻耶くんから。

麻:名探偵がテーマと聞いて、デビュー時からの付き合いのメルカトルでいこうかな、と。何も考えずに書いた方がいいかなと思って書いたらあんな風に(笑)

我:名探偵ってことで、困った、みんな名探偵じゃないし。割と凡人で、かろうじて人形シリーズの鞠夫くんかな…人間離れしてるけど、ていうか人間じゃないし(笑)
名探偵を出さずに名探偵を書く。という変化球で。
これ、ぜんぶ読んだんですが、30年ってみんなベテランで、五十越えてて。
綾:(麻耶先生に)五十越えた?
麻:まだ越えてないです!(笑)
我:そういう人達の作品読んでる気がしない。みんな若い。
綾:ハッキリ言って反則だよね。みんなそんなに変わってない。
我:不思議な仕上がりで、「あの人たちと一緒に載るんだ」という気持ち。

法:僕は、法月綸太郎で書いてくださいと言われて。五年ぶりだったんで、よく覚えてないんですよ(笑)。思い出しながら書きました。
最初はもたついたかな?と思ったけど、まあ通常営業で、ここになっちゃうのかな?と。

有:私は最初から通常営業でいこうと。講談社からなので火村シリーズにしよう、プレーンな感じでいこうと。
みんな自分の持ち味を存分に出してて、昔と今とでは変わったものももちろろんあるけど、読者に届けたいものは一緒なんですよね。
(綾辻先生に)「ぬえ」って何?
綾:京極さんの、大正時代からの新作の予告で幻の犯人当て?
有:「ぬえ」をローマ字にしてみたり、40度傾けてみたり(笑)…すると、「宇山」になるんですよね。
綾:本当?!

綾:デビューの遅い順に並べたら、なかなか面白いアンソロジーになりました。

綾:作家が集まると、ひとこと喋るだけで(時間的に)終わっちゃう(笑)
最後に、何か。
まだ引退しない?

麻:したいです。100万部くらい売れたら(会場爆笑)

綾:有栖さん以外はノロノロと書き続けていくことと思います。同志社の作風なんですかねえ、京大は全然ダメ。京大(ミス研)は他に円居くん、早坂くん、大山くんも。



ここでトークショーはタイムアップ。(というかわたしのメモがココで終わってまして……)

先生方こんな仲が良いから話が弾んでメモ取り追いつかなかった……(涙)
抜けてるキーワードやお名前がいっぱいあると思います。すみません……。

続いて、『十角館の殺人 限定愛蔵版』のサイン本を、綾辻先生みずから手渡し、というドキドキタイムw
とうぜん緊張しまくってるわたしは、「30周年おめでとうございます」を言うのがやっとでした……。

300人が詰めかけたトークショーは、あっという間に終演。
15時始まりだったんですが、14時開始でもよかったのに…というくらい時間が足りないよあれ!もっと先生方を見て、お話を聴いていたかったです。

ともあれ、楽しゅうございました。

先生方、お疲れ様でした。

ミステリの話はやっぱり楽しい!新本格、大好きです!