くまのお気楽日記

好きな漫画や映画の話を主にその日あった事や感じた事等をお気楽に書いていきたいと思います。宜しくお願いします。

「グレッグ・イーガン」

2008-08-08 01:04:26 | 本好き
みなさん、こんにちは。
前回から約1カ月ぶりの更新です…お久しぶりです、くまです。

ここのところ<読書熱?>の波がピークに達しているようで、前回の更新の時にもちらっと書きましたが、
グレッグ・イーガン作品や、
「ハリー・ポッターと死の秘宝」上下巻(シリーズ完結巻!!)、
氷と炎の歌の第四部「乱鴉の饗宴(らんあのきょうえん)」上下巻、
ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」上下巻などなど…
面白い本の出版やたまたま古本屋さんで見付けたりすることも重なって、
ついついまた読み耽ってしまってました…

まだレヴュー(と言うのもおこがましいですが…)を書けるほど、頭の中が整理出来ていないんですが、それを待っていると結局そのまま書けることも書けなくなってしまいそうですし…(苦笑)、とりあえず!折角読んだので!(笑)、拙くはありますが、簡単な紹介文を書かせていただきます。
宜しければ少々お付き合いの程、お願い致します。

グレッグ・イーガンの邦訳されて文庫化されている作品には、くまの知る限りでは、
「宇宙消失」    創元SF文庫
「順列都市」    ハヤカワ文庫 上下巻
「万物理論」    創元SF文庫
「ディアスポラ」  ハヤカワ文庫
「祈りの海」    ハヤカワ文庫 短編集
「しあわせの理由」ハヤカワ文庫 短編集
「ひとりっ子」   ハヤカワ文庫 短編集
などがあります。
ここではとりあえず長編の4作のみご紹介しようと思うのですが、どの作品にも通じて言えることは、
「実際の<量子力学>や<物理学>の争点となっているような問題に、奇想天外なんだけれども妙に納得させられてしまう解釈を加えて壮大な物語を展開し、しかし根底に語られているのは、常に<自分とは何か?>という内面的な問いである」
といった作風、ということです。

例えば「宇宙消失」は、
「2034年、地球の夜空から星々が消えた。正体不明の暗黒の球体が太陽系を包み込んだのだ。世界は恐慌に襲われ、この<バブル>と名付けられた球体について様々な仮説がたてられたが、原因は究明されぬまま、ただ星が見えないだけと理解されるにつれて、一部の過激な狂信者を残して、人々の生活は平常に戻っていった…
そして33年の月日が流れ、オーストラリアに住む元警察官の探偵<ニック>の元に、匿名で奇妙な依頼が舞い込む。
先天的な脳損傷をもった女性患者が、高度なセキュリティに護られた病院から忽然と姿を消したというのだ。
その女性<ローラ>の捜索を開始したニックだが、この事件を発端に、彼はやがて宇宙全体を揺るがす謎に巻き込まれていくことになる…」

といったお話なんですが、
ここで少しだけ<ネタばれ>しますと、作中の<バブル>とは、量子力学の波動関数の収縮問題について、
「人類の持つ特殊能力が<観測>によって、本来「重なり合った状態」にある<並行宇宙>を収縮させ、あり得た他の可能性を消滅させていたため、何者?かが<バブル>によって人類を隔離したものである」というもので、その設定に重ねて、
ナノテクによって脳神経を再結線する、<モッド>と呼ばれるテクノロジーが普及し、感情や思考さえも自由に制御出来てしまう…
などという背景から、主人公の<ニック>は、作中で常に「自己とは何か?」ということを問い続けることになります。

長編第二作目の「順列都市」は、
「21世紀なかば、記憶や人格などの情報をコンピューターに<ダウンロード>することが可能になった世界、しかしソフトウェア化された意識、<コピー>を走らせる仮想空間と、現実世界との反応速度の隔たりは、未だコンピューターの演算能力の限界によって17倍もの差がある時代、<コピー>となった富豪たちのもとに、たとえ宇宙が終わろうと永遠に存在し続けられる方法があると提案する男が現れる…」

といった物語で、
ここでも少しだけ<ネタばれ>になりますが、お話の核となる部分の<塵理論>というのが、
「自己増殖するコンピュータープログラムの上で、時空を超えてデータをランダムな破片にして計算させ、<コピー>の主観時間においてはさも継続されていたかのように再配列する」というもので、まさに「一瞬の(有限の)時空の中に永遠の(無限の)時空をみる」ような理論なんですが…
ちょっとペテンにかけられたような…(笑)そんな気分になりつつも、自分の肉体が、可能な限り視点を小さくしていけば、原子や電子の描きだすパターンにすぎない…ということが分かりつつある今、それならば自分の精神は?「<自己>とは何なのか?」ということを、またもや考えさせられます。

