米メディアは説明責任にうるさい。共和党初の女性副大統領候補になったペイリン・アラスカ州知事が初めてインタビューに応じたのは芸能誌的存在の「ピープル」誌。政治コメンテーターの間には「もっとメディアに会うべきだ」と不満の声があふれた。
11日にABCテレビが主要メディア初のインタビューを放映した。先制攻撃を正当化した「ブッシュ・ドクトリン」を知らずに言葉に詰まるなど経験不足も露呈した。演説はふりつけができても、インタビューには本質がのぞく。
それでも避けては通れない。パートナーの大統領候補、マケイン上院議員は「(ペイリン氏は)これから多くの人とインタビューする」と話している。投票まで約50日。インタビューは討論会と並んで真剣勝負の場になる。
ウォーターゲート事件のスクープで知られるワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード編集局次長が新著「内なる戦争」を出した。イラクへの増派を決めるまでのブッシュ政権の混乱ぶりが描かれる。
政権の内幕を暴くシリーズの第4弾。ブッシュ大統領も3時間近いインタビューに応じた。ホワイトハウスは政権の混乱を否定する長い反論を発表したが、本に引用された事実を否定してはいない。
見解の相違はあってもメディアを忌避はしない。説明責任やメディアの役割について共通認識があるからだろう。
01年9月の同時テロから7年。「監視国家化」など米国の変質も指摘される。しかし、メディアと政治が健全な緊張関係を保つ限り、歯止めがかかると考えるのは楽観的すぎるだろうか。(北米総局)
毎日新聞 2008年9月15日 東京朝刊