ミクロネシア 青年海外協力隊環境隊員のブログ

ミクロネシア連邦国において環境分野で活動する青年海外協力隊、シニアボランティアからの報告。コメントお待ちしています。

環境クラブ その6-水ー

2014-07-31 10:41:36 | ポンペイ州
2014年3月第2週。今回からテーマがごみからシフト。3回にわたり「水」について学んでいく。
勤務先であるEPAは水質の検査室を持ち、ポンペイの水道水、淡水、海水について水質検査を行い住民に周知していく義務がある。今回メンバーはEPAを訪れた。

当初お願いしていたスクールバスが時間になって来ず、オオミネ小のメンバーは歩いて向かうことに。


ラボラトリーは大きくないので、人数を半分に分け、一つのグループはラボラトリーへ、残りのグループは会議室へ。
ラボラトリーでは、水質検査官が前日にそれぞれの小学校の横を流れる川の水をサンプリングし、水質を検査してくれていた。そして、子どもたちに検査の方法を簡単に説明していく。



水質検査方法はアメリカ環境保護局の指導の下、基準に準拠しており、試薬、設備などもアメリカと同じものを使用している。簡単に検査方法を紹介すると、100mlのサンプルに試薬を入れ、所定の温度下で所定の時間、静置する。この間水に含まれるバクテリアが増殖し、試薬と反応したバクテリアに紫外線を当てることで汚染具合を目視することができる。

UVライトが照射されたサンプルを覗きこむジェイリーン先生。川の水は汚染されていることを目視する。


会議室では啓発部門のカウンターパートが水に関するプレゼンテーションをしてくれた。



ポンペイの水の汚染源として最も問題なのが豚小屋である。伝統的に最も重要なもの。それは豚。ヤムイモ、サカオ、豚を揃えたとき、「男」になると言われる。村の祭り、冠婚葬祭では必ず豚が絞められ、献上される。人口の増加に伴い豚小屋の数も増えており、法令では水源から豚小屋を15m以上離すこともしくはタンクを設け、し尿の混じった汚染水を管理することが義務付けられている。しかし、敷地の関係、経済的な問題からどちらの対策も講じられることがないのが現状だ。そして法律ができたのもここ15年ほどの話。伝統的な生活を続けてきているポンペイ人にとっては迷惑千万な話で、実際EPAスタッフが巡回指導に回って、説明しても聞き入れてもらえないことも多いらしい。法律違反という形で裁判になるケースはほとんどないらしく、指導はするが罰しないというのが現状のようだ。みなが家族のようなポンペイ社会の中では、四角四面に法律やルールで規制することよりも人間関係に基づいた伝統的な村社会のやり方で丸く収める方が現実的である。

さて、話がそれたがカウンターパートは2013年に行ったポンペイ島の主要河川の水質調査の結果を伝えた。ラボでは水の汚染度について飲料レベルと日常生活での使用レベルの二つで安全基準を示している。飲料レベルは100ml中にバクテリアが全くいない状態、日常生活レベルでは100ml中にバクテリアが576個体までが許容される。2013年の調査では41河川中13河川のみが日常生活レベルをクリアという結果であった。商業都市コロニア以外の地区では川の水が生活用水となっているため、この結果はポンペイ人にとってかなり深刻な結果である。水質検査官がサンプリングした小学校の横の河川もひどく汚染されている。先生たちが子どもだった30,40年前はコロニアでも川で普通に川で泳いでいたらしく、汚染は進んでいる状況にある。


水色:日常生活に適する 赤色;日常生活に不適

今回は水質検査の方法とポンペイ島の河川の汚染状況について学んだ。
次回は水を汚染しないための具体的な方法を学んでいく。

24年度2次隊 浜川喬弘

環境クラブ その5-ごみ問題のまとめー

2014-07-31 09:31:04 | ポンペイ州

2014年3月第1週。ここまで家庭のごみ排出量調査、ごみの分解時間について、古タイヤをリユース、ダンプサイトツアーとごみについて学んできた。今回はそのまとめ。

まず、3週間前に設置したごみの分解モニタリングサイトで様子の変化を確認。バナナの皮は2週間ほどで姿が見えなくなり、この時点でコピー用紙は大きさが縮んではいるが存在はまだ確認できる状態だった。頭では有機物は分解すると分かってはいても実際に変化していく様子を見ると「おー!」と思う。