長編第三作目の「万物理論」は、
「すべての自然法則を包み込む単一の理論<万物理論>が完成されようとしていた。ただし学説は3種類。3人の物理学者がそれぞれの<万物理論>を学会で発表するのだ。正しい理論はそのうちのひとつだけ。映像ジャーナリストである主人公<アンドルー>は、3人のうち最も若い20代の女性学者<ヴァイオレット・モサラ>を中心に番組を制作することになるが…学会周辺にはカルト集団が出没し、さらに世界には謎の疫病が蔓延しつつあった…」

といったお話で
実際に物理学の世界で未だ解明されていない<万物理論>(TOE)の問題に驚きのアイデアで回答をあらわし…
そしてTOEが人類に知覚されることによって大きな変化が訪れる…
といった、更にひねりを加えた物語の構成になっています。

この物語はこれ以上<ネタばれ>すると面白さを損なってしまう可能性があるので、詳しい説明はしないでおこうと思うのですが、グレッグ・イーガンの長編の中では、比較的結末に希望を感じ取りやすい…というか…読後感が好きでした。

長編第四作目の「ディアスポラ」は、
「30世紀、人類のほとんどが人格や記憶をソフトウェア化し、仮想現実世界で暮らす未来。ソフトウェアから<創発>されて生まれた孤児<ヤチマ>を主人公に、人類を襲う未曽有の危機を乗り越え、果ては多世界宇宙までに及ぶ壮大な宇宙進出計画<ディアスポラ>を描く、正統派ハードSF」
といった観のお話です。

このお話は前三作に比べて少し趣向が違うというか…
のっけから主人公<ヤチマ>の自意識が<創出>というソフトウェアから生れ出るシーンにノックアウトされます。
使われている用語自体も難しく、あまりの非日常的な設定に、想像力が追いつかない感じなんですが、そこを乗り越えて「分からない部分は飛ばして読む」戦法で読み進めていくと、だんだんとその世界に引き込まれていきます。

前作までは割とストレートに「自己とは?」ということについて、作中で語られていたように感じるのですが、この作品では、遠くへ遠くへと宇宙の深淵について探っていく過程で、二つの一見かけ離れているように思われる謎について、通底するものがあると感じさせられている…というか…
少し<ネタばれ>になりますが、異なる次元の生命とも相互理解しようと試みるくだりであるとか…
前三作までに共通していたアイデンティティについて…ということに、新しい視点も加わったようで、いっそう面白い物語になっているように思えます。


こうして長編4作品を並べて、簡単なストーリーの紹介などを書いてみますと、確かに物語の核をなす部分に「物理学」やら「量子力学」やら「数学」やら…ちょっと「とっかかりは悪い」ような…
印象がありますが、くまのような「分数の計算も一拍置かないと答えられないような」理系ダメ人間にも何とか読めましたし…
くま自身は読んでみるとホントに面白くてハマってしまいましたので…
是非機会がありましたら…ご一読をお薦め致します

次の邦訳出版が待ち遠しい作家さんが、また一人増えました。


それでは。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
くまちゃん随分沢山読んでたんデスねー!。 (tooru_itou)
2008-08-08 14:52:31
グレッグ・イーガンの長編4作紹介、アリガトウ(^o^)。
私の触手が動いたのが、「万物理論」です♪。
>比較的結末に希望を感じ取りやすい…読後感が好き。
~読んでみたくなりますよね(^o^)。
20代の女性学者<ヴァイオレット・モサラ>で
あの五次元の女性物理学者リサ・ランドールさん連想♪(笑)。
今はスポーツ観戦で手が廻らないけど、SF熱が燃えたら
読んでみたい本にチェック入れました~♪(^o^)。
高校野球に北京オリンピックに8/11は「のだめ」だし(^o^)。
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tooruさんへ (くま)
2008-08-08 23:41:04
コメントありがとうございます!!

>読んでみたい本にチェック入れました~♪
そんな風に言っていただけて嬉しいです♪
アッシはリサ・ランドールさんの出演されてた番組、見損ねてるんですが、読んでる時、才気煥発な女性物理学者…ってイメージで、以前にtooruさんのBBSで記事を拝見してたので、やっぱりこの方をちょっと連想しました~

>高校野球に北京オリンピックに8/11は「のだめ」だし~
スポーツ観戦までにはつい手がまわってないんですが(4年に一度のオリンピックですのにね…)、「のだめ」はアッシもしっかりチェックしてま~す♪
あと3日……楽しみです♪
返信する
気付かなかった! ()
2008-08-10 15:45:41
きゃ~、くまちゃんブログ更新してたのね!
気がつかなかったよ~、ゴメン!

それにしてもすごい読書量だ!
しかも、読み応えのある本ばっかり!
「薔薇の名前」だなんて、あの分厚い難しそうな本
よく読みとおしたね~
尊敬!

