ITエンジニアの九十九折(新)

これまで経験したことや考えを思いつくままに綴って行こうと開設しました。マラソンをするように長く続けて行くつもりです。

150.戦争と遠い記憶(1,090字)

2008-08-26 | Voices
毎年8月は国内での記念行事も多く、日本人にとって
「戦争」を思い出させる絶好の時期です。

私も年に一度くらいは、戦争について振り返り、平和を
尊び、今後、日本国民としていかに在るべきかを考える
ことは意味があることではないかと思っています。

しかし、今の日本は戦争を知らない世代が全体の75%
近くを占めるようになり、年数を追うごとに戦争が風化
され、惨禍を再び繰り返すことになることを危ぶむ人達
も少なくありません。

今年の私のテーマは、現在読んでいる本の書名にもなって
いるのですが、「戦争で死ぬこと」です。

この本を読むと、太平洋戦争がいかに無謀だったか、
そして国民にいかに無理を強いたか、さらにはアジア諸国
に対しても甚大な悪影響を及ぼしたかがひしひしと伝わって
きて心を打たれます。

戦争では人間が人としての人格を無視して、互いに虫けら
同然に殺戮し合うことです。残念ながら、私たち戦争を
知らない世代には、せいぜいジャーナリズムを通じた写真
か映像でしか、その真実を知ることはできません。

この本に紹介されているむごさを描写したほんの一部を
抜き書きします。

「学徒動員の少年の頭が半分吹き飛び、そこから白い木綿糸
 のようなものが何本も垂れ下がっている。その姿のまま
 少年は何メートルか走り、倒れて死んだ。」(P.10)

「屋根が吹き飛んだ防空壕のなかで数人の女性が座ったまま
 死んでおり、そのそばに彼女たちの頭が転がっていた。」
 (P.11)

「ねんねこ半纏(はんてん)に赤ん坊を背負った母親が次々と
 ここへ逃げ込んできたんやが、みると、みんな赤ん坊の首が
 ない。」(P.11)

たった三つの事例ですが、もうこれ以上紹介しなくても、
どれほど悲惨な状況だったかが十分想像できると思います。

しかもこれは、本土空襲時の証言を描写したものであり、前線
ではもっと悲惨で過酷な状況に陥ったということです。
本当に目を覆いたくなる内容です。

確かに先の大戦の後半、日本は劣勢に立たされ、大東亜共栄圏
が崩壊し、占領地だったフィリピンおよび台湾での敗北、
沖縄戦、本土空襲、そして原爆投下から無条件降伏へと流れて
行く中で、戦争の加害者よりも被害者としての実感を強く持ち
ますが、そうした一面的な評価だけでは正しい歴史認識を持つ
ことはできないのだと考えます。

もっとも忌むべきは、日本が仕掛けた戦争によって、アジア
諸国では、310万人とも言われる日本人戦死者の何倍かの
罪無き人々が亡くなっていることです。

我々、子孫はそのことの重さを忘れず、平和主義者としてアジア
を始め、世界平和の実現にまい進すべきなのです。

『戦争で死ぬ、ということ』島本慈子著(岩波新書)
戦争で死ぬ、ということ (岩波新書)
島本 慈子
岩波書店

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