以下は、森達也公式ウェブサイトより転載。
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■巻頭コラム No.108
1月14日、昨年(2009年)起きた殺人事件の認知件数を、警察庁は発表した。その総数は1097件。これまでの戦後最小記録だった2007年の1199件をさらに下回った。
暴行や傷害、恐喝など、粗暴犯も含めての刑法犯全体も、前年比6.3%減の約170万3千件。七年連続の減少だ。さらに殺人事件の検挙率も、前年より2.7ポイント上昇して98.1%となった。これは戦後三番目に高い記録だ。
警察庁のこの発表から三週間ほどが過ぎた2月6日、内閣府は死刑制度に関する世論調査の結果を発表した。死刑制度を容認する回答は、前回調査(04年)の際の数値を4.2ポイント上回って、過去最高である85.6%を記録した。廃止すべきだとの意見を持つ人は、前回から0.3ポイント減って5.7%。存置を支持する理由の上位三つは、「被害者や家族の気持ちがおさまらない」、「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」、そして「廃止すれば凶悪犯罪が増える」だった。
85.6%が死刑支持というデータはすごい。たぶん世界でもトップクラス。そして治安の良さもトップクラス。2002年度版の犯罪白書によれば、人口10万人あたりの年間における殺人発生数は、アメリカが5・5件でフランスが3・7件、ドイツは3・5件でイギリスは2・9件、そして日本は1・2件だ(ただし、警察庁がまとめる日本の殺人事件には予備や未遂に一家心中まで含まれているから、実質は1.2の半分強の数値と推定される。つまり0.6)。
世界的にも最高の治安水準を保ちながら、体感治安の悪さは世界のトップクラス。つまり被害者感情が飽和している。その帰結として厳罰化と死刑存置への希求が高揚する。おそらくこのパーセンテージも世界のトップクラス。不思議な国だ。
2010.2.11. 森達也
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次は、アムネスティ・インターナショナルより転載。
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モンゴルが死刑執行を停止、大統領が死刑廃止を提案
日付: 木曜日, 2010-01-14
モンゴルのツァキア・エルベグドリ大統領は、1月14日、議会に向けて演説し、民主国家としてのモンゴルは死刑の執行を停止すると宣言しました。
その前日13日がモンゴルの民主憲法制定18周年にあたり、今回の演説は、民主制樹立を記念してのものでした。大統領は就任7カ月にわたって死刑の執行をしなかったことを公にし、今後、憲法上の生きる権利を保障するために、死刑を執行しないと宣言したものです。
大統領は、執行停止の主な理由として、民主国家としての態度と、誤判の可能性が排除できないことなどに触れています。任期中にいくつかの執行命令の判断を迫られたことを告白していますが、その経験にたって、国は死刑の名の下に生きる権利を侵害してはならない、と断言しました。
東アジア地域の中で、韓国、台湾に続きモンゴルが死刑執行停止を明らかにしたことにより、今後、日本でも、死刑執行停止の方針を公にすることが望まれます。
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次もアムネスティ・インターナショナルより転載。
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内閣府が「死刑制度に対する意識」の世論調査を公表、存置派が増加?
日付: 土曜日, 2010-02-06
2月6日、内閣府は「死刑制度に対する意識」の世論調査(2009年11月26日~12月6日)の結果を公表しました。これによると、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合が5.7%、「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が85.6%となり、前回(2004年12月)より「死刑存置派」が増えた(81.4%->85.6%)としています。
しかし、この調査の設問は、以下のようなものです。
「死刑制度に関して,このような意見がありますが,あなたはどちらの意見に賛成ですか。
(ア)どんな場合でも死刑は廃止すべきである
(イ)場合によっては死刑もやむを得ない
わからない・一概に言えない」
これでは、「将来死刑を廃止してもよい」とか、「死刑は徐々に減らしていくべきだ」とか、「死刑に代替する刑があれば廃止してもよい」と考えている「条件付き死刑廃止派」も、(イ)の「死刑存置派」に分類されてしまいます。設問自体に問題があります。
「設問が不適切でも経時的な変化は分かる」という意見もあり、内閣府やこの調査を報じたマスコミもそのように考えているのでしょう。そのような立場から見ると、この調査によって「分からない・一概に言えない」が減り、その分「死刑存置派」が増えたという結論が導かれそうです。
しかし、不適切な設問を前提とした調査では、経時的変化にも計測不可能な様々な要素が影響してきます。内閣府のこの調査からは、「厳罰を求める風潮が市民の間にも強まっている」ということ以上には、死刑について何か意味のある結論は導けるものではないと思われます。
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公的な殺人を、日本人はいつまで続けるのだろう?
