わが家の食育…「お家で作ろう! 食べよう!」

家族の健康づくりは、わが家で作る食事から…。信濃毎日新聞発行「週刊さくだいら」「週刊いいだ」特集掲載をまとめます。

日本酒を醸(かも)す「酒米」を知ろう

2010-11-28 | 農と食をつなぐ…産地の歴史と未来


農と食をつなぐ…産地の歴史と未来 Part4 
                 信濃毎日新聞社「週刊さくだいら」
                  <2010.8/19号掲載>


米どころ信州は昔からおいしい日本酒造りで知られています。
現在、蔵元の数は全国3位の89蔵。南北に山脈が貫き、標高差は約千メートル。
清らかな水と四季折々の豊かな自然が酒造りを育み、各地で実に多彩な日本酒を生み出しています。
歴史ある蔵元の伝統の銘醸酒は、信州の宝物。
酒米の今と昔を知り、日本酒の新たな楽しみ方をしてみませんか。           


10月は日本酒の月-――――
「醸」「酔」「酌」など、酒に関わる字の多い“酉”は象形文字で、十二支の10番目から10月を指します。
新穀が実り、酒造りを始める月であるため、「日本酒の日」とされています。
この日は伊勢神宮の御酒殿の御酒殿祭。「神嘗(なめ)祭」にお供する酒がうるわしく醸造できるように御酒殿の神様に願うとともに、全国酒造業の繁栄も祈ります。
また、神無月に神が集まるため「神在月」という出雲では、佐香(さか)神社で10月13日から3日間の祭りが行われます。
佐香神社は松尾神社ともいい、酒造りの神を祀(まつ)っています。


■おいしい日本酒と米
米と水は酒の命です。
大地に根を張り、気候・風土によって育つ米と、豊かな水の特質を知り、微生物の力で醸し出す酒は、米・水・技術の集大成。
カルシウムやマグネシウム含量のバランスが良く、味を損なう鉄分やマンガンを含まない天然水が、酒米のでんぷん質を潤し、輝きを与えます。
日本酒の「並列複合発酵」は、ワインの単行発酵やビールの単行複合発酵を超えるもっとも高度な醸造技術。
糖化と発酵を同じタンクで行い、麹(こうじ)ででんぷん質を糖化しながら、つくられた糖を酵母がアルコールにするものです。


「酒米を買うなら、土地を買え」
酒米を知る
米には、「うるち米(飯米・酒造好適米)」と「もち米」があります。
清酒のアミノ酸含量が高くなると、雑味や変色の元となるため、酒を造る原料として求められるのは、たんぱく質の少ない米。
雑味になる米の回りのぬかを取り除き、精米を効率よくするためには、大粒な米で、デンプン質が多くやわらかな「心白(しんぱく)」が中央にある酒造好適米が望まれます。   
  
コシヒカリ玄米(左)・美山錦(右)


酒造好適米
“酒米の王様”といわれる兵庫県の「山田錦」は、粘土質土壌と、山間地や盆地の寒暖の差が、心白の発現を良くし、麹菌のはぜ込み(菌糸の伸び)を活発にしています。
絶大な人気の品種で、産地品種銘柄として28県で指定されています。
蒸したときに、外側が硬く内側に水分を含んで軟らかい蒸し米になる「外高内軟」が、理想の酒造好適米。
「五百万石」や、“酒米の女王”といわれる復刻米の「雄町」も人気の品種です。

長野県の酒米
長野県は冷涼で、降雨量も少なく病害虫の発生も抑えられているため、高品質・低農薬の栽培が可能です。
今年の長野県奨励品種は、「金紋錦」「美山錦」「しらかば錦」「ひとごこち」。
美山錦は特に優れた品種で、他県の育種の親株にもされています。
佐久地域の蔵元でも、それぞれの清流(浅間山、八ヶ岳、蓼科山、千曲川の伏流水)と、地元生産の奨励品種で、今年も仕込みが始まります。


精米で味を磨く
酒米は精米が決め手。
蔵言葉で「目ん玉」といわれる芯にある心白は、磨く(精米する)ほど高級酒になります。
そのため、のど越しが端麗で香りが高く、貯蔵酒にしても味の深みがでる酒にするために、精米歩合を下げる傾向があります。
精米するほど、割れやすくなり、その年の米の出来具合が影響しますので、気象条件や肥培管理とデータで米の特性を知ることも大切です。
   

日本酒の種類
精米歩合による日本酒の分類。精米歩合が小さくなるほど、風味が華やかで繊細な日本酒になる。  
 


日本酒の新たな歩み―― 
米の栽培の歴史をたどると、「米づくり日本一」が競われた昭和30年代以降、減反政策までは“量”を求める多収重視の時代でした。
食用米の4~7割の単収(10a当りの収量)しかない酒米は、栽培されなくなったり、“質”で求める傾向が失せ、量を求めて質を落す傾向にありました。
絶滅種が増え、質の低下が日本酒低迷の一因ともなったため、近年は原料の米を重視し、米の栽培から酒造りに取り組むようになっています。
伝統と近代技術の融合を求められる酒造り。多彩な酒造りに挑む向上心が、新たな歴史を刻んでいます。

