信濃毎日新聞社「週刊さくだいら」特集
<2008.3.20号掲載>
野山の草も木も春に目覚める季節。香り高い山菜は次々に旬を迎え、
自然の豊かさを伝えます。
食卓に季節感が無くなったと言われる昨今ですが、旬の味覚のあえ物
が一鉢あるだけで食卓は春。
あえ物は素材の魅力を引き出し、メニューのバリエーションが大きく
広がる調理法です。今年の春は基本とコツを掴んで、得意料理にして
しまいましょう。
あえ物を科学する
料理のおいしさは、味とテクスチャーで決まります。
甘み・塩味・酸味・苦味・うま味などにあらわされる「舌で感じる味」
や「香り」は、食品の化学面の姿。そして、歯ごたえ・舌ざわり・のど
ごし・口当たり・歯切れ・噛み心地は、食品の物理面をあらわし、
「テクスチャー」と呼ばれています。
液体の食品は化学的な味覚が重視され、固体の食品はテクスチャーが
重視されます。そして、この組み合わせのバランスを勘所で心得て
楽しむのがあえ物です。
あえ物素材――――旬を盛る
あえ物の素材は、テクスチャーが楽しみの要素。あえ衣で味をつける
前に、その持ち味を引き出す下ごしらえが必要です。
〔生〕
ウドやスプラウト、生の魚介
〔ゆでる〕
青菜、ネギなどは繊維が軟化し、あえ衣が馴染む。
〔霜降り〕
サッと湯通しするとイカ、白身魚、貝は形も整い、風味が
良くなる。
〔塩を振る〕
ダイコン、キュウリなどをしんなりさせ、ほどよい水分量
にする。
〔酢洗い〕
酢を使ったあえ物には、酢で生臭味取りをしたり、味をなじみ
やすくする。
〔煮て下味〕
コンニャク、ワラビ、タケノコは薄味で下味を。
〔水で戻す〕
キクラゲ、ワカメは水で戻す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/38/44/5acf79ab81e42711f6ae6b63ef08765a_s.jpg)
たらこあえ
舌ざわりと歯ごたえ
タラコ(1腹)をほぐしておき、キクラゲ適宜を水で戻して細く
切る。食べやすい長さに切った白滝(200g)をサッとゆで、
細切りニンジン、キクラゲと一緒にいため、タラコ、酒を混ぜ
てあえる。好みでしょうゆを。
ポイント 白滝はゆでて水気と臭みをとる。タラコはマヨネ
ーズ味も人気。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/2a/96/45323837de753fc22f96e992dc724743_s.jpg)
白あえ
風味となめらかさ
豆腐(200g)の水切りをし、裏ごししてから塩(小さじ1/2)、
砂糖・ゆずこしょう(各大さじ1/2)とすり鉢でする。キノコを
サッとゆでてあえる。コンニャク、ヒジキにも合う。
ポイント 味がやさしいので野菜は小さく切る。みそを加え
ると、とろりと絡みやすく味が強くなるので、大ぶりに切る。
ゴマ油を加えても美味。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/22/8b/82dbc1f9a64cad7c1fbcffdb49ce80f2_s.jpg)
ごまあえ
香りと歯切れ
黒ゴマ(大さじ4)を煎ってすり鉢ですり、しょうゆ(大さじ2)、
砂糖(大さじ1、1/2)を混ぜる。
ゆでた青菜、輪切りにしてサッと湯通ししたゴボウをあえる。
コゴミ、サヤインゲンもよく合う。
ポイント ゴマは必ず香ばしくなるまで煎り、油が出てくる
までする。エゴマも同様に使える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4f/54/d45bf396eed043d4f8445b0b7946c80d_s.jpg)
みそあえ
生と霜降りの食感
みそ(60g)、砂糖(大さじ1)、酢(大さじ2)、溶きからし
(小さじ2)を混ぜておく。
ブロッコリーのスプラウトは根元を切り、鶏ささみ肉は表面
だけ湯通しして、霜降り部分がきれいに見えるように切る。
鶏肉を盛り、みそだれをかけてスプラウトを盛る。
ポイント あえ物は白みそが合う。味が濃いときはだし汁
や酒でのばす。あえ衣を作り置きす
ると重宝。
あえ衣―――バリエーションを楽しむ
あえ衣は味と香りの組み合わせがポイント。素材との彩り、
味を決める量、水気、なめらかさを的確に押さえましょう。
調味は材料の重量との割合を基本にします。塩=1.5%、
みそ=20%、しょうゆ=8%、砂糖5~10%、豆腐50%など
(以下、材料200gに対して)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/29/3c/3664e79f5d14c3fe50ea87f167fccb0e_s.jpg)
〔ごまあえ〕
ゴマ (20g)、塩 (小さじ2/3)、砂糖 (大さじ1)
〔くるみあえ〕
むきグルミ(20g)、塩 (小さじ2/3)、砂糖 (大さじ2)
〔ピーナツあえ〕
