メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

メガヒヨ in NY 12 《FELA!編》

2010年05月30日 | NEWYORK
LITTLE ITALYでの楽しいランチの後、メガヒヨはマチネ観劇の『FELA』が上演されるEUGENE O'NEILL劇場に行った。



このショーはアフロ音楽の第一人者、別名"THE BLACK PRESIDENT"と呼ばれるFela Anikulapo-Kutiの生涯をミュージカル化したもの。
オフ・ブロードウェイで絶賛を浴びて、昨年秋にブロードウェイでオープンした。
ちなみにプロデューサーの一人として、ビヨンセのご主人JAY-Zが名を連ねている。

メガヒヨは、このショーの評判を聞くまでミュージシャンFela Kutiについて全く知らなかった。
そんなとき頼りになるのはWiki先生。
誰でも編集が出来るため過信は禁物だけど、Fela Kutiの項は思い入れのある方が書かれているのか、
とても詳しくて分かりやすい解説だった。

【ショー概要】
アフロビートの創始者フェラ・クティ。
彼の生涯を、本人役の役者が解説する形で振り返る。

1938年にナイジェリアの中流以上の家庭で生まれ育ったフェラ。
ロンドンへの留学、アメリカでの音楽活動を通じて、差別に遭いながらも黒人としてのアイデンティティを確立していく。
白人受けするブラックミュージックではなく、本物のアフリカの音楽を発信していくのだった。

その生涯は波乱万丈で、数度にも渡る逮捕劇、拷問、軍隊の襲撃、複数の女性との集団結婚など、挙げていったらきりが無いほど。
それらの出来ごとと当時の音楽をリンクさせて、次々と場面展開させていく。



劇場に入ったら、すでにバックバンドの演奏が始まっていた。
お客さんはカクテルを片手に聴き入っている。
このショーはバーで買ったドリンクを飲みながらの観劇が可能になっているのだ。
カクテルにそれぞれ"KUTI KULA","THE BLACK PRESIDENT","THE ZOMBIE"とフェラにまつわる名前がついているのが興味深い。

ところでメガヒヨの席はこんな場所。



最前列のサイド通路側な訳だけど、ここはとんでもない当たり席だった。
サイドブロックを一部つぶして花道が作られているのだけど、ここで役者さんが踊るわ、メガヒヨを飛び越して通路に降りるわ、エラいことになっていた。

後のB列には団塊世代と思わしき、アフリカ系のご夫婦が座られていたのだけど、旦那さんのノリが半端では無かった。
音楽に合わせてずーっと足でリズムを取っている。
つまりメガヒヨの椅子の土台部分をドンドン踏んでいるのだから、たまったものでは無かった。
「椅子揺れてるしな~。困ったな~。」と思いつつも、その人はとてもショーを楽しんでいるようだから言い出せなかった。
そんな内、慣れっこになり気にならなくなった。
何よりその旦那さんはめちゃくちゃリズム感が良くて、バンドと息がぴったり合っていたのである。
日本のおじさんだとこうは行かないかも!
しかもその人は"ZOMBIE"のシーンではコーラスと一緒に歌ってた。
きっとリアルタイムからのファンなんだろうな。
幕が開いている時間だけ、フェラ・クティの復活した姿を楽しんでいるに違いない。



さて、メガヒヨはそこまでコアなファンの人ほどじゃないものの、このショーをとっても楽しめた。
今回観た9つの舞台の中で一番と思う位。

理由のひとつは未知の音楽の遭遇。
FELA KUTIご自身は10年以上前に亡くなっているものの、今までその音楽に触れたことは無かった。
ここまで本場に近いアフロミュージックを通して聴いたのは初めてで、その世界にはまることが出来た。

もうひとつはミュージシャン、ダンサーの方々の熱演。
あんなに激しい音楽を3時間近く演奏して、よくスタミナが持つものだ。
女性ダンサーもほとんど出突っ張りでずっと踊り続けている。
感心したのは、舞台袖でも腰を振っていたこと。
メガヒヨはたまたまサイド前方にいたから見えていたものの、ほとんどの観客に観られることがないのにすごいな~と思った。

女性ダンサーがまとっている衣装、髪型も目を引くものだった。
肌をあらわにした大胆なデザインは、今風のカジュアルとアフリカの伝統が融合しあった感じ。
ところどころに惜しみなく使われている宝貝が贅沢。
髪型はかなり独創的。ひとりひとり違っている。
あれは地毛で結っているのかな?

中に、髪をトップと両サイドの3方向に盛ったダンサーさんがいらした。
この方は背が高くてスタイルが良く、ジャンプ力も抜群。
ダンスシーンは注目の的だった。
しかし…日本人のメガヒヨはどうしてもそのヘアスタイルで、国民的マンガのサザエさんを連想してしまった。
だめだ。何やってもあの世田谷区在住の主婦に見えてしまう…。
ここまで運動能力が高かったらお魚くわえたドラ猫もすぐ捕獲できるなぁと、つい失礼なことを考えるのであった

ところでこのショーはBROADWAYでは珍しく、完全ダブルキャスト制。
メガヒヨが観た回は、KEVIN MAMBOがフェラ・クティを演じていた。
ちなみにもう一人の主役のSAHR NGAUJAHはトニー賞にノミネートされている。
自分はMAMBO氏で歌も踊りも大熱演で満足したけれど、実際に本物のフェラ・クティを知る方々からすると差があったのかな?

そして。この作品におけるヒロイン、フェラの母フンミラヨを演じたLILIAS WHITEもカリスマ抜群だった。
登場するたびに神様の様に出てくるのだけど、その歌声に圧倒された。
彼女もトニーに助演女優賞枠でノミネートされている。
なおこの劇場では上手の壁にフンミラヨの肖像があって、劇中にその表情が変わったりする。
ストーリーにも関わっているみたいなので、極端に上手側だと見切れてしまうかも知れない。
お席を取られる際には注意されるといいかも。

ところでトップに描いた鳥の絵は、劇場の壁のイラストを模写したもの。
軍隊の絵などがヘタウマ風に描かれていたり、アフリカのお面、フンミラヨの肖像などなど、劇場中がフェラ・クティ記念館仕様に変わっていた。
その改装っぷりはキャッツ・シアター並み(笑)
写真を撮って帰りたかったけど、それは禁止されてるよね…ってことでインターミッションの間にスケッチしていた。

その最中、案内係のアフリカ系女性に「ねぇ、ショーを楽しんでいる?」と聞かれた。
「もちろんです。こんなショーは今まで観たことがないです。」と返したら、とても喜んでいたのが印象深かった。
きっとこの方もこのショーを愛してやまないんだろうな。

会場を見渡すとアフリカ系の方が他の劇場の比ではない程に多かった。
『PROMISES,PROMISES』などと比べると対照的だ。
あの『LION KING』よりもさらに多いかも。
ここまでアフロアメリカンの方々に愛されるこの作品。
BROADWAYを近々訪れる方が観る作品に悩んだら、メガヒヨは自信を持ってこのショーを推したいと思う。
日本ではこんな熱い作品はまず観られないからね。