映画で綴る鑑賞ノート

ドキュメンタリーを中心に、新作映画を楽しく語ります。
鹿児島弁のコーナーもあるよ。

バッシング

2006年06月06日 | スクリーン
モデルとなっているのは、2004年4月に起きたイラク日本人人質事件で、
無事救出された3人のうちの、ボランティアの女性のかたです。

※ ネタバレ 注意! ※

国内では、いわゆる、自己責任論争が巻き起こったことで記憶される事件ですが、
( 『華氏911』 の中でも、この事件の映像が使われていました。 )
この作品は、事件そのものを描いているわけではありません。

というのも、作品中、“イラク” という言葉が一回も出てきません。
序盤、あれっと思って意識して観ていたのですが、“外国”“モスクワ経由”“空爆”
という言葉は出てきますが、最後まで、“イラク” という言葉は使われませんでした。

これは、この映画について、なんの予備知識も情報も持っていない人は、
彼女が何故バッシングを受けているのか、とか、彼女はどこで何をして来たのか、などが、
全くわからないまま観なければならないということになります。

原因や過程を問うことはせずに、バッシングを受けた人が辿る道や、
家族へ及ぼす影響などを描くことで、バッシングという行為に対して
警鐘を鳴らしているような感じを受けました。

彼女の自己中心的な言動によるところもあるとは思いますが、
原因がなんであれ、これほど悪質な嫌がらせはありませんから。

問題作といわれていますが、とにかく、なにもかもが地味です。
音楽は使われず、彼女の団地はまるで廃墟のようで殺風景。 色でいうと灰色。

それがねらいなのはわかりますが、人に観られてこそ、
初めて問題作と成り得るという気もするのですが…

バッシング
★★★☆ 2005 日本
監督:小林政広
出演:占部房子 田中隆三 香川照之 大塚寧々 加藤隆之 本多菊次朗 板橋和士

追記

 カンヌ映画祭のコンペティション部門公式出品作品でもあります。


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2 コメント

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問題作に問題提起? (ナマケモノ)
2006-06-07 15:11:03
『バッシング』観られたんですね。私も気になっている作品だったんです。

今週末にはバッシングされた一人、郡山聡一郎さんの講演を聴きに行く予定です。

こういう機会に一緒に上映してくれると、良いんですが・・・・。



渋谷で上映される『夜よ、こんにちは』も興味のある作品です。選択肢が多いのは、都会に暮す魅力ですね。
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夜よ、こんにちは (せんかいへき)
2006-06-07 18:35:09
>ナマケモノ様



実は、『夜よ、こんにちは』はGWに観に行ってまして、(一ヶ月も前だぁ…)

なんやかやで書かないままだったんです。(そんな映画が、あと5、6本あります…)

ナマケモノ様に背中を押された気がしまして、慌てて書いた次第です。

もしかしたら、好みが一緒なのかも?
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