コピー用紙 Before


コピー用紙 After


クラブのルールの一つに「学びを実践すること」がある。知識を得るに留まらず、その知識を活かして、実際に行動を起こしていくことが今のポンペイの環境問題に必要な段階であると思う。ごみ問題について4Rの概念をガイドに自分たちができることを以下のようにまとめた後、取り組みたいと思うアクションを一人一人に書いてもらった(アクションプランの設定)。

「4Rの概念と具体的な実践例 ポンペイバージョン」



アクションプランの設定。みな自由にできることを考える。

島嶼国のごみ問題で引き合いによく出されるのが、プラスチックの海洋汚染、海の生き物に与える影響だ。伝統的に亀を食べる彼らにとって以下のような様子はシンプルかつダイレクトに環境問題への意識を高めるものだと思う。






子どもたちのアクションプラン一例。
・着なくなった服を兄弟にあげる
・プラスチックバックを貰わないように自分のバックを使う
・物を大切に扱う

授業の最後にアクションプランの提出と引き換えに繰り返し使えるプラスチックバック(いわゆるエコバック)を配布した。これから市民レベルで「Say No Plastic!」が広がっていければと思う。



24年度2次隊 浜川喬弘



環境クラブ その4ーダンプサイトツアーー

2014-07-07 12:54:03 | ポンペイ州

2014年2月第4週。4回目の環境クラブのテーマは【ダンプサイトツアー】。
現場体験を重視する環境クラブ、初の野外授業。
先週みんなでペイントした古タイヤをピックアップトラックに載せ、いざダンプサイトへ!

ポンペイ島唯一の公共廃棄物処分場。ここは24時間市民のごみの持ち込みが可能であり、分別の仕組みがないポンペイでは、あらゆる種類のごみがここに捨てられる。一日に持ち込まれるごみの量、2012年に先輩隊員とEPAスタッフが行った調査によると1日13.8tのごみが持ち込まれれている。焼却処理はコスト、炉のメンテナンスの問題などから導入はされておらず、ただ捨てられ、積み上げられていくだけの処理である。

さて、授業の始まりである。
「キヲツケ!レイ!」
「オネガイシマス!」


まず子ども達は現場で看板を見ながら説明を受けた。これは2013年6月にJICAの技術協力により実施された改善工事の概要である(詳しくは過去のブログ)。

この説明に当たったのが、EPAのスタッフ、チャールスである。彼はこの改善工事が実施された後に、「ここに小学生を連れてきて、環境教育をしたい。そして、木と花を植えて、将来ここが閉鎖されたときに憩いの場になるようにしたい」と語っていた(上記ブログ参照)。その彼のアイディアがついにここに実現したわけである。


サイトの中に入り、さらに説明を受ける子供たち。


説明の後は、ダンプサイト正面入り口に移動。



一人一本持ってきた花、木をダンプサイトのスタッフが用意してくれた花壇に植えていく。




そして、持ってきた古タイヤに土を入れ、


タイヤにクラブの名前と日付をペイント。


植樹したのはレモンの木。早ければ6、7年で実をつけるらしい。




チーム、オオミネ。


チーム、コロニア。


なお、この訪問の様子は地元新聞カセレーリエ新聞にも掲載された。


ダンプサイトの前を通るたびに、子供たちが自分たちが学んだを思い出してくれればと思う。そして、10年後、20年後に大きくなった木を見て自分たちがしたことを誇りに思ってくれればと思う。

