わが家の食育…「お家で作ろう! 食べよう!」

家族の健康づくりは、わが家で作る食事から…。信濃毎日新聞発行「週刊さくだいら」「週刊いいだ」特集掲載をまとめます。

「栽培してみよう」からはじまる未来

2013-06-03 | 農と食をつなぐ…信州の農地と自然を守るた

農と食をつなぐ…信州の農地と自然を守るために Part1                 

                 信濃毎日新聞社「週刊さくだいら」
                  <2013. 5/30号掲載>

露地の農作物の栽培がスタートしました。農作業の最盛期です。          消費者が多様化するように、農作物の生産も多様化する中で、農業従事者の高齢化は日本の農地を減らす大きな要因になっています。                農作物の輸入自由化も、国内生産や食の安心安全を守るために、気になるところ。 まずは身近な農作物の生産をしてみませんか。                「新規就農」「大規模栽培」「家庭菜園」―、いろいろな生産活動から農地と農業を守る新たな道が拓(ひら)かれることでしょう。

  

「万物は土より生じ、土に還(かえ)る」。これは、古代ギリシアの哲学者クセノパネスが残した言葉です。                           太古の昔、人は食べ物を求めて移動し、水辺に集落をつくり、作物を栽培することで、安定した暮らしを求めました。農と食は命のもと。だから今もなお、変わらずに、食物連鎖と土を通した命の循環を利用して生活しています。

農地の役割
農地は、作物を育てるだけでなく、自然を守る役割も果たしています。
①洪水の予防   ②土砂の流失防止  ③地下水のかん養(地表の水が地下に浸透すること)                                   ④気温の上昇緩和  ⑤自然環境の保全   ⑥景観形成、              ⑦文化の継承 ―などの多面的機能にも現れます。
農業県としての長野県を維持することは、豊かな自然の維持にもつながります。


農業」と「農」
土を耕し、作物を育てることは、誰にでもできることですが、そのスタイルはさまざまです。
農業生産の収益が生活を支える「専業農家」や「兼業農家」にとっては、“農は生業(なりわい)”。                              楽しみながら、安心安全な作物をつくる「家庭菜園」などは“農を楽しむ”もの。 どちらも、日本の農地を荒廃させない生産活動です。

食料自給率向上に
食料自給率が40%に満たない日本。加工品や油の原料として遺伝子組み換えで生産されたとトウモロコシ、大豆、ナタネを世界で最も多く輸入している国です。   しかし、原材料の表示制度の緩さが問題を曖昧にしています。グローバル化が進み、経済情勢の変化が速くなるほど、自給率向上による食の安全、安定が大切になります。
国内での農産物の生産を増やし、数年の保存ができる雑穀や、干したり漬けたりする加工品を日常の食文化にすることが、万が一の事態への危機管理になります

新規就農支援
新たに農業を始める希望者には、長野県、市町村、JA佐久浅間によるそれぞれの支援事業があります。
県の実施する事業は、「新規就農里親制度」として県農業大学校での基礎研修や里親のもとでの実践的な研修など。JA佐久浅間は月1回の新規就農相談会、市町村は農政担当部署での相談など。土地、機械、助成金、技術、住まいの相談など、さまざまな支援体制があります。
                                 

新規就農で道を拓く
カーネーション栽培で担い手に
田園地帯で目にするカーネーションの施設栽培。生産者の高齢化で、施設を壊して宅地に転換する事例が増える昨今です。                     後継者不足と高齢化が進み、産地を継続する担い手が気になるところです。
そこで、研修後、新規就農して4年目のIターン生産者を訪ねてみました。

佐久平の開発が進む地域にある、真新しいビニールハウスで迎えてくれたのは太田勝さん(45)。数棟並ぶハウスでは、昨年11月から初春まで、時期をずらして定植したカーネーション(スプレータイプ)を育てています。

農業フェアと支援体制                            15年間サラリーマン生活を続けていた太田さんは、都内で開催されていた農業フェアで、各地の農業の様子を垣間見て、農業に興味を寄せたそうです。       数県の候補の中から、長野県を選んだのは、長野県の自然のイメージと支援体制の細やかさ。                                  県農業大学校と里親(農業者)のもとで各1年の農業研修の後、地元のカーネーション園地を借りて就農し、今期から新設したビニールハウスで農業経営者としての新たなスタートを切りました。                          佐久市を選んだのは、実家のある東京に近いから。今は、この地で巡り合えた伴侶とともに、夫婦力を合わせて園地と家庭を築いています。                