モンゴルでは、止めることを選択した。
日本でも早くやめるべき、と私は思う。
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■巻頭コラム No.108
1月14日、昨年(2009年)起きた殺人事件の認知件数を、警察庁は発表した。その総数は1097件。これまでの戦後最小記録だった2007年の1199件をさらに下回った。
暴行や傷害、恐喝など、粗暴犯も含めての刑法犯全体も、前年比6.3%減の約170万3千件。七年連続の減少だ。さらに殺人事件の検挙率も、前年より2.7ポイント上昇して98.1%となった。これは戦後三番目に高い記録だ。
警察庁のこの発表から三週間ほどが過ぎた2月6日、内閣府は死刑制度に関する世論調査の結果を発表した。死刑制度を容認する回答は、前回調査(04年)の際の数値を4.2ポイント上回って、過去最高である85.6%を記録した。廃止すべきだとの意見を持つ人は、前回から0.3ポイント減って5.7%。存置を支持する理由の上位三つは、「被害者や家族の気持ちがおさまらない」、「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」、そして「廃止すれば凶悪犯罪が増える」だった。
85.6%が死刑支持というデータはすごい。たぶん世界でもトップクラス。そして治安の良さもトップクラス。2002年度版の犯罪白書によれば、人口10万人あたりの年間における殺人発生数は、アメリカが5・5件でフランスが3・7件、ドイツは3・5件でイギリスは2・9件、そして日本は1・2件だ(ただし、警察庁がまとめる日本の殺人事件には予備や未遂に一家心中まで含まれているから、実質は1.2の半分強の数値と推定される。つまり0.6)。
世界的にも最高の治安水準を保ちながら、体感治安の悪さは世界のトップクラス。つまり被害者感情が飽和している。その帰結として厳罰化と死刑存置への希求が高揚する。おそらくこのパーセンテージも世界のトップクラス。不思議な国だ。
2010.2.11. 森達也
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次は、アムネスティ・インターナショナルより転載。
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モンゴルが死刑執行を停止、大統領が死刑廃止を提案
日付: 木曜日, 2010-01-14
モンゴルのツァキア・エルベグドリ大統領は、1月14日、議会に向けて演説し、民主国家としてのモンゴルは死刑の執行を停止すると宣言しました。
その前日13日がモンゴルの民主憲法制定18周年にあたり、今回の演説は、民主制樹立を記念してのものでした。大統領は就任7カ月にわたって死刑の執行をしなかったことを公にし、今後、憲法上の生きる権利を保障するために、死刑を執行しないと宣言したものです。
大統領は、執行停止の主な理由として、民主国家としての態度と、誤判の可能性が排除できないことなどに触れています。任期中にいくつかの執行命令の判断を迫られたことを告白していますが、その経験にたって、国は死刑の名の下に生きる権利を侵害してはならない、と断言しました。
東アジア地域の中で、韓国、台湾に続きモンゴルが死刑執行停止を明らかにしたことにより、今後、日本でも、死刑執行停止の方針を公にすることが望まれます。
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次もアムネスティ・インターナショナルより転載。
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内閣府が「死刑制度に対する意識」の世論調査を公表、存置派が増加?
日付: 土曜日, 2010-02-06
2月6日、内閣府は「死刑制度に対する意識」の世論調査(2009年11月26日~12月6日)の結果を公表しました。これによると、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合が5.7%、「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が85.6%となり、前回(2004年12月)より「死刑存置派」が増えた(81.4%->85.6%)としています。
しかし、この調査の設問は、以下のようなものです。
「死刑制度に関して,このような意見がありますが,あなたはどちらの意見に賛成ですか。
(ア)どんな場合でも死刑は廃止すべきである
(イ)場合によっては死刑もやむを得ない
わからない・一概に言えない」
これでは、「将来死刑を廃止してもよい」とか、「死刑は徐々に減らしていくべきだ」とか、「死刑に代替する刑があれば廃止してもよい」と考えている「条件付き死刑廃止派」も、(イ)の「死刑存置派」に分類されてしまいます。設問自体に問題があります。
「設問が不適切でも経時的な変化は分かる」という意見もあり、内閣府やこの調査を報じたマスコミもそのように考えているのでしょう。そのような立場から見ると、この調査によって「分からない・一概に言えない」が減り、その分「死刑存置派」が増えたという結論が導かれそうです。
しかし、不適切な設問を前提とした調査では、経時的変化にも計測不可能な様々な要素が影響してきます。内閣府のこの調査からは、「厳罰を求める風潮が市民の間にも強まっている」ということ以上には、死刑について何か意味のある結論は導けるものではないと思われます。
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公的な殺人を、日本人はいつまで続けるのだろう?
モンゴルでは、止めることを選択した。
日本でも早くやめるべき、と私は思う。