星くず雑記

日々の出来事は煌めく星くずのように…

令和5年5月歌舞伎座&明治座②

2023年05月21日 11時19分31秒 | 歌舞伎

まず、四代目市川猿之助の「「事件」に関する事実」について

現時点(R5.5.21現在)で、何も確定していませんが、

猿之助の長期的な不在は不可避だと認識しています。

今はただ、段四郎ご夫妻のご冥福をお祈りいたします。

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急遽チケットを購入し、歌舞伎座昼の部から、明治座へ梯子しました。

まだ幟もポスターも差し替えられていません。

 

もともと宝塚でいう新人公演的企画として「花形公演」が予定されており

すでに代役3日目の5.20では、知らなければ違和感を感じないクオリティでした。

一方、その隼人の代役である門之助は、準備期間がなかった(即日代役)そうなので

出演者・スタッフ・ファン皆が衝撃を受ける中、本当に、たくさんの方々の努力で

公演を繋いで下さったのだと思います。

 

冒頭、「澤瀉屋!」の掛け声(大向こう)がかかった瞬間、

私は涙ぐんでしまいました。

「澤瀉屋」というカンパニーを存続させたいと願う

ファン(歌舞伎ファン、澤瀉屋ファン)や、出演者・裏方さんの思いが溢れています。

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歌舞伎観劇時は、イヤホンガイドはしませんが

チラシを片手に配役や物語の設定を確認しています。

しかし、既にチラシがどこにもなく、

全く予習せず、途中確認もせずに、感激しました。

 

たまたま先月の歌舞伎座『陰陽師 滝夜叉姫』を観ていたので

登場人物や時代が重なることから、設定・ストーリーは掴めました。

セリフにところどころ、「猿之助」「澤瀉屋」を想起させるところがありました。

なお、この日の大向さん(一人)は、澤瀉屋の方に時々「猿弥!」等と下の芸名でかけていたので

出演者が分かり大変ありがたかったです。澤瀉屋への愛にあふれた大向こうでした。

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この日は、澤瀉屋の最長老:寿猿の93歳の誕生日であり、それにちなんだアドリブも。

「(隼人に)あなたの3代前から、(團子に)あなたの5代前からお仕えしています」

には大きな拍手。

事件当日の『報道ステーション』で、寿猿さんにしつこくインタビューした報道姿勢に憤りを感じています。

猿翁と(亡くなった)段四郎兄弟が幼い時から、猿之助や中車が生まれる前から

喜熨斗一家や澤瀉屋というカンパニーを深く知っている方です。

本件で何も感じていないわけがない、そういう方に敢えて取材をする行為自体に加え、

事件について誰も何もコメントできないことが明白な段階であり、余りにも酷いです。

(この時点での取材は、どの出演者に対してもすべきではありません。)

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米吉は凛々しい姿と裏腹に、けなげで儚く。

福之助は、(昨年も思いましたが)演技力に長け。

そして團子はおきゃんで可愛らしく。

(昼の部代役主演を果たしたばかりで、登場時には盛大な拍手)

猿之助の下で共演し、成長した若手が頼もしくもありました。

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物語は小休憩10分ありの、(歌舞伎座でいう)1.5幕位の長さで終わり、

最後は1時間弱の『蜘蛛の絲宿直噺』。

OSKでいう「ストーリ性のあるレビュー」といった感じで、五役早変わりが目玉。

花形公演のために準備していたのか、隼人は萬屋の着物も着ていました。

 

もちろん隼人は見事なんだけれど、

同時に猿之助が「余裕たっぷりで楽しそうに」舞う姿も容易に想像できます。

(実際には大変な体力・気力を消耗しているはずで、そう見せないことが「芸の力」)

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不意の休演・不在に対し、

テレビや映画であれば、円盤や配信で収入を得ることができますが

生の舞台は観客がチケットを買わなければ完全に赤字です。映像が残るとも限りません。

直接舞台に携わる方のみならず、劇場内外の飲食店、交通(タクシー)にも影響が波及します。

安易に打ち切りに出来ない選択についても、私は理解します。

また、出演者・関係者とファンが心を一つにする場としても重要です。

 

代役公演でアンコールには応じないことは、代役公演初回から明らかなので、

長いスタオベは無く、盛大な拍手ですぐ散会となりました。

代役公演がどんなに素晴らしいクオリティであっても、経緯が経緯だけに

残念ながら純粋に楽しむことはできません。それでも公演・文化を

繋いでくれた隼人はじめ出演者・スタッフへの感謝の気持ちは、きっと伝わっていると信じます。

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澤瀉屋ファンの方は、パッと見渡して女性が多い印象ですが、

客席や幕間ロビーに悲壮感はあまりありませんでしたが、数名泣いている方がいました。

舞台写真コーナーは長蛇の列ができていました(代役公演の販売予定はなしとのこと)。

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猿之助は、「舞台の上では」紛れもない大スター・ヒーローであり、

コロナ禍の3年余り、苦境の舞台芸術・歌舞伎界のために獅子奮迅の活躍をされていました。

心身とも活力を維持するのは、本当に大変なことだったのだと思います。

 