術を磨き、経済を安定させる 
「教えてもらうことが多く、人に助けられる」という太田さんは、カーネーションのプロの栽培技術を吸収しながら、経験を積んでいます。             恥ずかしくない花を作り、品質への定評を得ることが目指すところ。併せて、収益性を上げ、順調な農業経営にしたいとも考えています。
リスクがあっても、自分のペースで自己完結できることが魅力で農業を選んだといいます。                                   佐久平の発展地域でも農地を残そうとする地主の思いと、新規就農の気合が結ばれて、新しいカーネーション経営者が誕生しました。               品質に太鼓判を押してもらえる頃には、自らの力で歩んでいる自信と産地を担う自負が、次の新しい視点を引き出す原動力になっているでしょう。              

              つぼみが開き始め、これから出荷最盛期を迎える太田さん。

国産を守る「高品質栽培」
長野県は日本一のカーネーション生産県。佐久地域は県内第2位の生産量があり、佐久市、佐久穂町、御代田町を中心に栽培されています。             カーネーションやキクなどの花は、20年ほど前に輸入が自由化され、生産現場は経営の試練を受けて今に至ります。                       価格競争の中にあっても、花の品質向上、日持ち保証などで国産品の優位性を打ち出し、安定生産・安定価格を目指すために夏から秋へと出荷ができるよう頑張っています。

 

           最近の人気は、パステルカラー。黄緑や黄色、オレンジ色などカラフルな彩りを楽しめます

食卓を彩る花は、癒しの農作物
鑑賞目的の花の販売競争では、常に新しい物を求められ、遺伝子組み換え技術から青いカーネーションも誕生しています。                     パンジーの青色遺伝子の導入で生まれた青いバラ「アプローズ」の14年に及ぶ研究の過程で誕生したカーネーション「ムーンダスト」。              花のグローバル化の産物ともいえ、栽培地の南米から空輸されています。

            サントリーフラワーズ(株)で販売されているオリジナル品種「ムーンダスト」

 

玉レタスの大量生産に新風を                         いろいろなレタスを栽培
日本一の生産量を誇る、信州の高原野菜レタス。野菜離れや高齢化による需要の減少が進み、価格の安定のためにはバランスのよい生産量が求められています。
レタスは結球する玉レタスの栽培が主流ですが、半結球やサラダ菜タイプを含めた多品種のレタス栽培が望まれます。                       半結球タイプのロメインレタス(コスレタス)のように、「シーザーサラダ」には欠かせない素材もあり、正統派メニューとして需要を拡大すれば、生産を増やせそうです。

                            フリルレタス 
ふんわりボリュームがあり、サラダを豪華に引き立てます。           玉レタスに近い味でシャキッとした歯応えです。

                            サニーレタス
葉に縮みがあり、葉先が赤紫色のリーフレタス。                程よい苦味でやわらかく、栄養価の高い緑黄色野菜になり
ます。

             ロメインレタスで シーザーサラダ
ロメインレタスをちぎり、ガーリックオイルやレモン、塩こしょうでつくるホワイトドレッシングをかけ、パルメザンチーズ、クルトンを散らします。        シーザーサラダドレッシングは市販品の定番。ロメインレタスの歯ざわりのよさが、チーズやクルトンとマッチする伝統的なサラダです。

 

生活スタイルに合わせた「半農半X」
家庭菜園で生涯作る楽しみを
「有機栽培」「不耕起栽培」「自然栽培」など、様々な農法名があります。    言葉でくくる栽培よりも、「環境や生活スタイル、年齢、体調に合わせて自分流の菜園づくりを続けることが大切」と、細井千重子さん(70歳)は “手抜き”栽培を勧めています。                                身体に無理なく手抜きはしても、生涯現役でやる気を抜かない農作業です。
                                      地域でともに実践できることを伝えている細井さんは、「地域づくりのお手伝い」の言葉通りの方法で、農村の暮らしと文化に光を当てています。          地域や暮らしぶりに合う方法でないと浸透しないため、お話には、実践から生まれた工夫が散りばめられています。   

                             細井さんは、南相木村の自家菜園で年間通して作物を栽培し、一年中無駄なく食べられる加工品(干す、漬ける)を保存しています。               「寒地の自給菜園12カ月」や「農家が教える家庭菜園(春夏編・秋冬編)」(農文協)などの本で、その時々に紹介してきましたが、農作業は加齢による身体の変化と経験から、続けやすい方法に年々進化しているそうです。           「畑を見て、成長していく野菜に教わりながら改良する」という、工夫とアイデアで展開する細井流の菜園。                           細井さんは、農作業を続けやすい方法で、とにかく栽培してほしい、と語ります。 

育てることで、作物と会話しながら進歩できるから、土と生きる“農”は楽しいのです。                                    少量でも自給自足。誰もが消費者でありながら、日本の食料自給率を上げる生産者のひとりにもなれるのですね。 

  

                              小さなコンテナに、ミックスサラダの種を播くだけで、自給野菜になります。必要なときに、必要な量だけ摘み採って、プチ栽培で、育つ楽しみ、食べる楽しみを体感してみましょう。    

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   もくじ

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