岩城宏之+OEK「21世紀へのメッセージ」

　先日買ったCDを聴き終えた．岩城宏之指揮+オーケストラ・アンサンブル金沢による，現代曲アルバム『21世紀へのメッセージ』．

　僕の目当ては武満シリーズで，正確かつ音楽の横の流れを大きく見通した，生き生きとした演奏．岩城の率直な曲作りのもと，オーケストラは高い技術とアンサンブルに安定している．生前，「表現は作るものではなく，おのずと沁み出すもの」と語っていたマエストロならではの，謙虚かつ献身的な音楽だ．録音は鮮明．

　日本人作曲家たちによる他の曲もたくさん収められていて，いずれも初めて聴いたが，ありふれた作風のものばかりで少しも面白くなかった．もっともそれは，今世紀の初頭を思いがけずも激動の時期として過ごした，僕たちの感性の変化によるのかもしれない．

　なお，アルバムジャケットが最後のディスクの内容を掲げるのみであるのは，単なる復刻企画とはいえ不自然だろう．


21世紀へのメッセージ Vol1.-Vol.4 (4CD)
岩城宏之 (指揮)，
オーケストラ・アンサンブル金沢，
TOWER RECORDS，PROC-1947/50