ITエンジニアの九十九折(新)

これまで経験したことや考えを思いつくままに綴って行こうと開設しました。マラソンをするように長く続けて行くつもりです。

45.新3Kとワーク・ライフ・バランス(1,317字)

2007-02-02 | Management&Economics
最近、私が所属するITサービス産業では、「新3K」という呼称が使われるようになりました。

新3Kとは、「きつい、厳しい、帰れない」です。

きついは、仕事上でかかる負荷の大きさを表し、
厳しいは、顧客からの納期や予算のシビアさを、
そして帰れないは、先の二つの要素を満たすために、
日夜遅くまで残業を繰り返す様
を指しているのだと解釈しています。

そうです、ちっとも良いことではないのです。

高校や大学での理系離れが危惧され、またIT業界を志願する人も減って来ていると言われる中での話です。

業界の末端に籍を置く自分自身も、現状に甘んじて黙認しているわけには行きません。

原因は、サービスを受けるユーザ側にも幾つかありますが、大半は業界側に起因します。思いつくところを四つ掲げます。

①業界全体の発展に関するグランドデザインを描けない
 (例えば、米国ではプロジェクト管理手法の標準化や
 開発組織の成熟度を測定する指標等が開発されている。)
→日本でもITスキルとキャリアパスを可視化させる動きが
 あることは過去のブログで紹介しています。
②ソフトの大半がオーダーメイドで現場での生産性が低い
③労働集約型から脱皮できずに自社収益が向上できない
④ソフト開発会社の大半が中小規模で、独自技術を持たず、
 元請けへの依存体質で経営基盤が弱い

悪いところに目を転じると何点でも指摘できます。

またITサービス業界を取り巻く環境も、昨今のインドや中国のソフト技術者の台頭は目覚しいものがあり、早晩、わが国のソフト開発産業は地盤沈下することを予想する人もいます。

日本の技術者は優秀であると持てはやされたのは過去のものとなり、現在はインド人技術者の優秀さ、中国人技術者のひたむきさが話題をさらっています。

それに対抗し得る施策や取組みが今、産業界全体に求められていると思います(一企業だけでは立ち行かない)。現場で身を粉にして働くIT技術者は責任感を持ち、スキルアップに努め、粘り強く取組んでいます。

彼らを束ねる企業の管理者、経営者、そして業界団体、行政を巻き込んで、未来ある産業として成長戦略を掲げて、政策を立案し、実施、支援して行かなくてはなりません。

そのうちの一つが、ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する施策ではないでしょうか。

意外にもITサービス業界における仕事の現場は泥臭くて、ごちゃごちゃとしたものです。
新3Kで連想される情景は、スマートでもなく、決して格好良いものでもありません。むしろ、それとは正反対に位置していると考えられます。

しかし、それだからと言って、このまま、過酷な環境が許されてはならないと思います。

欧米でもWLBの取組みが進展しつつあります。
ワーカ・ホリックに働いた結末が、燃え尽き症候群と家族の崩壊(例えば熟年離婚)だったとしたら、何のための人生だったと振り返るつもりなのか(その辺の調整が実際に働いていると難しいのですがね)。

もっと仕事をドライに、そしてビジネス的視点で捉え直して、そこで働く人たちの仕事と私生活とのバランスや幸せを想起し、改善・改革を進めて行くことが求められています。
WLBの詳細についてはこちらより
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2006-01/index.html
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