以下は愛媛新聞の社説。
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特集社説2010年12月07日(火)付 愛媛新聞
諫早湾干拓高裁判決 もはや開門は避けられない
動きだしたら止まらない公共工事の代表格である長崎県の諫早湾干拓。司法の答えは二審も「門を開けよ」だ。
沿岸の漁業者たちが干拓地と海を仕切る潮受け堤防の撤去などを国に求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁はきのう、3年間の猶予を設けた上で堤防にある排水門を5年間常時開けるよう命じた。
堤防の締め切りと漁業被害との因果関係を一部認めた2年前の佐賀地裁に続く、極めてまっとうな判決といえる。さらに注目すべき点がある。
地裁は干拓地への営農と漁業権のどちらが優先するか、公益性の観点で比較して開門の結論を導いた。これに対し高裁は「営農に堤防閉め切りが必要不可欠とはいえず、漁業権の侵害状態は違法だ」とまで言い切っている。国が主張する防災上の懸念は「やむを得ない場合に門を閉じることで防災機能を確保できる」として完全に退けている。
行政の不作為への司法の戒めとも受け取れよう。1997年に堤防が閉め切られて以降、大規模な赤潮発生、アサリ漁やタイラギの漁などへの被害は再三指摘されてきた。過去の裁判や公害調停で開門調査の必要性が何度も求められたにもかかわらず、国はまともに応じてこなかった。
問題の発端が堤防完成前の環境データの不十分さにあることは明白だ。中長期の調査データがない限り、潮の流れや水質の変化を正しく検証はできない。強引に進めた公共事業の代償は大きすぎる。
当然、開門には賛否両論ある。すでに農地には41の法人と個人が入植し、国内有数の大規模農業が軌道に乗り始めている。開門によって塩害などの影響が出ることになれば新たな「国策の犠牲者」を生むことになってしまう。
利害調整の役割を果たすべきは政治であるはずだ。決着の先送りを重ね、事業そのものが利権化し、完成後も地域が対立し続ける状況を招いた責任は限りなく重い。
自民党政権下に種がまかれたことだが、政権交代後も展望は描き切れていない。今年4月に政府・与党検討委員会が「開門調査が適当」とする報告書をまとめたが、農相交代が相次ぎ、姿勢も一貫性を欠いている。民主党は野党時代に開門を求めてきた事実を忘れてはなるまい。
政府は来春にもまとまる有明海の環境影響評価(アセスメント)の結果を待って判断する方針だが、今後は漁業にも農業にも誠実に対応すべきなのはいうまでもない。営農や災害に関する代替工事を早急に練り上げるべきだ。
もはや開門は避けられない。かつて干拓事業批判の先頭に立っていたのは、ほかでもない菅直人首相である。上告した場合には、以前の主張との整合性を問われる。
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う~ん、地方の新聞にはまだジャーンリズムが生きているなあ。
私が付け加えることはほとんどないよ。
自民愛国政権がズタボロにした日本の国土を、民主党政権は、元に戻さなければならない。
控訴なんて、もってのほかだ。
もし本当に、政権が交代したのならね。
もちろん、国策の被害者である農家への補償は、十分におこなわなければならない。
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特集社説2010年12月07日(火)付 愛媛新聞
諫早湾干拓高裁判決 もはや開門は避けられない
動きだしたら止まらない公共工事の代表格である長崎県の諫早湾干拓。司法の答えは二審も「門を開けよ」だ。
沿岸の漁業者たちが干拓地と海を仕切る潮受け堤防の撤去などを国に求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁はきのう、3年間の猶予を設けた上で堤防にある排水門を5年間常時開けるよう命じた。
堤防の締め切りと漁業被害との因果関係を一部認めた2年前の佐賀地裁に続く、極めてまっとうな判決といえる。さらに注目すべき点がある。
地裁は干拓地への営農と漁業権のどちらが優先するか、公益性の観点で比較して開門の結論を導いた。これに対し高裁は「営農に堤防閉め切りが必要不可欠とはいえず、漁業権の侵害状態は違法だ」とまで言い切っている。国が主張する防災上の懸念は「やむを得ない場合に門を閉じることで防災機能を確保できる」として完全に退けている。
行政の不作為への司法の戒めとも受け取れよう。1997年に堤防が閉め切られて以降、大規模な赤潮発生、アサリ漁やタイラギの漁などへの被害は再三指摘されてきた。過去の裁判や公害調停で開門調査の必要性が何度も求められたにもかかわらず、国はまともに応じてこなかった。
問題の発端が堤防完成前の環境データの不十分さにあることは明白だ。中長期の調査データがない限り、潮の流れや水質の変化を正しく検証はできない。強引に進めた公共事業の代償は大きすぎる。
当然、開門には賛否両論ある。すでに農地には41の法人と個人が入植し、国内有数の大規模農業が軌道に乗り始めている。開門によって塩害などの影響が出ることになれば新たな「国策の犠牲者」を生むことになってしまう。
利害調整の役割を果たすべきは政治であるはずだ。決着の先送りを重ね、事業そのものが利権化し、完成後も地域が対立し続ける状況を招いた責任は限りなく重い。
自民党政権下に種がまかれたことだが、政権交代後も展望は描き切れていない。今年4月に政府・与党検討委員会が「開門調査が適当」とする報告書をまとめたが、農相交代が相次ぎ、姿勢も一貫性を欠いている。民主党は野党時代に開門を求めてきた事実を忘れてはなるまい。
政府は来春にもまとまる有明海の環境影響評価(アセスメント)の結果を待って判断する方針だが、今後は漁業にも農業にも誠実に対応すべきなのはいうまでもない。営農や災害に関する代替工事を早急に練り上げるべきだ。
もはや開門は避けられない。かつて干拓事業批判の先頭に立っていたのは、ほかでもない菅直人首相である。上告した場合には、以前の主張との整合性を問われる。
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う~ん、地方の新聞にはまだジャーンリズムが生きているなあ。
私が付け加えることはほとんどないよ。
自民愛国政権がズタボロにした日本の国土を、民主党政権は、元に戻さなければならない。
控訴なんて、もってのほかだ。
もし本当に、政権が交代したのならね。
もちろん、国策の被害者である農家への補償は、十分におこなわなければならない。
諫早湾調整池の真実 | |
堤 裕昭,羽生 洋三 | |
かもがわ出版 |