最近、ファンタジーばっかり読んでて
全然SFを読んでないんで
グレッグ・イーガンみたいなのは、よっぽどのSFモードにならないと
食いつけないなぁ。。。
年を感じるよ~

「乱鴉の饗宴」は図書館に予約中
あと二人なんで、一ヶ月位したら読めそうよ~
すご~~く、楽しみ!
このシリーズはいつ完結するんだろうね?
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夜さんへ (くま)
2008-08-11 06:16:33
コメントありがとうございます!!

>「薔薇の名前」
例によって「難しいところは飛ばして読む」戦法です。
お話の推理小説の部分は面白く読めたんですけど、神学?だか哲学?記号論?だかの部分については殆ど理解出来てませんもん…
だけど分からないなりに印象に残るセリフなども沢山ありまして、
「一場の夢は一巻の書物なのだ、そして書物の多くは夢に他ならない」
ですとか…。面白かったです♪

>SFモード
アッシもイーガン読み始めるまでに、長い間「積ん読く」になってたんですョ~
今はアッシ、たまたまモードに入ってるようです。

>「乱鴉の饗宴」
メチャメチャ面白かったッスョ~~!!
だけど読み終わったら結局、
「早く続きが読みたい~~!!」
って禁断症状に陥っちゃいました…
何かまだまだ完結しなさそうな雰囲気ですョ…
嬉しいような…もどかしいような…ですね。 

返信する
懐かしい~ (満天)
2008-08-11 11:04:45
グレッグ・イーガンのラインナップは懐かしい~
んでも…内容が覚えておらん(ハハハハハハ)

「薔薇の名前」これも読みましたし…
我が家にもあるんだが…(ガハハハハハハハ)
読んだ時はコイツは…っと思った記憶があるのに…
既に鬼籍な状態な本でやんす(笑)

ハリポ…6巻から読みました
(それでもウロな部分がありますだ…泣)
最終巻はあと1/4を残して終了です
12日からダンナがゴルフ旅行でいないので
その夜に一気に最後をジ~クリ読もうと
取ってあります(笑)
誰のも何にも邪魔されたくないので…(ハハハハハ)
その後、ハリポのDVDを見て楽しもうと思ってます
楽しみだ~~~~
返信する
満天さんへ (くま)
2008-08-11 22:38:37
コメントありがとうございます!!

>懐かしい~
そうなんですョ。
多分一番最近出版された短編集「ひとりっ子」でも、奥付きを見ると「2006年12月発行」ってなってますし、長編「ティアスポラ」だと「2005年9月発行」ですから…結構時間が経ってるんですよね~…
本国オーストラリア(かな?)では既にこの後も何作か新作が出版されてるみたいなんで…
ホント早く邦訳してくださらないかな~と…
今禁断症状ですョ…

>「薔薇の名前」
満天さんもお読みになられてましたか!嬉しいッス♪
いやホント、アッシにはちょっとまだ難しすぎた観がありますが、メチャメチャ引き出しの多い本ではありますよね~。
中世キリスト教世界の歴史とか…あとがきなど読むと、他の色んな本のパロディ?なんかもちょっとずつ書かれてたりするそうなんで、きっと博識な人ほど「コイツは…」と思うところがいっぱいある本なんだと思います。
何年かしてまた再読してみるのもイイかな~?

>ハリポタ
アッシも途中で忘れてるところとか思いだすために、6巻を読み返しつつ7巻読みましたョ。
あと1/4ですか~…一番面白いところですかね~…
一人で何にも邪魔されず、じっくり面白い上質の本を読む…って、至福の時ですね!!
また宜しければ、ご感想などお聞かせくださいね!! 
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哲学してない ? (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人))
2008-08-15 16:30:02
 哲学書みたいだと思ったのは私だけ ? 最近とんと文字本を読まなくなって、マンガばっかり、それもお気楽ラブラブBLばっかりで私 ばか になってるよこれは絶対。

 好きな歴史関連本とかは時々読んでるんですがね~。SFは中学・高校時代は結構読んでいたのですが、だんだんノンフィクションの方が面白くなってきて。たまにはこういう本も読んでみるかしら。情報ありがとうございます。
返信する
トミーさんへ (くま)
2008-08-16 01:14:05
コメントありがとうございます!!

>哲学書みたいだと思ったのは私だけ?
購入する前に、アマゾンや7&Yなどの読者の書評を参考にしたんですが、「SFのロジックを用いた哲学書だ」というような評価が多かったように思います。
読んでみてアッシもそう感じました。

>それもお気楽ラブラブBLばっかりで~
アッシも「お気楽ラブラブBL」大好きっす
「甘いものは別薔薇」というか(笑)、イーガンを読んでる合間に「純情ロマンチカ」もつい大人買いして一気読みとかしちゃってましたし…

>ノンフィクションの方が面白くなってきて~
歴史関連の方にはまだ手が出せてないんですが、アッシもノンフィクションものも大好きです
分からないなりにも最新科学なんかが紹介された本を読むとワクワクしちゃいます

>たまにはこういう本も読んでみるかしら
是非♪短編集も面白いですし♪
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