映画で綴る鑑賞ノート

ドキュメンタリーを中心に、新作映画を楽しく語ります。
鹿児島弁のコーナーもあるよ。

夜よ、こんにちは

2006年06月07日 | スクリーン
1978年、ローマで起きた、極左武装集団 “赤い旅団” による、
“アルド・モロ元首相誘拐暗殺事件” を、メンバーの女性キアラの視点で描いた作品です。

※ ネタバレ 注意! ※

主人公キアラは、メンバーの中の役割分担では、後方支援担当なので、
例えば、メンバーがモロを誘拐する様子は、テレビのニュースで見ているといったように、
映画は室内でのシーンを中心に展開していきます。

その分、観客がキアラの表情を見つめる時間も長くなります。
覗き穴から、監禁されているモロの様子を見るキアラの目が、しだいに、
自分たちのやっている行為は正しいのか? 否か? という問いを、
モロの姿に重ね合わせているように思えてきます。

映画が終盤にさしかかり、殺害という事実をどのように描くのかと注視していると、
ストーリーの流れとは真逆のカットが時折挿入され、ん?、なんだろう? と、
考えさせられる瞬間が何度かありました。

モロは監禁されているはずなのに、室内を歩き回り、
かと思うと次のシーンでは、また監禁されているといった具合に。

これが、印象的なラストシーンへと繋がっていきます。

監督ベロッキオのこの事件に対する考察を、主人公キアラが思い描く夢という形を用いて
スクリーンに映し出すという、言葉を廃した映画的な素晴らしいラストシーンだと思いました。

実在のキアラは、実際にそういう幻想を抱いたのか? それは、本人にしかわからないこと。
事件を描くにあたり、監督の、「こうであって欲しい」 という思いと、
「でも、事実はこうなんだ」 という複雑な感情を同時に見たような気がしました。

夜よ、こんにちは
★★★★ 2003 イタリア
監督:マルコ・ベロッキオ
出演:マヤ・サンサ、ルイジ・ロ・カーショ、ロベルト・ヘルリッカ、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ、
     ジョヴァンニ・カルカーニョ、パオロ・ブリグリア

追記

 『光の雨』 を思い出しながら観ていました。


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2 コメント

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やっぱり・・・ (ナマケモノ)
2006-06-08 09:07:47
観ていましたね。

過去の映画のワンシーンが色々挿入されていると聞いてはいましたが、ブログを読めば読むほど観たくなりました。



先週から「マイ・アーキテクト」が上映されているので、観に行こうか・・・と予定中です。

数ヶ月遅れでも上映されるだけ良いかな?とも思うのですが、貪欲なナマケモノです。
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貪欲! (せんかいへき)
2006-06-09 18:14:37
>ナマケモノ様



おお! 『マイ・アーキテクト』を上映しているとは、渋いですね。

世界建築物探訪の旅を楽しんできてください。(笑)



色々挿入されてたのか…

ロッセリーニの『戦火のかなた』がなんとなく…
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