ピーナッツバター10%(大さじ2)、しょうゆ (大さじ1強)、
砂糖(大さじ2)
〔白あえ〕
豆腐(100g)、みそ (大さじ1)、塩 (小さじ2/3)、砂糖
(大さじ2)
〔酢みそあえ〕
みそ (大さじ6)、砂糖・酢 (各大さじ1、1/3)
〔からしあえ〕
カラシ1%(小さじ1)、しょうゆ (大さじ1強)、砂糖2%(小さ
じ1強)
〔その他〕
梅肉あえ、おろしあえ、ウニあえ、木の芽あえ、うの花あえ
など
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/78/65/880fe063dc336f058d2cd68623e6d62c_s.jpg)
ペーストのあえ衣は、少し固めに仕立てて、なめらかさを酒で調整
する。
食べる直前にあえるのが基本。早めに作るときは、絡めずに素材
の下に敷くか、タレとしてかける。
青菜のあえ物―――下ごしらえの科学
青菜は葉の緑を鮮やかに仕上げるのが、おいしさの絶対条件です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/21/65/d629afdc5f460c31cb1b9e56ef4a93ec_s.jpg)
色鮮やかなゆで方
青菜を色鮮やかに仕上げるコツは、きれいな発色をさせること。
葉のクロロフィルは約70℃の熱で酵素の力が働き、クロロフ
ィリンに変化して色が変わります。
温度が安定する半寸銅鍋を使い、塩分2%のたっぷりの湯でゆで、
色が変わったらすぐに冷水に浸すとベスト。
フタはしないで葉の酸を水蒸気で逃します。
鮮やかにあえる
青菜類は、下ゆでの加熱調理をしてから、浸し地に地浸けし
(隠し味)、あえ衣の味をまとわせます。
鮮やかな色を生かしたいときは、浸し地は二番だしに塩を加
えた「塩八方」にし、30分ほど浸して水気を絞ります。
お浸しの場合は、塩八方の水気を絞って「旨(うま)だし」に浸す。
・塩八方…二番だし・酒(10対1)・塩1~2%
・旨だし…二番だし・しょうゆ・みりん(5対1対1の割合)
アク抜き
山菜のアク抜きやホウレンソウのシュウ酸を少なくする
下処理は、おいしく健康的に食べるために大切です。
シュウ酸はカルシウムと結びつくとシュウ酸カルシウムになって
排せつされるので、シラスやワカメなどと組み合わせて。
ホウレンソウ、コマツナなどの硝酸塩も湯通しで低減させたり、
低硝酸栽培の野菜選びで回避を。
・シュウ酸…体内で尿路結石症の原因になる
・硝酸塩…体内で亜硝酸に
<2008.3.20号掲載>
野山の草も木も春に目覚める季節。香り高い山菜は次々に旬を迎え、
自然の豊かさを伝えます。
食卓に季節感が無くなったと言われる昨今ですが、旬の味覚のあえ物
が一鉢あるだけで食卓は春。
あえ物は素材の魅力を引き出し、メニューのバリエーションが大きく
広がる調理法です。今年の春は基本とコツを掴んで、得意料理にして
しまいましょう。
あえ物を科学する
料理のおいしさは、味とテクスチャーで決まります。
甘み・塩味・酸味・苦味・うま味などにあらわされる「舌で感じる味」
や「香り」は、食品の化学面の姿。そして、歯ごたえ・舌ざわり・のど
ごし・口当たり・歯切れ・噛み心地は、食品の物理面をあらわし、
「テクスチャー」と呼ばれています。
液体の食品は化学的な味覚が重視され、固体の食品はテクスチャーが
重視されます。そして、この組み合わせのバランスを勘所で心得て
楽しむのがあえ物です。
あえ物素材――――旬を盛る
あえ物の素材は、テクスチャーが楽しみの要素。あえ衣で味をつける
前に、その持ち味を引き出す下ごしらえが必要です。
〔生〕
ウドやスプラウト、生の魚介
〔ゆでる〕
青菜、ネギなどは繊維が軟化し、あえ衣が馴染む。
〔霜降り〕
サッと湯通しするとイカ、白身魚、貝は形も整い、風味が
良くなる。
〔塩を振る〕
ダイコン、キュウリなどをしんなりさせ、ほどよい水分量
にする。
〔酢洗い〕
酢を使ったあえ物には、酢で生臭味取りをしたり、味をなじみ
やすくする。
〔煮て下味〕
コンニャク、ワラビ、タケノコは薄味で下味を。
〔水で戻す〕
キクラゲ、ワカメは水で戻す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/38/44/5acf79ab81e42711f6ae6b63ef08765a_s.jpg)
たらこあえ
舌ざわりと歯ごたえ
タラコ(1腹)をほぐしておき、キクラゲ適宜を水で戻して細く
切る。食べやすい長さに切った白滝(200g)をサッとゆで、
細切りニンジン、キクラゲと一緒にいため、タラコ、酒を混ぜ
てあえる。好みでしょうゆを。
ポイント 白滝はゆでて水気と臭みをとる。タラコはマヨネ
ーズ味も人気。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/2a/96/45323837de753fc22f96e992dc724743_s.jpg)
白あえ
