語学は「語楽」--英語を楽しく学びましょう

英語の学習をしていて、「おや?」と思われる点について、みんなで考えてみたいと思います。

英語のnicknameについて

2008-04-30 10:58:05 | 英語の学習と研究

 以下の質問が来ました。

質問 (A.S) 2008-04-28 19:10:11
先生、お久しぶりです!!新しい土地で色々大変でしょうけど、お体にだけは気を付けて下さいね。 話は変わりますが、1つ質問があります。今日音声学の授業で「first nameと愛称の関係性」という内容をやりました。ところが、Williamが愛称だとBillになったり、MaryがPollになったりと、なぜ一見無関係にみえる「音」に変化するのでしょうか??音声学などとは先生の範囲外かとは思いましたが、もしご存知でしたら教えて下さい。長々とありがとうございました。

 回答です。
 Nickname は、中期英語の an ekename (= an also name )に由来するそうですが、本名に代わって、あるいは本名に添えて用いられます。通例次の3つに大別されます:
(1)名前の短縮した形:
  Dave < David, Al < Albert
(2)習性・外貌・特技・特異性・出身地などから:
  Speed/ Happy/ Gabby (習性)
  Red/ Slim/ Shorty (外貌)
  Tex/ Frenchy/ (出身地)
(3)Sobriquet (あだ名)から:
  The Little Corporal(ナポレオン1世)
  The Sage of Concord(エマソン)
 
 さて、質問の趣旨は「音声学」(Phonetics)の観点からなので、音声学的に回答します。
 音声学では、articulation point(=音素を発生する身体器官:「調音点」と訳されます)を意識することが大切です。William の / w  / という音素は、両唇が調音点です。両唇を調音点にする音素は他に / p /, / b /, / m /などがあります。調音点が同じである音素はしばしば交替することがあります。
 つまり、/ w / = / b / = / p / =  / m /の関係が理論上成り立つのです。WilliamがBill/ Billieになるのは/ w /という音素の調音点が両唇にあるため、/ b /と交替したと考えられます。
 Mary の/ m / も両唇が調音点なので / p / と交替することは十分あり得るのです。音声学の古典的な教科書としては、ダニエル・ジョウンズ(英語)、ケニョン&ノット(米語)などがありますが、最近ではロンドン大学のProfessor John Wellsの著作物が大変参考になります。