原産地呼称管理委員会認定酒
長野県の地酒としての基準を決め、長野県ブランドとして認定したもの。
原料、製法に自信と責任を持ってにアピールすることで、消費者の信頼を仰ぎ、酒造りの活性化を図っている。

■自然を醸す酒…酒米「金紋錦」
蔵元が護る高級酒米
金紋錦は、杜氏(とうじ)が一度は使ってみたいと思う酒米。
父を「山田錦」、母を「たかね錦」とする長野県の登録品種です。
大粒で心白が大きく割れにくい優良な酒米で、山田錦の血を感じるうま味を醸し出します。
木島平村だけで栽培され、幻の品種になろうとする直前に石川県の蔵元に護られた、という秘話をもつ希少品種です。
アルプス搗精工場で精米された金紋錦は、“木島平産特別栽培米「金紋錦」”の酒として地元の「水尾」「緑喜」とともに、県内では6酒造メーカーの銘醸酒で販売されています。
飲み比べてみると、いずれも金紋錦という酒米のもつ共通の個性と、蔵元独自の風土と伝統の技が融合した味の逸品です。


佐久地域唯一の金紋錦の吟醸酒は、大澤酒造株式会社(佐久市)の純米吟醸酒「大吉野」。
木島平村の金紋錦100%を精米歩合55%に磨き、蓼科山系の軟水で仕込んだ長期熟成タイプの酒です。長野県原産地呼称管理委員会認定酒。

産地銘柄品種のないのは東京都、鹿児島県、沖縄のみで、全国で地域品種の酒米を求めて、品種改良が進んでいます。酒米は、蔵元に選ばれることで栽培が継続し、また、消費されることで酒が製造されます。消費によって製造を促すことは、優良品種の絶滅を避ける大きな力になります。


■人が醸す酒―――日本酒の原点回帰
「地酒」の原点は、地域の人々が楽しむことにあり。
地元で栽培された米を地元の蔵元が地元の水を使って醸造する、風土に根ざした地域連携の酒造り。
千曲川最上流の蔵元「黒澤酒造株式会社」(佐久穂町)では、地域の要望に応え、「飯米」を使った個性ある酒造りにも挑戦しています。
地の水と風土気候によって、地元の人が丹精こめて栽培した米は、蔵元伝統の製法と杜氏の技量で独自の旨酒に醸されています。

ふなの郷 
佐久市跡部地区のフナ養魚米コシヒカリ100%の純米酒。小鮒が育つ清らかな水で、環境にやさしい栽培をした米を65%に精米し、手間と時間をかけた生酛(きもと)造りの酒。(スーパーマーケットツルヤ限定販売)

百姓物語 
地元佐久穂町佐口産あきたこまち100%。精米歩合65%。さっぱりとしてコクのある純米酒。自らの米でつくった酒を愉しむ生産者ならではの贅沢を叶えた酒です。

太古の響 
古代米「紫黒米」(もち米)を醸造した酸味と渋みを愉しめる酒。ワイン感覚で食中酒に。

生造りは、酒蔵に棲む天然の乳酸菌を生かした伝統的な製法。酵母の発酵過程で自然発酵を大切にすることで、酵母の力が強く、熟成まで腰のある酒になる。


信州の蔵元が力を合わせて… 
アルプス搗精(とうせい)工場
長野県内の蔵元で構成する長野県酒造協同組合では、大町市で酒米専用の近代化精米工場を運営しています。コンピュータ制御と自動化によって、酒造用自動精米機30機が品種、精米歩合ごとに違う多様で高品質な精米を可能にしています。
    



日本酒を愉しんでもらうために… 
熱燗がおいしい季節になりました。米どころ佐久は、酒郷。
より多くの人に地酒のおいしさを知ってもらうために、蔵元ではさまざまなイベントを企画しています。

長野の酒メッセ
毎年10月恒例の長野酒メッセが、10月14日に長野市で開催されました。今年は第16回となり、蔵元自慢の銘醸酒600点が一堂に揃い、ワンストップ酒蔵巡りで信州の美酒、地酒を味わう祭典に約2,300人が来場しました。


 
えきなか居酒屋「およりなんし」
佐久地域13蔵元の地酒を5種類選び、おつまみと一緒に愉しんでみませんか。
開催日:10月11月の土・日・祝日 時間:午後3時から7時まで開催。
場所:プラザ佐久1階(長野新幹線佐久平駅隣接)
料金:1000円(お猪口、おつまみ付)
 

佐久の酒を知ろう…酒蔵めぐり
佐久酒蔵スタンプラリー
佐久は酒の郷。歴史ある13の蔵元を訪ねて、代々護り続けた酒蔵と個性ある地酒に触れてみましょう。1000円以上のお買物をするとスタンプを捺印。ゴールの蔵元で、もれなく素敵な記念品をゲットできます。(有効期限は2年)



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