風味となめらかさ
豆腐(200g)の水切りをし、裏ごししてから塩(小さじ1/2)、
砂糖・ゆずこしょう(各大さじ1/2)とすり鉢でする。キノコを
サッとゆでてあえる。コンニャク、ヒジキにも合う。
ポイント 味がやさしいので野菜は小さく切る。みそを加え
ると、とろりと絡みやすく味が強くなるので、大ぶりに切る。
ゴマ油を加えても美味。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/22/8b/82dbc1f9a64cad7c1fbcffdb49ce80f2_s.jpg)
ごまあえ
香りと歯切れ
黒ゴマ(大さじ4)を煎ってすり鉢ですり、しょうゆ(大さじ2)、
砂糖(大さじ1、1/2)を混ぜる。
ゆでた青菜、輪切りにしてサッと湯通ししたゴボウをあえる。
コゴミ、サヤインゲンもよく合う。
ポイント ゴマは必ず香ばしくなるまで煎り、油が出てくる
までする。エゴマも同様に使える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4f/54/d45bf396eed043d4f8445b0b7946c80d_s.jpg)
みそあえ
生と霜降りの食感
みそ(60g)、砂糖(大さじ1)、酢(大さじ2)、溶きからし
(小さじ2)を混ぜておく。
ブロッコリーのスプラウトは根元を切り、鶏ささみ肉は表面
だけ湯通しして、霜降り部分がきれいに見えるように切る。
鶏肉を盛り、みそだれをかけてスプラウトを盛る。
ポイント あえ物は白みそが合う。味が濃いときはだし汁
や酒でのばす。あえ衣を作り置きす
ると重宝。
あえ衣―――バリエーションを楽しむ
あえ衣は味と香りの組み合わせがポイント。素材との彩り、
味を決める量、水気、なめらかさを的確に押さえましょう。
調味は材料の重量との割合を基本にします。塩=1.5%、
みそ=20%、しょうゆ=8%、砂糖5~10%、豆腐50%など
(以下、材料200gに対して)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/29/3c/3664e79f5d14c3fe50ea87f167fccb0e_s.jpg)
〔ごまあえ〕
ゴマ (20g)、塩 (小さじ2/3)、砂糖 (大さじ1)
〔くるみあえ〕
むきグルミ(20g)、塩 (小さじ2/3)、砂糖 (大さじ2)
〔ピーナツあえ〕
ピーナッツバター10%(大さじ2)、しょうゆ (大さじ1強)、
砂糖(大さじ2)
〔白あえ〕
豆腐(100g)、みそ (大さじ1)、塩 (小さじ2/3)、砂糖
(大さじ2)
〔酢みそあえ〕
みそ (大さじ6)、砂糖・酢 (各大さじ1、1/3)
〔からしあえ〕
カラシ1%(小さじ1)、しょうゆ (大さじ1強)、砂糖2%(小さ
じ1強)
〔その他〕
梅肉あえ、おろしあえ、ウニあえ、木の芽あえ、うの花あえ
など
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/78/65/880fe063dc336f058d2cd68623e6d62c_s.jpg)
ペーストのあえ衣は、少し固めに仕立てて、なめらかさを酒で調整
する。
食べる直前にあえるのが基本。早めに作るときは、絡めずに素材
の下に敷くか、タレとしてかける。
青菜のあえ物―――下ごしらえの科学
青菜は葉の緑を鮮やかに仕上げるのが、おいしさの絶対条件です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/21/65/d629afdc5f460c31cb1b9e56ef4a93ec_s.jpg)
色鮮やかなゆで方
青菜を色鮮やかに仕上げるコツは、きれいな発色をさせること。
葉のクロロフィルは約70℃の熱で酵素の力が働き、クロロフ
ィリンに変化して色が変わります。
温度が安定する半寸銅鍋を使い、塩分2%のたっぷりの湯でゆで、
色が変わったらすぐに冷水に浸すとベスト。
フタはしないで葉の酸を水蒸気で逃します。
鮮やかにあえる
青菜類は、下ゆでの加熱調理をしてから、浸し地に地浸けし
(隠し味)、あえ衣の味をまとわせます。
鮮やかな色を生かしたいときは、浸し地は二番だしに塩を加
えた「塩八方」にし、30分ほど浸して水気を絞ります。
お浸しの場合は、塩八方の水気を絞って「旨(うま)だし」に浸す。
・塩八方…二番だし・酒(10対1)・塩1~2%
・旨だし…二番だし・しょうゆ・みりん(5対1対1の割合)
アク抜き
山菜のアク抜きやホウレンソウのシュウ酸を少なくする
下処理は、おいしく健康的に食べるために大切です。
シュウ酸はカルシウムと結びつくとシュウ酸カルシウムになって
排せつされるので、シラスやワカメなどと組み合わせて。
ホウレンソウ、コマツナなどの硝酸塩も湯通しで低減させたり、
低硝酸栽培の野菜選びで回避を。
・シュウ酸…体内で尿路結石症の原因になる
・硝酸塩…体内で亜硝酸に