英語学習者にとって、いや数十年前の私も含めてであるが、英文法というとなにやら厳しく、かくあるべきという存在であった。高校時代における英文法(当時は英作文も含めて)の評価は5段階において2であった。
高校時代の私は、英文法が全くのパープリンだったのである。何故かといえば、勉強が嫌いなだけでなく興味関心が天体・天文にしかなく、毎晩画用紙とレンズで作った天体望遠鏡で土星を見ていたからだ。時に学校に合宿する機会が少なからずあるものの、そんな時には当時珍しかったインスタントラーメンの作り方を先輩の「女子」から教わり、ああ、こんな食べ方もあるのだと認識させてもらい、それが後の自炊に繋がったものである。
私は退職間近の英語教師である。なぜそんな人間が英語教師になれたかというとこれもひとえに英文法のおかげである。高校時代には英文法が全くのパープリンだったのであるにもかかわらず。
まず、C.T.Onionsの名前を上げておかねばならない。彼はシェイクスピア学者であるが5文型の基礎を作った人間である。もちろん、英国・米国において5文型なるものはおそらく学問上は存在しないと思う。Onionsの文法ができたのは、確か1904年であるから日露戦争勃発時である。これが日本に入ってきたのは細江逸記氏の「英文法汎論」によるものが大きいであろう。
私は現在でもOnionsの文法を見る機会が多いのであるが(=小型サイズの本なので、というのが本音である)例文の品格は他を凌駕する。私はこの文法書を大学3年生の頃に全ペイジ読破したのであるが(授業では、syntaxの途中まで)、新言語学などでは引用されることのない(殆ど無い)書物ではあるが「読み」「書き」「話す」上ではとても貴重な一冊であると信じて疑わない。
新学習指導要領を信奉する方の中には、文法を否定される方が多いので、おそらくこの本を読む方は少ない(=あるいは、彼らにしてみれば自分の英語では!語学力がなくて読めない!)とと思われる。