24年度2次隊 浜川喬弘

環境クラブ その3-古タイヤをリユースー

2014-07-02 13:39:25 | ポンペイ州

2014年2月第3週。環境クラブ3回目のテーマは【リユース】。ゴミ減量のためのキーワード4Rのうちの一つ。ポンペイに限らず島国においてやっかいなごみの一つに古タイヤがある。基本的に処理のしようがなく、ただダンプサイトに山積みになるというのが現状である。

タケチックダンプサイトに山積みとなった古タイヤ。

写真のような方法や、植樹の際、苗木を保護のために苗木の周りに配置するという使われ方が一般的なリユースの方法だ。


古タイヤをダンプサイトから貰い、子どもたちに思うがままに塗らせた。何かデザインを描いたと思いきや、白紙に戻すように一色で塗り直し、また、描き始める。塗る過程をとにかく楽しむ子どもたち。

チーム、オオミネ。


チーム、コロニア。

作業の前に、子どもたちと約束をした。
1.タイヤ以外のものを塗らないこと
2.床、壁にペンキが付かないように注意すること

楽しくなると約束なんて忘れてしまうもので。子どもたちは足の裏についたペンキを気にせずに動きまわるものだから、気が付けば、床が大変なことに。。。
終いには、皿に受けたペンキがドバッと零れ落ちた。
覆ペンキ皿に返らず。。。
僕の怒りの雷とともに今日の授業は終了。

あえなくコロニア小の面々は、翌日長休みの時間に全員集合し、溶剤を使ってペンキを落とした。
嬉しかったのが、ペンキをこぼした子が黙々と作業に取り組み、最後まで頑張っていたこと。
彼は失敗から学んだんだなぁ。

さて、芸術的に彩られた古タイヤは次週ダンプサイトに戻りリユースされる。


24年度2次隊 浜川喬弘

環境クラブ その2ーごみについて学ぶー

2014-07-02 11:07:29 | ポンペイ州

2014年2月第2週。環境クラブ2回目のテーマは「私達が出すごみ」。一回目のクラブの終わりに一人二枚ゴミ袋を配布し、家からでる一週間のごみを貯めるように伝えた。家族の人数とごみを集めた期間から一人一日あたりのごみの排出量を調べようという実験だ。この実験をするときに注意しなければいけないのが、調査期間内の日常的なごみのみを収集しなければいけないこと。失敗例として、「ごみを集めてくれるなら、家にたまっていたごみも一挙に出そう!」と家族が張り切ってしまうパターン。もしくは調査開始前に貯められたごみが混入すること。調査の目的と方法をしっかり伝えなければいけない。

さて、当日、調査の目的を理解して、ちゃんとごみを持ってきた子は3分の1ぐらいだろうか。持ってこれなった子、忘れた子は友達のデータを貰いながら、ワークシートに沿って一人あたりの排出量を求めていった。結果は、一人1日当たり30~120gとばらつきはあったが、平均して80g。ポンペイ島の人口がおよそ35,000人だから、家庭から出るごみの量は1日当たりおよそ2,800㎏ということになった。因みに2011年に先輩隊員が同じ方法を使ってポンペイ全域で実施した家庭から出るごみ量調査によると一人当たりの排出量は100g。今回の結果はまぁ妥当というところか。

当初の予定では、この後、ごみを7種類に分別して、ごみの組成を求めようと企画していたが、予想以上に計算作業に時間がかかり、このプログラムは割愛。2011年の先輩隊員の調査結果と日本の横浜市のデータを示して、何が違うか、どうして組成が異なるのだろうかという話をした。


そして、集めたごみから5つのごみをピックアップ。別に用意していたバナナを食べて、バナナの皮、紙、プラスチックのトレイ、生分解性のレジ袋、ラーメンのプラスチックパッケージ、アルミ缶の6つのごみを校庭に置いた。ゴミの分解時間の違いを実際に目で見て確かめようという実験だ。風、動物による影響を避けるため、カバー用の小さなポットを設置。バナナの皮は2週間ほどで見る影もなくなり、紙は2か月ほどの寿命であった。



モニタリングサイト。


コロニア小の面々。

24年度2次隊 浜川喬弘