今回の「事件」や、その直前の週刊誌報道に関し、

業界・個人間における問題は、まず当事者間や司法の場で、客観的・中立的な見解の下に解決すべきであり、

一方の見解のみで他方が社会的制裁を受ける風潮に危機感を感じます。

本件とは無関係の例として、既婚男性著名人と不倫(=合意の上で肉体関係)した上で、

それを「被害者」として週刊誌等で暴露する匿名女性等。言うまでもなく本当の「被害者」は、正当な配偶者・家族です。

男性著名人と匿名女性間でトラブルがあった場合、当事者・司法の場で解決を図るべきです。

本件における事実の部分に対しては、必要に応じ、業界内で適切に改善を図って欲しいと願います。

(それ以上は、細部の事実が確定するまで、一ファンとして述べることはできません)

 

来週は、團子代役主演の昼の部を観に行きます。

関係者の皆様、どうぞ心身を大切になさって下さい。

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最後に、私は熱心な澤瀉屋ファンではありませんが、

余りの出来事と、急遽明治座に行ったことで、心身が疲れてしまいました。

歌舞伎ファン・澤瀉屋ファンの皆様もご自愛ください。

(観劇して応援する以外に、距離を置いて休むことも大切ですので…)

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令和5年5月歌舞伎座&明治座①

2023年05月21日 09時01分44秒 | 歌舞伎

歌舞伎座昼の部を観ました。

『寿曽我対面』

仇討ちまでしないので、どうも不完全燃焼。

曽我兄弟役の松也・右近はもちろん、玉の声や容姿

巳之助の重厚さが目を引きました。

 

『若き日の信長』

團十郎を観るのは、10年ぶりくらい(と思われる)。

プライベートのスキャンダルもあり、好きな俳優さんではありません。

でも、悔しいくらいルックスが良い。

圧倒的に(舞台や公私を含み)「映える歌舞伎俳優」なのは間違いないです。

昭和中期の新歌舞伎であり、演劇面の要素が大きく

孤独感や迫力はさすがでした。

主君信長(團十郎)を諫める忠臣(梅玉)の死は、

今の歌舞伎界に重なります。

 

『音菊眞秀若武者』

今回の目玉!尾上眞秀の初舞台公演です。

(前半あらすじ)

大伴家茂(團十郎)・藤波御前(菊之助)夫妻の前で開かれる藤の宴。

美しい腰元(梅枝)が舞、重鎮(團蔵、時蔵、楽善)が居並ぶ中、

渋谿監物(彦三郎)に連れられて突如現れる謎の美少女(眞秀)

殿夫妻とも舞い踊るが、何故か少年の所作が出てしまう。

そこに村の若い衆(萬太郎、巳之助、右近)が狒々被害の陳情に訪れる。

美少女がその正体:岩見重太郎であることを明かし、狒々退治に名乗りを上げる。

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居並ぶ俳優さんが豪華ですねえ。

團菊祭だけあり、團十郎と菊之助は久々の共演かと。

初舞台公演として、それぞれの世代の俳優さんに見せ場があるのが良いです(後述)。

村の衆も『寿曽我対面』と打って変わってコミカル。

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(後半あらすじ:ネタばれあり)

少年剣士:岩見重太郎が、長坂趙範(松緑)と手下の悪党たち・狒々の本拠地へ。

手下たちをバッタバッタと切り捨て、狒々とも戦うが危うし!

そこに滝の中から弓矢八幡(菊五郎)が現れ、重太郎にゴッドパワーを授ける

すると重太郎は見事に狒々を退治し、趙範も捨て台詞と共に退散する。

重太郎は、親の仇でもある趙範を追うため、諸国を巡る旅に出る(幕)

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以上「正義のヒーローが悪党をやっつける、チャンバラ活劇」でした。

眞秀自身が小学生であり、客席には学校かお稽古繋がりか、

子供グループ(親御さんも)がたくさん来ていました。

大人だけでなく、子供たちにとっても

分かりやすく、楽しいお芝居だったのではないでしょうか。

 

いつ菊五郎が出てくるのかワクワクしていたので、

孫に芸を伝授するイメージと重なり、とても良かったです。

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中村屋『桃太郎』、音羽屋『牛若丸』に次ぐ、

御曹司の初舞台公演として定着して欲しい演目だと思いました。

数十年後、菊之助が八幡神になり、眞秀が殿か渋谿監物か…

また、成長した眞秀が、10代後半や20代となった時に

続編(成人男性ならではのより激しい立ち回り)を観てみたいと期待させます。

 

歌舞伎の醍醐味の一つは、ファンも俳優も年齢・世代を重ねながら応援できることです。

当代の菊五郎は、若い頃は超人気スター(三之助のひとり&大河ドラマ等主演)で人間国宝となり、

また娘は国際的評価を受けた名女優、息子は美貌と実力を兼ね備えた歌舞伎俳優であり、

それぞれのお子さんたち(丑之助・眞秀)も愛嬌と歌舞伎への情熱を持ち、音羽屋は盤石です。

破滅的なスキャンダルもありません。実施の系譜である尾上右近も素晴らしい俳優で、層が厚いです。

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今週は澤瀉屋にショッキングで哀しいニュースがありました。

音羽屋がいかに恵まれているか、喜びの中で考えさせられました。

(もちろんご本人達や、一門を支える方々の努力があるからです)

 

急遽、予定になかった明治座<市川猿之助 奮闘歌舞伎公演>を買い足し

夜の部をハシゴしました。

 

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